アウェイクニング・イン・ジ・アビス #6
「おう小僧」フスマが開き姿を見せたのは、誰あろう、グランドマスターのニーズヘグである。シャドウウィーヴは凍りついた。「戻ったか。チョージョー」ニーズヘグは短く笑った。「では事情の説明は、しっかりせよ。お前がセプクか、ケジメか、お咎め無しか。この後に頑張るのは俺だ」 47
2012-02-06 02:14:28「ア……アイエエエ」悔しさ、安堵、恐怖、様々な感情がない交ぜとなり、彼は堪えきれずに涙を流した。「フハッ!泣きおったわ。しょうのない奴!」ニーズヘグは苦笑した。「失禁はするなよ。オーガニック・タタミだ」「アイエエ……」 48
2012-02-06 02:21:00「……ま、上へのあれこれは俺に任せれば良い」ニーズヘグはダークニンジャに囁いた。「せっかくのグランドマスターだ。好きに使え」「実際有難い」ダークニンジャは頷いた。シャドウウィーヴを眺めながら、彼は沈思黙考した。……運命者の一体が滅びた。これは吉か凶か。49
2012-02-06 02:26:18だが、シャドウウィーヴの言葉が事実であれば、恐らくあれを滅ぼしたのはニンジャスレイヤー。(またしてもニンジャスレイヤーだ。またしても!)「どうした」ニーズヘグが声をかけた。「……ニンジャスレイヤー」彼は呟いた。 50
2012-02-06 02:30:14ゴウウウ……。ゴウウウ……。ゴウウウ……。風穴を吹き抜ける凍るような風の音が、五体を投げ出し遥か上の天井を見上げるフジキドを幽鬼めいてなぶってゆく。彼のすぐそばには鍾乳石の台座がある。そこにあったものは今、力尽きたフジキドの手の中だ。 52
2012-02-06 02:33:55ほとんど意識を失いかけながらも、彼はマンリキめいたニンジャ握力でもって、その握りを堅く掴んだままだ。その……ヌンチャクを。イクサを終えた今、その黒檀めいた二本の棒はUの字に硬直し、決して開かれる事は無い。 53
2012-02-06 02:34:42フジキドは難儀して顔をもたげ、己が滅ぼした敵を視界に入れようとした。彼は目を見開いた。白く細かい光の粒が巨人の周囲に激しく生じ、弾け、今こうして見守るうちにもシュウシュウと音を立てて溶けながら蒸発したのだ。一般的なニンジャ憑依者の断末魔の爆発四散とは異なる崩壊のさまであった。54
2012-02-06 02:35:31「ナラク」フジキドは声に出した。……答えは無い。彼は目を閉じかけ、そのあと驚いて身を起こした。赤黒いおぼろな影が彼の傍に立って見下ろしていたのだ。フジキドが起き上がったのちも、影は消えずにいた。「ナラク?」影は答えない。ただ、その腕がゆっくりと上がり、ある方角を指し示した。55
2012-02-06 02:36:49「……マルノウチ」彼はなぜか自然に思い至った。「スゴイタカイビル」赤黒い影はぼんやりと薄らぎ、見えなくなった。ナラクはフジキドのニューロンの中、再び眠りについたのである。……「開いた!クソッ」毒づく声が聞こえ、ガンドーが走り込んできた。「カヤの外ってのは落ち着かねえ」 56
2012-02-06 02:39:14「終わった」ニンジャスレイヤーは言った。「そうか!」とガンドー。「そいつがヌンチャク?結果オーライ、まあ、ニンジャのイクサの中に俺が紛れ込んだら実際邪魔になっちまうだけか?ハハハ!」ニンジャスレイヤーはガンドーの背中をどやした。「行くか。出口を探す」「おう、おう、おう」 57
2012-02-06 02:44:15ガンドーは広間を見渡し、「しかし、すげえなここは。ま、俺は学者でもねえし、早いとこ二層へ戻ってスシでも引っ掛けたいところだ」「帰り方はわかるか」「これから考える」 58
2012-02-06 02:50:52