これは成長でも英雄でもない-ギリシャ神話の英雄ペルセウスと新劇場版「破」の碇シンジの比較検証-

ユング=ノイマン的解釈における「英雄たる条件」の解析。果たして本当に碇シンジはスーパーヒーロー化したのか?本当に何か変わったのか?英雄神話の模範ともいえるペルセウス神話と比較しつつ検証する。この後に続く展開は関係なく、現段階で分かっていることだけを元にして分析します。(未完・続く) ※このトゥギャッターが発端となってツイートされたもの。 『ギリシャ神話的観点からみた旧作エヴァ-碇シンジ=テセウス?- 』 http://togetter.com/li/26316
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アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

このアニマ-像は超個人的な諸特徴をも持つとはいえ一層自我に近づいており、この像と接触することは可能であるばかりか《豊かな創造力の源泉》(←要チェック!)でもある。

2010-05-31 18:03:37
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

男性が「上なる女性」の性質[=男性を真に援助しえる対等的な伴侶足りえる女性]と親しくなることは、牙をむき出して去勢する子宮としての太母ウロボロス龍[=囚われの女性に近づくことを妨げ、創造し、孕み、産む女性の真の子宮に近づくことを妨げる太母]を倒す重要な助けとなる。

2010-05-31 18:04:04
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

囚われの女性を求める英雄の戦いの中で要求される男性たることの証、及び自我の堅固さ、意志、勇気、「天[=息-精神-風の原理(父権的な神・学問的な哲学を産み出した原理)]」などに関する知識の要求は、歴史的には思春期儀礼に相当していて、これに合格することで初めて大人の仲間入りができる。

2010-05-31 18:04:25
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

これとは逆に、この思春期儀礼としての「龍との戦い」に失敗する[=原両親という問題圏に固着し、大人の仲間入りができない]ケースが、人生前半期の神経症の中心問題であること、また伴侶との関係を持てない原因であることが、神話や歴史の中で繰り返し明らかになっている。

2010-05-31 18:04:52
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

大人の仲間入りを果たすためには「龍との戦い」即ち原両親・両親元型・両性具有的太母ウロボロス龍との対決において、これを打ち破ってその支配から脱さなければならない。男性のみならず女性においても原両親を斃して初めて原両親-葛藤から抜け出し、自分の人生を歩み始めることができる。

2010-05-31 18:05:16
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

原両親-葛藤とその魅力の中にいつまでも留まっているのが、多くの神経症者の特徴であるばかりか、ある種の男性的-精神的タイプの特徴でもある。このタイプの限界は、「龍との戦い」において「上なる女性」及び女性的ゼーレの獲得に失敗した点に認められる。

2010-05-31 18:05:49
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

英雄たる条件。それは最終的には「創造的・生産的な個人」でありえること。そしてその創造的な個人であるには「上なる女性[=男性を真に援助しえる対等的な伴侶足りえる女性]」の存在なくしてはありえないということが重要。

2010-05-31 18:06:19
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

原両親との対決が前面に出ている限り、意識と自我はこの原両親の圏内に捕えられている(このような人々は原諸力・原両親との対決に巻き込まれているだけ)。個人の活動がこの圏内に限定されたままだと、本質的に否定的な特徴を帯びる。個人の働きが孤独・閉鎖的になってしまうのである。

2010-05-31 18:07:01
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

たとえある種の行為が一見英雄的な、救済者・救世主的なイメージだったとしても、囚われの女性[=上なる女性]の救出も彼女との聖なる結婚も行われず、王国も築かれない(要するに創造的な個人でありえない)とすると、それら全ての像はそれ自体何か問題を含んでいると考える必要がある。

2010-05-31 18:07:45
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

「上なる女性」に対する明確な無関心・無関係は、太母ウロボロス龍との無意識的で強烈な結合によって補償されている。囚われの女性を解放しないということは、太母とその死の性格に支配され続けるという形で表されており、またこれは肉体と大地に対する疎遠、生の敵視、世界拒否をもたらしてしまう。

2010-05-31 18:08:11
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ここで、新劇場版で製作者が「使用用途がない」として行ったアスカの残酷な犠牲描写と、「自分がどうなろうと世界がどうなろうとレイだけは助ける」とシンジを吶喊させた事が果たして英雄的行為かどうか、英雄神話の模範ともいえるペルセウスの話を中核に、ユング=ノイマン的に検証してみよう。

