クローズアップ現代『“必修化”は大丈夫か 多発する柔道事故』 書き起こし
- toshihiro36
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<ナレーション>続き)学校で起きた事故には見舞金が支払われます。その業務に当たる日本スポーツ振興センターのデータを分析し、どういう事故が多いのか集計したのです。センターでは毎年、死亡事故件数を部活動別に公表しています。柔道の死者数はバスケットボール、サッカーについで3番目です。
2012-02-07 16:50:37<ナレーション>続き)内田さんはそれぞれの競技人口を調べて、死亡事故が起こる確率を割り出して驚いたといいます。柔道だけが突出していたのです。さらに事故の概要を調べたところ、半数を超える子どもたちが頭部に損傷を負い亡くなっていることがわかりました。
2012-02-07 16:56:09<ナレーション>続き)その多くが頭の中で起きた出血によって死に至っていました。内田さんは文部科学省が貴重なデータを安全対策のために生かしてこなかったことに疑問を感じています。
2012-02-07 16:58:36内田良・准教授: 誰も足し算をしてないし、分析もしてないもんだから、この実態が何も見えていない。だから同じことが起きても、「不幸だったね」と言って終わってゆくということですね。そういうことが続いてきたんだと思います。
2012-02-07 17:01:36石川康成・教科調査官: まだまだ新たな知見としてそのようなことが分かってきた段階だと捉えております。ですので、これから私どもが行う講習会や説明会等について、その都度そういった新しい知見を指導主事の皆さんだったりを通して学校の先生方にも分かるように努めてまいりたいと存じております。
2012-02-07 17:10:07<ナレーション> 「柔道事故の危険性は最近になって分かった」とする文部科学省。しかし取材を進めるうちに、こうした危険性を国は30年も前に把握していたことが分かってきました。30年前の裁判の資料です。柔道の練習中に少年が亡くなった事故で、国に対し裁判が起こされていました。
2012-02-07 17:14:16<ナレーション>続き)遺族は「教師に投げられ、頭を打った事が原因だ」と主張。それに対して国は「頭を打った事は、推定の域を出ない。打たないで事故が起きたとすれば予測はできず、教師には責任がない」としました。裁判はこの主張が認められ、国が勝訴しました。
2012-02-07 17:18:53<ナレーション>続き)このとき国は、頭を打たなくても死に至ることを証明するため、アメリカの論文まで証拠として提出していました。「サルの頭を強く揺さぶる実験をしたところ、“加速損傷”で頭の中に出血が起こり死んだ」というものでした。
2012-02-07 17:24:01<ナレーション>続き)“加速損傷”の危険性は、このとき国の側から提示されていたのです。裁判から30年、事故の具体的教訓が国から学校現場に伝えられることはありませんでした。そうした中、100人を超える子どもの命が失われ、300人近くが重い障害を負いました。
2012-02-07 17:27:21<ナレーション>続き)文部科学省は去年8月になって、ようやく学校でのスポーツ事故を分析し、安全対策を考える有識者会議を設けました。この半年で開かれた会合は4回。必修化直前の3月に、一定の対策案をまとめる方針です。文部科学省は必修化を「あくまで予定通り4月から行う」としています。
2012-02-07 17:31:59スタジオに戻ります
国谷: 今夜は医師で全日本柔道連盟・医科学委員会副委員長の二村雄次さん、ご自身は講道館柔道の6段でいらっしゃいます。そして取材に当たってきました名古屋放送局の藤原記者にも加わってもらいます。二村さん、先生方が受けている講習会にもご自身参加されたということなんですけども、
2012-02-07 17:38:49二村: 私は2年前の夏に、中学校の体育の先生に交じって講習会を受けに行きました。そうしたところ、柔道経験のある方はほんのわずか。受け身も練習したことがないという先生方がいらっしゃるのを見て、本当に驚きました。この方々がまもなく直接生徒に柔道を指導するなんて無理だなと思いました。
2012-02-07 17:46:26二村: これは間違いのない事実ですね。これは2009年の12月にテレビ報道を見まして、その時の医科学委員会の会議で「大変なことが起こっている」と皆さんの認識を新たにしたんですが。当時、医科学委員会のメンバーは外科医、整形外科医、一部内科医というふうで
2012-02-07 17:52:04二村:続き)実は脳神経外科医が一人もいなかったということがありまして。で、2010年の定例の委員会に向けて全柔連にありますデータをいっぺん調べようという作業に入りました。一方では、徳島大学の脳神経外科の永広教授に委員会の中に入っていただいて、
2012-02-07 17:56:13国谷:そういう意味で、連盟としても取り組みが遅かったというのはあるんですけれども。藤原さんは必修化をいま行って大丈夫なのかどうか、取材してどうお感じになりましたか?
2012-02-07 18:00:49藤原: まず文部科学省では、この必修化が決まった4年前から、柔道の経験が少ない体育教師に対して講習会を開いたり、「安全には十分注意するように」という通達や事務連絡を出して、注意を呼び掛けてきました。しかし、VTRにありました裁判の事例を見てもわかりますように、
2012-02-07 18:04:53藤原:続き)引き継ぎは十分に行われておらず、教訓は生かされていませんでした。また、これまで事故の詳細な調査もしくはデータの分析というものがされてこなかったために、安全な授業はどういうものなのかという検討が不十分だというのが現状です。本来はこうした作業をまず行って、
2012-02-07 18:08:43藤原:続き)それから対策をとる。もしくは必修化をするということが大切なんですけれども、その順番が逆になってしまっているということです。
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