これは成長でも英雄でもない-ギリシャ神話の英雄ペルセウスと新劇場版「破」の碇シンジの比較検証-
- Abraxas_Aeon
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太母[=ゴルゴンたち]の圧倒的な力が強大であるため、意識[=ペルセウス・男性的自我]は直接その力に対抗することができない。間接的に、アテナ[=ペルセウス(男性的自我)を支える援助者的女神]の盾を鏡代わりにして映すことによってのみ、メデューサを殺すことができるのである。
2010-05-31 18:16:07しかしそうした助けがなければメデューサを殺せなかったとはいえ、メデューサの首を刎ねるという行為それ自体はペルセウスの大いなる英雄的行為であることには変わりはない。ペルセウスは恐ろしい太母を殺したが故に英雄である。そして更にこのペルセウスの英雄的行為は続く。
2010-05-31 18:16:32ゴルゴン・メデューサの首を刎ねて、その姉達からの追跡を巻いた後(これが可能だったのはヘルメス、アテナ、ニンフらから入手・借用したシンボル的アイテムを持ち合わせていた故)、ペルセウスは故郷に帰る途中、エチオピアの上を通りかかった際に美女が縛り付けられているのを発見した。
2010-05-31 18:17:21この縛り付けられていた美女は、その土地の王ケーペウスの娘で、その名をアンドロメダといった。彼女は、ケーベウス王の妃カシオペイアが、その容色自慢から海に棲むネーレイデスの内誰一人として自分には及ばないなどと高言したためにその祟りを受けて、海の怪物の餌食になるところだった。
2010-05-31 18:17:43というのは、カシオペイアの思い上がりに憤ったネイレイデスらが、ポセイドンに頼んで、この国に洪水を起こさせ、またこの怪物に襲わせたからである。アンドロメダが縛られていたのは、この禍を取り除くために彼女を人身御供として捧げる他にないというアンモン神の託宣が下ったためだった。
2010-05-31 18:18:27恐れ戦くこの囚われの美女を見た瞬間に、ペルセウスはその勇ましい騎士としての義侠心から、これを見逃しにしておく事はできなくなり、王宮を訪ねて、ケーペウス王に彼女の救済を約束し、その褒美としてアンドロメダとの婚約を求める。娘が助かるなら助けたいケーペウスは万一の僥倖を頼んで承諾する。
2010-05-31 18:19:43ペルセウスは、海神ポセイドンが遣わしたこの怪物と激闘し、これを斃す(あるいはメデューサの首を突きつけて、怪物を石化させる)ことで囚われの美女アンドロメダを救出することになる。さて、ここでこの怪物を遣わすポセイドンが実はメデューサと関係があるということについて触れてみたい。
2010-05-31 18:20:08ポセイドンは、実はペルセウスが首を刎ねたメデューサと愛人関係にある。彼は海の支配者として怪物そのものでもある。ユング=ノイマン的解釈においては、彼は確かに独立神ではあれど、太母メデューサに属する恐ろしい父であり、男根の恐ろしい原始的な力を表す従者的な位置づけとなっている。
2010-05-31 18:20:56ポセイドンは何度となく怒りにかられて、陸地を荒らし、人間を殺す怪物を送る。この怪物はまた龍や雄牛などの姿をしているが、これは両性具有的太母ウロボロス龍の男性的-破壊的側面が独立したものであり、太母の破壊傾向の道具に過ぎないものである。
2010-05-31 18:21:46ペルセウス神話における英雄神話の諸段階。神なる父[=ゼウスの代理としてのヘルメス]と神の花嫁である母[=この場合アテナ]の援助、敵意ある個人的な父親[=祖父アクリシオスとポリュデクテス]、超個人的な原両親[=メデューサと海の怪物]の殺害、囚われの女性[=アンドロメダ]の解放。
2010-05-31 18:23:15アンドロメダを救出した後、ペルセウスは彼女と結婚し、彼女との間に生まれた子をケーペウス王の後嗣として残し、彼女と共にポリュデクテスの許へと戻った。彼らが戻ってきた頃、ポリュデクテスの横暴は度を越したものとなっており、それがペルセウスの母ダナエーには耐え難いものとなっていた。
2010-05-31 18:40:57ダナエーは彼女の庇護者となっていたディクテュスと共にゼウスの祭壇に縋って救いを求めた。いかにポリュデクテスといえど、ゼウスの祭壇には手を出せない。そこで、彼はゼウスの祭壇を取り囲ませ、ダナエーを半ば監禁状態に置き、彼女が折れて出てくるか餓死するかという仕打ちにしていたのである。
