ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ #6

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ブラックヘイズは、やおら立ち上がった。振り返ると木陰にニンジャが立っていた。「……ザイバツ」「ドーモ、ブラックヘイズ=サン。私はメンタリストです」「メンタリスト=サン?」ブラックヘイズは首を傾げた。「知らんな。アンバサダーの遣わすニンジャは確か……」 25

2012-03-25 01:29:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メンタリストと名乗ったニンジャは、ブラックヘイズの胸元を無言で指差した。ブラックヘイズは己の身体を見下ろした。「……?」心臓から刃が突き出している。薄桃色から薄緑色に色彩を変え続ける刃が。「アバッ」ブラックヘイズは思い出したように血を吐いた。力が失せ、両膝をついた。 26

2012-03-25 01:31:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「来たまえ、ドラゴン・ユカノ」メンタリストがアムニジアに手招きした。アムニジアは後ずさろうとした。「これ……は、何だ、クソッ……」ブラックヘイズが心臓を押さえ、震えた。刃は無い。だが彼は血を吐いた。メンタリストはぞっとするような視線をそちらへ向けた。「はて。元気があるな」 27

2012-03-25 01:37:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザイバツ……シャドーギルド……メンタリスト……?」「左様、左様。ギルドは貴様がごとき卑しい傭兵を重用せんのだよ。夢でも見たのかね?」彼はアムニジアの顔の前に片手をひろげた。彼女の瞳孔が開ききり、うなだれた。メンタリストはブラックヘイズに向き直った。「死ね」 28

2012-03-25 01:44:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この女はどうなる」「ん?フェイタルか?」メンタリストは当惑したように聞き返した。「ああ殺すとも。ドラゴン・ユカノは重要存在、アデプトごとき……だが死にかけだな、それは」「イヤーッ!」ブラックヘイズは咄嗟にフェイタルの身体を抱え上げた。そして左手をバイオバンブーめがけて射出!29

2012-03-25 01:49:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「!」メンタリストはアムニジアとブラックヘイズを交互に見た「はて?しぶといね」「イ……イヤーッ!」ブラックヘイズとフェイタルの身体がワイヤー収納によって浮き上がる。ブラックヘイズは血を吐いた。左手が再び接続されると、また遠くのバイオバンブーめがけ、再度射出した。「イヤーッ!」30

2012-03-25 01:55:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メンタリストはアムニジアの肩に手を置き、遠ざかるブラックヘイズに片手を翳した。ブラックヘイズの背中に、薄桃色から薄緑色に色彩を変え続ける刃がふたたび貫通!「グワーッ!」ブラックヘイズはさらに左腕を射出!「なんとしぶとい。死期を延ばして何になる」メンタリストが眉をひそめる。 31

2012-03-25 02:00:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼はブラックヘイズをなおも追撃するそぶりを見せたが、接近する別の存在を感知し、思いとどまった。彼はそちらを見やった。片眉がぴくりと動いた。「はて。そのなりは。ニンジャスレイヤー=サン」「ユカノ」「左様、ユカノ=サンだよ」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがスリケンを投擲! 32

2012-03-25 02:04:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、おお、いかなるジツであろう?メンタリストの身体は石を投げ込まれた泉めいて波打ち、スリケンを透過してしまった。「アイサツも無しに野蛮な」メンタリストはあきれたように言った。「ドーモ、私はザイバツ・シャドーギルドのメンタリストです。そしてどうやらオタッシャする時間です」 33

2012-03-25 02:07:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは飛び蹴りを繰り出す!メンタリストの上半身が水飛沫めいて爆発した。「こんなにタケノコが光っている。タケノコは光りますか?おかしいと思いませんか?あなた」メンタリストが嘲笑った。声は?どこだ?ニンジャスレイヤーはユカノを振り返った。 34

2012-03-25 02:10:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……そこには何も無かった。ニンジャスレイヤーは鬱蒼と茂るバンブーに囲まれていた。土がむき出しになった円形の空間に彼はいた。ユカノは?いない。幻であったのか?彼はまるで目覚めた夢の名残のごとくに薄れゆく記憶をつなぎ止めようとした。ここにユカノがいた……そしてニンジャが一人……。35

