チューブド・マグロ・ライフサイクル #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
2
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あ、あれは一体」ヨシチュニは声を震わせた。「海産物だ……スシになる…俺たちが食べていたものだ」マサムネが押し殺した声で囁く。もう台車は来ない。廃棄物は左へ、イカとマグロは右へ。2人は素早くその運搬廊下を横切ろうとするが、ヨシチュニがバランスを崩し転倒!「アイエエエエ!」 21

2012-03-30 21:26:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウカツ!マサムネが舌打ちし、振り返って手を差し伸べる。見ると、廊下の中央部に窪みが。クローンヤクザたちが台車のバランスを崩していたのは、これが原因だったのだ!何たる不注意か!「アッコラー!」「ザッケンナコラー!」彼方からクローンヤクザの声!2人は運搬廊下を横切り、駆けた! 22

2012-03-30 21:33:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

目の前には『研究者だけの』と書かれた扉。「このエレベータだ……」マサムネはLAN端子にケーブルを伸ばし、突破を試みた。ヨシチュニが背後を振り返る。クローンヤクザが一列に並んで整然と接近!ドアが開く!乗り込む2人!閉じるドア!差し込まれるヤクザの腕!それを蹴り出すマサムネ! 23

2012-03-30 21:42:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュグン!研究者用高速エレベータが上昇を開始する。マサムネとヨシチュニは床に座り込み、息を荒げていた。「すいません……イカを生まれて初めて見て……取り乱しました……すいません……」「気にするな……」マサムネは悲壮な決意を秘めた青い瞳で天井を睨む「……昔、お前に似た奴がいた」 24

2012-03-30 22:02:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「記憶が……戻ったんですか?」とヨシチュニ。このマッポー的実験施設から脱するためのカギがマサムネの失われた記憶であることは、ほぼ間違いない。「あと少しなんだ……」マサムネは眉間に皺を作りこめかみを圧す「……お前に似た、屈託の無い笑顔でそいつは笑い……進んで被検体になった」 25

2012-03-30 22:08:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「友達、だったんですか?」とヨシチュニ。「覚えていない。……この実験施設で初めて会ったんだろう。いい奴だったよ。……そいつは実験が終われば大金が貰えると信じ……笑顔でバイオ合成手術室に向かい……カプセルに入った……」マサムネの脳裏に爆発事故直前の光景がフラッシュバックする。 26

2012-03-30 22:15:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時!乱暴な音が鳴り、エレベータが止まって扉が開いた。「……ここじゃない、早すぎるぞ」マサムネが上階ボタンを叩くが、操作パネルが反応しない。LAN直結を試みるも、直後に自動IRC攻撃を受け、首筋に火花が散る!素早くケーブルを抜くが、ファイアウォールを焼き切られてしまった! 27

2012-03-30 22:28:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マサムネが咳き込みながら、ヨシチュニに続くよう促す「……動きが察知されたのかもしれん。別ルートだ……」2人はエレベータから出ると、クローンヤクザの怒声や靴音の反響から逃げつつ、真白い廊下を駆けた。そして壁に唐突に現れた鉄製タラップを昇り、天井のトラップドアを……押し開ける! 28

2012-03-30 22:40:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マンホール状ハッチが開き、2人は夜の廃墟へと這い出した。交差点に立つ巨大クラゲめいた軍事用ボンボリが静かな光を放ち、ハッチの開閉で吹き上げられた灰色の粉塵を映し出す。「ゲホッ、ゲホッ!地表……?」「……違う。廃墟に似せた、広大な戦闘実験室だ」マサムネの顔つきが険しさを増す。 29

2012-03-30 22:48:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あと少しだ……ここさえ抜ければ……!」マサムネが瓦礫の山を登り、手を引く。被験者用サンダルの隙間から、割れたガラス片が忍び込み、容赦なく二人の足を切り裂いた。マサムネを信じ苦痛に耐えるヨシチュニ。だがその時、警報ブザーが実験室内に鳴り響き、サーチライトの光が2人を捉える! 30

2012-03-30 23:01:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャかと思えばただの人間か!」崩れたビルの屋上には、サーチライトの光を背負うニンジャの影!スカベンジャーである!それは無力な2人を嘲笑うかのように言い放った!「研究所の秘密を知ったからには、モルモットめいた実験動物として働いてから死んでもらおう!セントールを放てい!」 31

2012-03-30 23:12:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイヨロコンデー!」数十メートル上のモニタ室で、ヨシダ先生が開閉ボタンを押す。分厚いシャッターがゆっくりと開く!「ニィイイイイーッ!」凶暴な怪物の唸り声がその内側から洩れ出る!コワイ!殺戮を待ちきれない怪物は重い鎖を打ち鳴らし、蹄を荒々しく何度もシャッターに叩きつけた! 32

2012-03-30 23:21:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!ニンジャナンデ!?アイエエエエ!次は何が!?」ヨシチュニは恐怖におののく。「あいつの……成れの果てだ……!」マサムネは片手でサーチライトの光を遮ると、シャッターの方向を睨み、右手をポケットに隠した。シャッターが開ききり、セントールがその冒涜的な姿を…現す! 33 