2010-05-31 18:46:17この仕打ちに激怒したペルセウスは、ポリュデクテスの王宮に踏み入り、ポリュデクテスを、彼(ペルセウス)を取り囲んで押さえ込もうとした取り巻き諸共、メデューサの首を使って石化させ、ダナエーを救出する。この後、ペルセウスは恩人ディクテュスをポリュデクテスに代わるセーリポスの王とする。
2010-05-31 18:53:25そしてペルセウスは、生まれ故郷アルゴス(祖父アクリシオス王のいる場所)へ、ダナエーとアンドロメダを連れて帰る。また、ヘルメスやアテナなどから借り受けていたシンボル的アイテムを返却し、討ち取ったメデューサの首についてはアテナへの御礼として奉る。この首はアテナの盾に嵌め込まれる。
2010-05-31 19:03:02生まれ故郷アルゴスへ帰ったペルセウスは祖父アクリシオスとの面会を求めたが、アクリシオスは「自分が孫に殺される」という神託を恐れていた。だからといってペルセウスと敵対するのも好まなかったので、密かにアルゴスを脱出し、テッサリアのラーリッサ市に赴く。
2010-05-31 19:12:05ペルセウスに祖父を殺害する気など更々なかった。彼は祖父を探し回る過程でたまたまテッサリアを通りがかった時、その地域の領主が開催した運動競技会のことを知って、これに参加することを希望する。ところがこの協議の中で、ペルセウスの投げた円盤が、誤って見物人の間に飛び込んでしまう。
2010-05-31 19:18:14この円盤が白髪の老人の頭に当って、その老人に重傷を負わせ、死なせてしまう。この老人が実はペルセウスの祖父アクリシオスだった。こうした形でアクリシオスは自分が受けた神託どおりに孫によって死に至らしめられてしまったのである。
2010-05-31 19:24:30ペルセウスは祖父を誤って殺してしまったことを嘆き、深い悲しみの内に祖父を葬り、アルゴスへと帰ったが、ギリシャでは血族間の流血が最も深い罪であるとして償いと追放とを要求されるという規範があったので、自分の祖父の所領を継ぐことを憚って、従弟の子の所領ティリンスとの交換を申し入れた。
2010-05-31 19:52:33ペルセウスがここで、死や、去勢行為[=創造的な個人(英雄)としての死]に逃げないという点は、知らずして父を殺して母と婚姻してしまったことを知って目を潰した[=去勢行為に同じ]オイディプスとは違う側面があることも指摘しておこう。
2010-05-31 19:55:42この後のペルセウスの生活は、至って平穏に、アンドロメダとの間に数人の子女を儲け、己の領国をよく治め、安らかに世を終わったといわれる。アンドロメダは、かつてのような受身でも鎖に縛り付けられているのでもなく上なる女性[=男性を真に援助しえる対等的な伴侶足りえる女性]となっている。
2010-05-31 20:16:38ペルセウスはその英雄神話の諸段階において「上なる女性」との体験、即ち女性援助者と囚われの女性の双方との関係を持った体験を、アテナとアンドロメダの二人との関係において体験しているといえる。アテナは戦闘的で、男性と意識の味方であり、太母と敵対する女性的ガイストとしての性格が強い。
2010-05-31 20:36:11アテナがペルセウスから御礼として奉られたメデューサの首を自分の盾につけたことは、その男性と意識の味方である戦闘的な面の、原母に対する勝利に華を添えるものである。何はともあれ、祖父を殺してしまうという悲劇はあったが、この二人がいた為にペルセウスは最後まで英雄たりえた。
2010-05-31 20:42:51ウォルト・ディズニー生前最後の作品『眠れる森の美女』のフィリップ王子が、マレフィセント[=太母ウロボロス龍]の支配下に置かれた茨の城のオーロラ姫を救出しようとし、その際に龍となって立ち塞がったマレフィセントを斃すに当って3人の女性的精霊の力(アテナ的)を借りていることも該当する。
2010-05-31 20:51:56さて長い迂回路を経たが、本題に入ろう。まずは「破」において製作者が使用用途がないとしてアスカを犠牲した描写についてだ。個人的感想だが、一国あたりのエヴァ保有数を3機までとするバチカン条約といい、よくまああれだけ犠牲にするためだけのお膳立てを用意したもんだと呆れ果てたものである。
2010-05-31 21:04:313号機の起動実験が始まると、お約束の如く3号機に侵入していた使徒が、アスカごと3号機を乗っ取って暴走、大爆発を起こす。ネルフ本部においてはゲンドウがエヴァ3号機の破棄を決定、初号機のシンジを単独で投入することを決定する(「零号機は修復中」という「設定」だった)。
2010-05-31 21:14:20