【ほうかご百物語】妖怪についてつらつらと(5巻・6巻)

ライトノベル・『ほうかご百物語』(峰守ひろかず著、電撃文庫) http://goo.gl/BI3Kh のシリーズに登場する妖怪の元ネタ・モチーフと思しき妖怪譚などについての呟きをまとめるリスト。 ※このまとめは覚書です。じっくり精査するのではなく、思い付いたネタやちょっとだけ調べた事項をまとめておくためのものです。 ※個人のメモですので、緩く見てください。 ※「作中との比較」の部分は、「この部分は文献を参考にするとこういうことであるに違いない!(断定)」ではなく、「もしかしたらこういうことなのではないだろうか?」という一つの可能性の「提案」を行うものである、ということを予めご了承ください。 続きを読む
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アルム=バンド @Bredtn_1et

一方で下駄は小人とも関係があるという考えもある。『ものと人間の文化史 下駄』に拠れば、小人は俳優(わざおぎ)であり、神祭で神意を伺う者とする概念が根底にあったという説を取り上げて、小人は神聖視・特別視される存在であったと述べている。

2012-08-27 18:36:14
アルム=バンド @Bredtn_1et

その上で小人は俳優であり、神祭の中で、呪力を持つ履物である下駄を履いて祭祀に携わっていたのではないか、という説を立てている。また、この説を補強する材料として一寸法師が下駄の歯の下に隠れて難を逃れたという一節を小人と下駄の間に関係があったことが昔話にも残っている例だとしている。

2012-08-27 18:36:17
アルム=バンド @Bredtn_1et

この説を採用するならば、宝下駄の説話は人間世界の外部から財福がもたらされるというモチーフや下駄の呪力といった要素に加え、物語の内容(財福を得る代わりに背が縮む=小人になる)は上記のような古代の神の祭祀に携わった者の記憶を残滓として残していると考えることもできるのではないだろうか。

2012-08-27 18:36:30
アルム=バンド @Bredtn_1et

途中から個人的見解による分析が入っていたが、以上概説メモ。以下『ほうかご百物語』5巻の本編との比較。

2012-08-27 18:36:46

※作中との比較

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『ほうかご百物語』5巻では付喪神となって登場した下駄。転んだら小判が出て背が縮む(というか小人になる)、というのは先述した宝下駄の話でしょう。

2012-08-27 18:37:02
アルム=バンド @Bredtn_1et

というよりも宝下駄の話に登場する下駄が付喪神になったのが5巻の下駄(作中に登場する文書では、小判ではなくどんな願いも叶うとされるなど誇張されていたが)。そんな例は知らないと経島先輩は言っていましたが、確かにないだろうねぇ…昔話に出てくる神秘アイテムが付喪神になるとは。

2012-08-27 18:37:11
アルム=バンド @Bredtn_1et

…というかすみません、宝下駄の話自体初耳でした。調べたら『まんが日本むかしばなし』でも取り上げられたことがあるらしく、その意味では知名度は高い部類に入りそうだ。なので余計にびっくりしました。まだまだ勉強が足りないと感じた辺りで以上。

2012-08-27 18:37:17

※付喪神たち

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瓶っぽいやつ。> http://t.co/Kx5ITs8u 瓶長 - Wikipedia / http://t.co/2ozgr5bm 瀬戸大将 - Wikipedia

2012-03-15 11:57:48
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茶碗・鍋っぽいやつ(釜だけど)。> http://t.co/GIUzcI0k 禅釜尚 - Wikipedia / http://t.co/m6pbBeK0 鳴釜 - Wikipedia

2012-03-15 11:58:17
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銅鑼っぽいやつ。> http://t.co/4Y9a8FkW 乳鉢坊 - Wikipedia / http://t.co/1xZ8b3B2 鉦五郎 - Wikipedia

2012-03-15 11:58:53
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で、ついでに。> http://t.co/l8Uwj7mH 雲外鏡 - Wikipedia / http://t.co/s6QloUQ9 塵塚怪王 - Wikipedia

2012-03-15 11:59:22

※6巻

※オバリヨンについて

※文献を基にした概説メモ

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今日は『ほうかご百物語』6巻より、「オバリヨン」。

2012-08-03 16:54:18
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参考文献は[1]「越後三条南郷談」(外山 暦郎著)『日本民俗誌大系 第7巻 北陸』(株式会社角川書店、1974)、[2]『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)、[3]『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』(谷川 健一編纂、三一書房、1988)、

2012-08-03 16:54:39
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[4]「妖怪談義」『定本 柳田國男集 第四巻』(柳田 國男著、筑摩書房、1962)、[5]『日本妖怪博物館』(株式会社新紀元社 Truth In Fantasy編集部・弦巻 由美子編、戸部 民夫・草野 巧著、株式会社新紀元社、1994)、

2012-08-03 16:54:52
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[6]「音と民俗」(武藤 鉄城著)『旅と伝説』第11年7月号(通巻127号)(『<完全復刻> 旅と伝説 第22巻』(岩崎美術社、1978)より)。

2012-08-03 16:54:53
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まず、バリヨンは『越後三条南郷談』に見える妖怪である。夜中に道を行く人がいると、その背中に飛び乗って頭をかじる。そのため、夜中に出歩くときは金鉢を被ると安全であるという[1][2][3]。なお、"バリヨン"とは"負われたい"という意味の方言[1][2][3]。

2012-08-03 16:55:19
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この妖怪を家まで持って帰ると金甕(金の入った瓶)だった、という話もあるという[1][2][3]。

2012-08-03 16:55:22
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柳田 國男『妖怪談義』に拠れば、同じく越後にはバロウ狐というものもいるという[4][5]。こちらは道の傍らに出てきて「バロウバロウ」と言って通行人を怖がらせた。

2012-08-03 16:55:44
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ある若者が周囲の制止を振り切り擂鉢を被って行くとやはり「バロウバロウ」と言うので、「さあばれ、さあばれ」と言い、縄で背中にぐるぐる巻きにして戻ってきた。狐は逃げようとして首筋に噛み付くが歯が立たない。大きな尻尾を出して降参したが、構わずに焼き殺されてしまったという[4]。

2012-08-03 16:55:46
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越後には古志郡上條村の大榎の下にバローンという狸もいたという[4][5]。こちらも豪胆な青年がこれを背負って、逃げようとするのを無理に連れ帰って狸汁にしたが、食べた者は全員死んでしまったという[4][5]。

2012-08-03 16:55:56