漫画家 篠房六郎先生のプロット論ツイートまとめ

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

演出とか映像はあくまでテーマの従属物だと思ってる人が多いのが分かったけど、テーマが演出とか映像の従属物って事もあるよ。例えばアイドル映画とかは、女の子が可愛いのがとにかく第一だし、どっちが尊いかって話でもない。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

さて、まず問題となっているのは、俺が試しに提示した仮のプロット、あれが本編と比べていいのか悪いのかという所だと思います。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

ごっちゃになっているのは、いい、悪いの中に「より面白いのか」「より魅力的であるのか」「より売れるものなのか？」という事が全部含まれている事だと思います。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

しかし、俺があのプロットで目指したのは「より、分かり易い」それだけです。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

だからあのプロットを見て「分かり易いが魅力的でない」「分かり易いが売れそうもない」と分析して批判するのは当然で、そこら変は皆さんどんどん自説を語ってみて下さい。俺にとっても参考になります

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

具体的に「分かり易くしたためにこのように、脚本の魅力が減じた」「そもそも麻枝准脚本の魅力とは」とか、ちゃんとした文章で読んで見たいし、折伏もされたいです。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

脚本に対する技術の分析は、分析は科学的・客観的・定量的な基準に基づくものではない、ただの野暮な与太話、という主張も大いに分かります。ただしプロットの「わかり易さ」に関しては簡単に実践して比較する方法があります。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

それは、あらすじを文章にして書き起こしてみる事です。今までの実際のＡＢ本編９話分のあらすじを、全くの初見の人にも分かり易く、俺のプロットよりも短い文字数で書けたのなら、そちらのほうが「より分かり易い」という事になります。皆さんも試しにやってみて下さい

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

あらすじを書き起こす、というのはなかなか面白いもので、それを書くだけでも書いた本人がその作品をどのように、どの深さで把握してるかを映し出す鏡となります。それだけでも自分の力量を測られる事も心がけた方がいいです。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

細かい設定を先に並びたてるのは悪手。おとぎ話のように単純化したほうがいい。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

迷った人はコレでも聞いて。http://www.tbsradio.jp/utamaru/labo/index.html　２０１０年９月１９日放送の、「スクリプトドクター」についての話。為になります、すごく。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

もう一回俺のを張ります①主人公はごく平凡な高校生で平凡な学園生活を送っている　②学園には何だか不真面目な事ばかりして大騒動を起こしているサークルがいて、「学校の校則を守って正しい生活を送っていると、お前らみんな消えてしまうぞ」と訳の分からない事を言っている。何だあいつら？

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

続き③ある日、生徒会長の手によって生徒が消されているのを主人公が目撃、問題サークルの言っていた戯言が事実であると裏づけされるような出来事が次々起こる。「大変だ！自分も消されないように反抗して戦わなくっちゃ」と決意する。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

続き④ところが生徒会長と話をよくしてみると、自分も学校の生徒の多くも実は既に死んでいる亡霊のような存在である事が判明し、生徒会長はその亡霊を満足させて成仏させる、天使のような存在だった。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

続き⑤主人公はここで自分が死んだという確かな記憶と、自分が生前人を助けて心を癒す為に働こうとしていた事を思い出し、天使ちゃんの手伝いをしながら、サークルの皆の心の問題を解決して穏やかに成仏させてやろうと決意する。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

あらすじの要約に挑戦した人なら分かってもらえると思うが、俺は時系列や因果関係を変えただけで、最大限原作の楽しい雰囲気も失わないよう、すごく気を使ってます。イヤガラセでやってないんですよ、本当。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

こっから、もう一つの話題に行きます。題して「テーマとはなんぞや？」

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

まあ、結構非難されてるのが、俺が作品のテーマも知らずにプロットを切り直したことですが、俺は一応、俺なりに汲み取った意図の下にやってます。作者の伝えたいテーマ≠俺の汲み取ったテーマなのは当然ですが、これは、俺の所為ではないっす。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

順を追って説明しますが、作り手が話したとおりのテーマを額面どおりに信用するな、という掟がまずあります。例えば、どっかの宗教団体が「人類愛と、希望」というテーマのもとに映画を造ったというので、実際に見にいってみたら観客は「入信と、お布施」というテーマを受け取るかもしれない。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

「タイタニック」を見た人でも、監督の意図はともかく見終わった観客は「美景男女二人の悲恋物語」「極限状況下にある人間模様を見るパニックムービー」「キャメロン監督の特撮満載のメカ燃え映画」と、それぞれ個人によって受け取るものが違います。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

テーマとは作品を見終わった後に結果として受け取る観客のものです。だからよく「テーマは作り手が先に言ってしまったらおしまい」的なことが言われている訳です。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

テーマ性の強い優れた作品というものは、作り手の意図した通りのものをより高い割合で受け取ってくれたという、結果としての関係性にのみあるもので、高尚なテーマを先に明記した作品ではないのです。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

それにプロットというものは物語の「因果関係のある出来事を、簡潔に抜き取ったもので、骨組みです。感動的な作品の、感動的になる仕組みを抜き出したもので、それを考える時は冷静に、客観的になるべきものです。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

テーマを後付けからプロットに入れ込むと、どう言う事になるのか、例えば桃太郎で「愛と絆」というテーマを強調すると「おばあちゃんはきびだんごを最後の命の火でもって全力で作り…」「それを知ったサル、イヌ、キジはきびアレルギーにもかかわらず必死にきびだんごをほおばり…」とおかしな事に。

篠房六郎　マンガワンにて「姫様はおあずけです」新連載 @sino6

俺なりの考える愛と絆エピソードを、俺なりに無理矢理「盛る」こ事で、それはもう、元の作品とはかけ離れた、もう別の、俺の作品になってしまうのです。