2012-03-30 23:29:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニィイイイイーッ!ニィイイイイーッ!」電子錠が外れて鎖の拘束が解かれると、セントールは怒りを顕に戦闘実験室へと躍り出た。敵はサーチライトに照らし出された人影。瓦礫の山に向かって駆ける!だがここで、マサムネは秘密裏に持ち込んだ丸い物体をポケットから取り出した!これは一体!? 34

2012-03-30 23:36:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……しまった!センベイだ!」驚愕とともにモニタを見つめるヨシダ先生は、操作パネルを拳で叩いて顔を歪めた「何故センベイの秘密を!?あいつは何者だ!?」。マサムネはセンベイをかざし、声も枯れよと必死の形相で叫ぶ!「ヨタロウ=サン、俺だーッ!思い出せーッ!思い出してくれーッ!」 35

2012-03-30 23:44:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

するとどうだ。おお……ゴウランガ!セントールの蹄音は次第に穏やかになり、飼い主のもとに擦り寄る無邪気な犬めいてマサムネの横にやってきたではないか。そして腰を下ろしてオジギし、センベイをねだった。ヨシチュニはただ震えながら、ニンジャ覆面を被った鹿角を持つ人間の眼を見ていた。 36

2012-03-31 00:00:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨシダ先生、これは何だ!セプクものの事態だぞ!」スカベンジャーはIRCインカムで叱責する。「ご迷惑をおかけしています!」とヨシダ先生「セントールには鹿の本能が残っており、センベイに抗えないのです!奴は失敗作です!人間でも鹿でもニンジャでもない、最低最悪の失敗作なのです!」 37

2012-03-31 00:01:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それだけではないはずだ……ヨシダ先生は狼狽しながらも、マサムネの顔画像に対しUNIX解析プログラムを走らせていた。ただのモヒカンだと思って甘く見ていたのが間違いだった。室内のモニタに無数の被験者の顔画像が小刻みに現れては『不一致な』の文字が出る。「奴は……奴はもしかして…」 38

2012-03-31 00:09:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」スカベンジャーはマサムネ目掛け、4枚のスリケンを投擲!「ニィイイイイーッ!」セントールが角でこれを弾く!だが弾き損ねた一枚が、マサムネの背中に命中!「グワーッ!」痛ましい悲鳴!それを聞いたセントールは曇りのない瞳に怒りをたたえ、迷わずスカベンジャーに突撃する! 39

2012-03-31 00:17:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……アイエエエエ?怪物が……戦ってくれているんですか……?」ヨシチュニは信じ難い光景を見ながら、マサムネの膝にしがみついて震えていた。全くわけがわからないが、廃墟で2人のニンジャが戦っている。「そうだ……彼を救い出すために来たんだ。あの時は、俺だけが逃げ出してしまった」 40

2012-03-31 00:27:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「ニィイイイイイーッ!」「イヤーッ!」「ニィイイイイイーッ!」カラテ段位はスカベンジャーが明らかに上!セントールは何度も蹴り飛ばされて地に転がり、鹿の横腹や背中をガラス片で切り裂かれる。だがマサムネの声をニンジャ聴力で聞いた彼は、力が漲るのを感じ、戦い続けた。 41

2012-03-31 00:34:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「援護が必要だ……何か武器は……」マサムネが背中の痛みを堪えながら、辺りを見回す。ヨシチュニも立ち上がった。自分も戦わねば。自分には人よりも優れた観察力がある。「マサムネ=サン、あれ!」瓦礫の下に隠れた無傷のオートマチック銃を発見!マサムネはそれを拾い、コッキングを行った。 42

2012-03-31 00:42:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マサムネは汗を浮かべながら、ガレキ山の下でカラテを続ける2人のニンジャに向かって拳銃を向けた。ニンジャの戦闘は、常人の目に追えないほどの速度と、予想できないトリッキーな動きが特徴だ。セントールを巻き添えにせず、スカベンジャーだけを狙えるか?マサムネは死せるブッダに祈った。 43

2012-03-31 00:47:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがその時!戦闘実験室にヨシダ先生の緊急放送が鳴り響いたのだ!「マサムネ=サンじゃないか!ドーモ、ヨシダです!爆発事故で死んだと思っていた!一体何をやっている!?」「ヨシダ……サン?あんたは誰だ!?」マサムネの手が震える……冒涜的記憶が蘇る恐怖に!「俺は……誰なんだ!?」 44

2012-03-31 00:54:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「マサムネ=サン、君はもしや記憶喪失か?」とヨシダ先生「それでそんな姿に!思い出せ!思い出すんだ!ビョウキ、トシヨリ、ヨロシサンだ!君は遺伝子の髄まで愛社精神に満ちた、ヨロシサン製薬のバイオ技術者だったろう!その怪物、セントールを生み出したのは君だ!馬鹿な真似はやめろ!」 45

2012-03-31 01:00:37