第8話 「 Long 」
- Hika_Rarala
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【第8話の1】 「そのとき、月が鏡のようだったっていうのは、本当?」「本当です! もう‥実際、見たんで」未咲は、床に仰向けになって、うとうとと聞いていました。(ハルルくん、キレイな声かも。なんか‥意外~。秋本くんの場合は、もともと王子様だから、声も、性格も)「未咲ッ!」びくっ
2012-09-06 16:14:16【第8話の2】 「び~っくりしたぁ」と上体を起こした未咲は、再び、びっくりです。自分の首にかかった金の鍵のペンダントを、秋本くんが手に持っていて、鍵は、かすかな光を放っています。「あれぇ? これって、」「何だろう? のびる素材でできてるね」秋本くんが、静かに言いました。
2012-09-06 16:25:37【第8話の3】 「うん//」(真剣に、ペンダント見てる。なにか、あるのかな?)未咲もチェーンを さわってみましたが、硬さ、冷たさ、凹凸さえも、市販のシルバーのチェーンと同じに感じます。「首、しまらずに済んだな」胸をなでおろす大助に、2人は、ありがとうと言いました。
2012-09-06 16:35:28【第8話の4】 「鍵っていうのは、2つでセットになってるよね?」秋本くんが言うと、「ああ、錠(じょう)と鍵(かぎ)ですね。鍵穴も必要でしょ?」と、先生。2人とも、実感に満ちた表情です。「えっと‥?」「月と、どう関係が?」「‥確かに」未咲、ハルル、大助が言いました。
2012-09-06 16:47:01【第8話の5】 「実は、これなんだけど‥」秋本くんは、ハルルに2枚のプリントを手渡しました。それは、ハルルがいない間に先生が配ったものでした。受け取りながら、素早く全体に目を通しますと、「か、『鏡と鍵は、よく似ている』っ!?」――何度見ても、そう書いてあります。「うそぉー!?」
2012-09-07 11:25:51【第8話の6】 「自分の見ろよ」大助が苦笑交じりに言うので、未咲は、そうしました。「ほんとだっ。‥どう似てるの?」「それを今から考えるんだろ?」「ふうぅん」―「正解です♪」先生が、たのしそうに言いました。「さて、どんなところが似ていて、月と関係があるのか。考えてみましょう!」
2012-09-07 11:31:14【第8話の7】 未咲は、いま鮮明によみがえった脳内映像を口にしました。「なんか、空中から‥すごく、バッて落ちてっ‥組み体操みたく着地して‥」ささのみことと以外の全員が、同時に頷きました。「月が、照らしていたね」「うん。あれ?」未咲の指に、指輪が――ゆっくりと出現しました。
2012-09-07 13:52:25【第8話の8】 「おばあちゃんの指輪だ! 私‥これで変身してたの?」未咲は、指輪を見つめたまま、言いました。ラファエルが何か言おうとした瞬間、金の鍵が2秒ほど、光を放ちました。「月ですか!?」「わからない」(‥コワい!)ハルルと秋本くんの背後で、未咲は、だんだん震えました。
2012-09-07 14:18:12【第8話の9】 「どうして、震えてるの?」――「え?」――ラファエルと先生をのぞく全員が、小さな驚きの声を上げました。見ると、あの妖精の少女が、未咲の左肩に こしかけています。未咲は首をくねらせ、肩の少女をじーっと見て、言いました。「不思議。なんか‥キャラの声みたい」「確かにな」
2012-09-08 12:59:14【第8話の10】 「確か、公嗣(こうし)の肩に」大助の記憶では、そうでしたが―「飛んだのか」少女の羽を見て、納得しました。「そういう名前でしたね。そういえば」ハルルが秋本くんを見て言うと、本人も「うん」と頷きました。先生は、見張りながら立っています。「妙な気配を感じませんか?」
2012-09-09 10:14:50【第8話の11】 その頃、未来へ帰ったユリアは、最上階のネット・カフェで、未咲たちのことを思い出していました。下宿している古いアパートから徒歩8分。緑化コーポレーションと水緑ビルの間、正方形の土地にほどよい林があり、そこから のびる4本の透明な柱の中をエレベーターが行き交います。
2012-09-09 10:51:36【第8話の12】 地球上から戦争が消えて20年の間に、虐待、いじめ、差別が消滅。さらに長い歳月を経て、異常気象が終了。それから約24億年の間に、宇宙種のペットの脱走も含めて、絶滅危惧種および外来種の問題が、すべて解決。ユリアが産声を上げたのは、その、ちょうど3億1年2秒後でした。