2012-03-25 02:15:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

|010010……スレイヤー……ニンジャスレイヤー=サン| ナンシーからのIRCノーティスだ。ニンジャスレイヤーは深呼吸し、これに応えた。「ユカノを失った。彼女はザイバツの手に落ちた。私のウカツだ」|次の手を考えましょう0100100100101|ノイズが混じる。「どうした」36

2012-03-25 02:23:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

|混線……妨001001害|ザザッ、ザッ……ニンジャスレイヤーは通話機を凝視した。『ドーモ』音声通話だ。その異様な音声には聞き覚えがある。「ドーモ。またオヌシか?一体何者だ?ガンドー=サンか?」『……違う。だが、ガンドーは無事だ。そんな事よりお前には時間が無い』 37

2012-03-25 02:29:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『今どこで何をしている?』「……それはこちらの台詞だ。正体を明かさぬならば切る」『私の名は便宜的にディープスロートとでもしておこう。今どこで何をしている?お前がまごまごしている間にドラゴン・ユカノが……』ここで彼は頭上の空の様子、そして通信機の表示時刻の異常に気づいた。 38

2012-03-25 02:33:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

おかしい。彼の体感していた時間よりも3時間は多く経過している。今の……おぼろげな……ジツのせいか?『お前には時間が無い。ドラゴン・ユカノを救い出したく無いのか?』通話が彼を我に返らせた。「続けろ」『彼女はキョートへと護送中だ』キョート?「何のために?」『何らかの陰謀の為にだ』39

2012-03-25 02:36:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ディープスロートは捲し立てた。『危険だが、先回りする方法が一つある』「手短に答えろ」『アンバサダーとディプロマットだ。ザイバツ・ニンジャだ。探せ。片方がネオサイタマに潜伏している。危険だが、お前を一瞬でキョートに運ぶだろう』「その後は?」40

2012-03-25 02:38:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『アンダーガイオン第八階層、イーグル区画の廃工場地帯にある、壊れた赤いコケシ電話ボックスを探せ……』 41

2012-03-25 02:39:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい……おい」ブラックヘイズは背中のフェイタルを呼んだ。「……」「生きてるか、おい」「……」微かな息がかかる。ブラックヘイズは安堵した。自らも驚く程に。彼はフェイタルを背負い、そんな彼自身も足を引きずるようにして、竹林の中を歩いていた。 43

2012-03-25 02:44:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メンタリストは……追って来ない。彼は足を止めた。そして咳き込んだ。「生きてるか」「……」「生きてるか、フェイタル=サン」「……ああ」 44

2012-03-25 02:45:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここらで休むか」ブラックヘイズは言った。「つうか、アレだ、休ませてくれ、ちとしんどくてな」「……ああ」フェイタルは同意した。「下ろしてくれていい。立てるから」「すまんな」ブラックヘイズは彼女を下ろした。彼はバンブーにもたれかかるように腰を下ろした。 45

2012-03-25 02:48:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今回の仕事は、しんどい……」ブラックヘイズは震える手で葉巻に点火した。「実入りも無し、割に合わん」「平気か。ブラックヘイズ=サン」フェイタルがしゃがみ込んだ。「それはこっちの台詞だ、フェイタル=サン。お前が雑なイクサを……したからこんな……」彼は俯いた。 46

2012-03-25 02:51:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「メンタリスト」ブラックヘイズは葉巻を吸おうとしたが、やめた。葉巻を揉み消すと、再び話し出した。「……始末しに来たぞ。俺だけじゃない。お前の事も」「メンタリスト」フェイタルが言った。ブラックヘイズは震えながら頷いた。「そうだ。知っているか」「ザイバツが……私達を」 47

2012-03-25 02:55:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺らはどうなる……」ブラックヘイズはなかば朦朧として、呟いた。「この後どうなる」「この後?」「ゴホッ、そう、30分後、1時間後、その後……」そして彼は黙り込んだ。フェイタルは問いの意味を考えようとした。だが、やめた。ブラックヘイズの隣に腰を下ろした。48

2012-03-25 02:58:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わからんよ」フェイタルは穏やかに言った。「わからんよ。そんな事は」返事が無い。いや、しばしの沈黙の後、答えた。「……そうか。ちと休もう」「そうだな」フェイタルは頷いた。ブラックヘイズがもたれかかって来た。彼女はそれをかき抱いた。 49

2012-03-25 03:01:24