2010-05-31 18:09:14
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ペルセウスはゼウスとダナエーの子であり、その周辺の人間関係においては、人間の姿を纏った「否定的な父」が二人存在する。一人は祖父アクリシオス、もう一人はポリュデクテス[=客を厚遇する男]である。

2010-05-31 18:09:32
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

アクリシオスは、息子を得たいと思って神託に伺ったところ、息子は得られないということと、娘(ダナエー)の息子によって殺されるということを告げられて、ダナエーを冥府の牢に監禁するが、彼女は黄金の雨に変身したゼウスによってペルセウスを受胎する。

2010-05-31 18:10:10
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

この神の子であるペルセウスが生まれたとき、アクリシオスは彼をダナエー諸共箱に入れて海に捨てる。そしてポリュデクテスは、ダナエーを手に入れ結婚するためにペルセウスを亡き者としようとして、ゴルゴン(メデューサ)の首を取ってくるよう、ペルセウスに命じる。

2010-05-31 18:10:34
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

三人のゴルゴンたちはポルキュス[=恐怖]の娘である。ポルキュスは姉妹のケートー[=恐ろしい女]&エウリュピア[=強力な女]、兄弟のタウマス[=驚愕させる男]と同様、ポントス[=原-海の深み]とガイア[=大地]の子である。彼ら全員から神話の恐ろしい怪物が生まれる。

2010-05-31 18:10:59
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ゴルゴンたちは、翼を持ち、髪が蛇であり、蛇を体に巻きつけており、また猪の牙、髭、突き出した舌を持った、恐ろしい原勢力を表す太母ウロボロス龍的なシンボルである。彼女達の姉妹であり見張人であるのがグライアイだが、この名前は「不安」と「恐怖」の意味である。

2010-05-31 18:11:22
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

グライアイたちも一つの目と一つの歯しか持たず、夜と死の境界[=西の果て・原大洋の岸]に住んでいる、ウロボロス的存在である。

2010-05-31 18:12:05
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

これに対してこのゴルゴン+グライアイに挑む神の子ペルセウスの側には、智慧と意識の神であるヘルメスアテナがついている。この二人の援助によって、彼はグライアイを騙して善き海の神であるニンフの元に行く道を聞き出し、ニンフたちから姿を消すハデスの帽子と空飛ぶサンダル、袋を貰う。

2010-05-31 18:12:41
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ヘルメスは刀を与え、アテナは彼女の盾を鏡として貸し与える。ゴルゴンの顔は直接まともに見た者は、石化して死んでしまうので、ペルセウスはその盾を鏡代わりにしながらメデューサ(ゴルゴン三姉妹の内、唯一可死の末妹。長姉ステノーと次姉エウリュアレーは不死身)の首を見て、それを刎ねる。

2010-05-31 18:13:04
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

メデューサの首を刎ねることに成功したペルセウスとそれを援助したアテナ→ http://twitpic.com/1ehyvn

2010-05-31 18:31:20
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アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

※上記のシンボル的アイテムを入手する過程(誰から入手するか)ということについては諸説あり、ここではそれが主題ではないので省略させていただきます。

2010-05-31 18:13:35
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

しかし、初期ギリシャ芸術におけるペルセウス像の描写の中心的主題は、このメデューサの殺害かと思いきや、実はそうではなく、妹を殺されて怒り狂ったゴルゴンの姉妹の追跡からの逃走となっている。奇妙だが、繰り返し描きだされるのは、「英雄ペルセウスが逃亡者として疾走する」像なのだ。

2010-05-31 18:14:05
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ペルセウスにとって殺害用の刀(鎌)よりも、翼のついたサンダル、姿を消す帽子、首を納める袋[=これらは全て知性と精神化のシンボルという点で同様の意味を持つ]の方が重要である。このことは英雄の恐怖を表しており、殺されるメデューサや追跡してくるゴルゴン達の恐ろしい側面を際立たせる。

2010-05-31 18:14:32
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

英雄の逃走や救助は、太母の圧倒的な性格を如実に物語っている。英雄はヘルメスとアテナの援助を受け、ニンフから奇跡をもたらす品々を贈られ、また顔を背けつつもメデューサ殺害に成功したにもかかわらず、太母達全てを殺すまでには至っていない(他のゴルゴン達はそもそも不死の怪物だ)。

2010-05-31 18:15:26
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