ガントレット・ウィズ・フューリー #4
痙攣の一歩手前だ!ニンジャスレイヤーは手を伸ばす。右手……左手。這い進む。「弱っているなニンジャスレイヤー=サン。なに、死ぬまでにしっかりと神聖な教えを浸透させ、ジゴクでブッダと闘争する神聖戦士に仕立て上げてやるから安心せよ。よいかな、ニンジャは救い……ニン、アバーッ!?」 48
2012-03-01 19:31:35ニンジャスレイヤーの右腕が露わになった。その部分だけシースラッグのゲル体が離れたのだ。ナムサン!その腕が押しつけるは、よく油を吸った木片……オブツダン門の側で砕けて散らばり、いまだチロチロと燃え続ける樽の破片だ!マニプルとの戦闘中に騒がしく転がり込んで来た炎纏う樽の残骸! 49
2012-03-01 19:36:01高熱によりゲル体は収縮!「アバーッ何を!?狂ったか?貴様も無傷では済むまいぞ!」ニンジャスレイヤーの身体を締め付けていた圧力が緩む!シースラッグが動揺しているのだ!さらにニンジャスレイヤーは手近の別の燃焼片に左腕を押しつける!「アバーッ!?」熱!焼ける!左腕部のゲル体も収縮!50
2012-03-01 22:21:06「イヤーッ!」この弛みを見過ごすニンジャスレイヤーではない!力を込め立ち上がる!一歩!二歩!三歩!おお、彼はオブツダン扉のすぐ横にしつらえられた四角い金属のカバーへ近づく。「何をするつもりだ?やめろ!」ふたたび拘束力を増すシースラッグ!「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは呻く!51
2012-03-01 22:23:42だが微かな弛みはニンジャスレイヤーに再び苦闘する余地を与えてしまっていたのだ。苦悶しながら金属カバーをこじ開ける。そこは配電盤!「多大電気」「ヤメテ」「達者のみ」の警告文字も目にまぶしい。「やめろ!やめろ何を……」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはチョップ突きを繰り出す! 52
2012-03-01 22:29:51ZZZZZZZZZZZT!「グワーッ!」「アバッバッ、アバババババーッ!?アババババーッ!」チョップ突きは配電盤のパネルを突き破り、配線を破壊した!閃光と火花、煙が溢れる!バトルルームの照明がせわしなく明滅する中、ニンジャスレイヤーの身体からゲル体が剥がれ、後方へ跳ね飛んだ!53
2012-03-01 22:35:42明滅……停電……暗黒、数秒後、電力復旧。ニンジャスレイヤーは背中から薄い煙を立ち上らせながら、床の上で痙攣するシースラッグを見下ろしていた。半透明のゲル体が見る見るうちに個体化し、青黄マダラ模様の装束を着たニンジャとなった。「アバ、アバッ……」 54
2012-03-01 22:37:56背中の装束は焼け焦げて失われていた。だがその背中に血が滲み出すと、あっという間に赤黒の装束が織り上げられ、復元された。これは傷の回復を意味しない。しかしニンジャスレイヤーは平静を保った。身体は乾いている。いかなる面妖なジツか、覆っていた液体は一滴残らずシースラッグだったのだ。55
2012-03-01 22:42:35「オヌシがいかなる神を信じようと私は構わぬ」ニンジャスレイヤーはシースラッグをジゴクめいて見下ろした。「その神にでも祈れ。あるいはハイクを詠め。カイシャクする」「た、助け」「イヤーッ!」「アバーッ!」ニンジャスレイヤーの踵がシースラッグの頭を踏み抜く!「サヨナラ!」爆発四散!56
2012-03-01 22:46:46「……」ニンジャスレイヤーは扉をくぐった。上り坂を見上げる。一歩踏み出す。彼は膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れた。 57
2012-03-01 22:53:45「イヤーッ!」巨大な鉤拳が、一際剛健なオブツダン扉を破壊し、叩き開いた。玉座に座り、チャブの上に寝そべったオイランの裸体に並べたトロとバッファローのスシを手づかみで食べていたイヴォーカーであったが、そのエントリーと同時に立ち上がり、かたわらの6フィートボーを掴んだ。「アァ?」59
2012-03-01 23:02:49「チェラッコラー!?」ボンズヤクザ達が一斉に侵入者へ向き直った。彼らもまた5、6人ずつで裸のオイランを囲み、何らかの破廉恥な儀式を行わんとしていたところと思われた。没薬の煙が立ちこめる恐るべき堕落の広間の視線はただ一点、アコライトに集中した。 60
2012-03-01 23:08:19アコライトは絶句した。原型をとどめぬまでに恐ろしげに堕落させたバトルカフタンを着、タトゥーで覆われた身体を晒すかつてのボンジャン・ハイボンズの姿が、決断的に突入した彼をして、そのように驚愕せしめたのだ。同門の者達をこの男が虐殺した日から何日経ったろう?「……グノーケ=サン」 61
2012-03-01 23:14:47「誰だお前?」イヴォーカーは目を細めた。「ボンジャン・ボンズのガキ。さては復讐だな、エッ?生き残りがいたかよ」「私と闘いなさい」アコライトの目に戦闘意志が再び戻った。彼はヤクザボンズ達が目に入らぬかのように、玉座へ向かってツカツカと前進する。両腕には恐るべきガントレット! 62
2012-03-01 23:18:27「めんどくせェからできるだけ殺せ、そいつのこと」イヴォーカーは冷酷に命じた。神聖皇帝の命令は絶対!ヤクザボンズ達は身構える。手近のものはドス・ダガーを、離れた者らはチャカを抜き、アコライトめがけ殺到する。「ザッケンナコラー!」 63
2012-03-01 23:20:28「ボンジャン!」アコライトは両脚をまっすぐ踏みしめた。地鳴り!そしてガントレットを嵌めた右腕を地面めがけ突き下ろす!「イヤーッ!」「グワーッ!」殴りつけた地面を中心点に、放射状に不可視の衝撃波が飛んだ。押し寄せてきたボンズヤクザ達は同時に跳ね飛ばされ、得物は虚しく宙を舞う! 64
2012-03-01 23:24:15ドス・ダガーヤクザは吹き飛んでチャカヤクザを巻き添えに倒れ伏した。何一つ攻撃機会無し!ゴウランガ!古文書に記されしボンジャン・カラテ、「拒否のハンマー」である。「私の相手は貴方だ!イヴォーカー=サン!」アコライトは中腰の攻撃姿勢を取り、凛として言い放つ! 65
2012-03-01 23:28:20「ゴミカスがァー」イヴォーカーは6フィートボーを両手で構えた。するとボーの側面にくまなく刻まれたルーンカタカナが脈動し、にわかにその長さが12フィートまで伸びた!コワイ!「てめぇのその腐れ腕だ、特に気に入らねえのは!身分に過ぎたオモチャはぶっ壊す!骨と肉ごとなァ!」 66
2012-03-01 23:34:24アコライトのガントレットもまた、その表面に不吉なルーンを一瞬、走らせる。脈打っている。二つのマジックアイテムが互いに呼応しているのか?だが取るべき行動は何も変わらない。アコライトは突き進んだ。「貴方を倒します!」 66
2012-03-01 23:36:14(第二部「キョート殺伐都市」より:「ガントレット・ウィズ・フューリー」 #4 終わり。 #5へ続く)
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