2012-09-09 19:25:45【第8話の13】 いじめや差別が消えてからは、落ち着いて考えられるようになり、「平和ボケ」もなくなりました。セキュリティと心の豊かさが、愛と文化を育む時代。人々は皆、先人たちに感謝していました。(そんな人たちと冒険できるなんて‥!)ユリアは、パソコンを次の人に譲り、帰宅しました。
2012-09-09 19:25:54【第8話の14】 ――2007年1月。未咲は、少女の羽に見とれました「きれい‥」―(未咲ちゃん。足の震えが止まった?)秋本くんがハッとしたところで、ユリアからメールが来ました。「動くメール?」秋本くんの不思議そうな顔を、不思議そうに見る、未咲と大助。ハルルは、混乱してきました‥。
2012-09-09 19:26:17【第8話の15】 (動画メールは驚くべき発明だけど、2003年には既に存在していたはず‥)ハルルも一瞬、秋本くんを見ました。(頭の回転も速いし、何でも知ってそうな人なのに。そんな驚くなんて‥何か‥秘密が!?)――「緊急事態発生!」動画の画面からの声。一瞬のざわめき。ふり返る群衆。
2012-09-09 22:27:15【第8話の16】 「過去の歴史が不当に書きかえられたため、時空ゆがみが発生!」―「なんだって!」だれかが叫びました。――「警察官と担当者が、防犯カメラの人物に質問し、事故だと判明しました」放送は、ワープ・タワーへの避難を説明すると、沈黙。人々も手をとりあい、画面の外へ消えました。
2012-09-09 22:27:32【第8話の17】 (じゃ、いったん止めて、ジュース飲んでからっと♪)未咲が指をのばすと、ユリアが画面に現れ、叫ぶように言いました。「突風、よけて!」――切迫した表情と、真っすぐな瞳。「これって」バン! 未咲は、言いかけた言葉を忘れ、頭に何かを感じました。ブワッ「へ?」パリン!‥‥
2012-09-09 23:09:47【第8話の18】 「月が!」ハルルの声に、見上げる一同。先生は、皆に何かをにぎらせ、「手で、こうやってください」ここで突風。ふいに外れた窓ガラスは、水平に、瞬く間に未咲の顔面へと迫ります。「壁っ!?」――2分9秒後。時空の壁につかまっていたユリアは、伏せていた顔を上げました。
2012-09-11 14:31:40【第8話の19】 「あれれ?」(ヘンな感じがする‥)未咲は、一見ふつうに立っていますが、宙に浮かんでいます! 「ご‥ご冥福を‥」涙ぐむ、風葉命(かざはのみこと)。先生は、その肩をポンとたたき「生きてますよ♪」と笑顔で言うと、巨大な鏡をボンッと出現させ、未咲に見せました。「うそ!」
2012-09-11 14:43:17【第8話の20】 「窓ガラスが? はて‥」未咲と目線が合う高さに浮いていた風葉命は、ひらりと飛び降り、床上18センチの空中に、スタッと着地しました。「え?」鏡を見て、スカートの端を持って回りかけていた未咲は、そのままのポーズで、すっと垂直に降りてきました。「ラファエルさん!」
2012-09-11 15:03:52【第8話の21】 床には、薄い赤の服にきらめく金の髪を垂らした天使が、うつぶせに倒れています。その下の少女を守っているのが、未咲にも分かりました。「なにかしら? ヘンな板がのってるよ」ぽいっ。慌てて魔法でキャッチした先生は、苦笑しながら言いました。「ポイ捨て禁止ですから」「てへ」
2012-09-11 15:15:40【第8話の22】 「ラファエルさんっ!」未咲は、涙目です。「大丈夫ですよ」ラファエルが微笑んで両手をつき、立とうとしたとき、「待って!」秋本くんが走ってきかけて、言いました。「床、ガラスが!」未咲は、バッと足元を見ました。「うっ! ほんとだぁー」―「あ。髪も!」「ひぃっっ!」
2012-09-11 17:37:51【第8話の23】 未咲は、考え込んだ顔になり、頭の左右から、そっと手を放しました。「どうぞ。鏡です」先生が鏡をスライドさせ、未咲は、ヘルメットをかぶった自分の姿を目撃しました。「え? あれれ?」いつの間に、という顔です。「とっさに、かぶせたけれど‥どうだった?」「秋本くん//」
2012-09-11 17:51:56【第8話の24】 小さな破片をまたぎながら、そうっと歩いてきた秋本くんが、未咲の目の前に立っていました。「‥えっと//」(ドキドキしてきた!)「髪に破片があるのは、ラファエルさんのほうだよ。ほら、」「え// ああっ」「サイコロ状の‥この四角いのが、全部ガラスだから」(――え!?)
2012-09-11 18:01:23【第8話の25】 「強化ガラスでしょう? 飛散防止シートも貼られてますし。大丈夫なのでは?」あご紐を直しながら、ささのみことが、いつもの声色で言いました。「ん?」未咲は、頭が働きません。秋本くんは、真剣な表情で言いました。「実は、ヘルメットは2人分、足りないんだ」「足り‥え!?」
2012-09-11 22:08:01