チューブド・マグロ・ライフサイクル #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
2
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より 「チューブド・マグロ・ライフサイクル」#4

2012-04-06 21:46:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:地下階層都市アンダーガイオンに暮らす若い労働者ヨシチュニ・ヒロシは、ネギトロ丼を買って家路につく途中、鹿狩り車を発見する。高額なバイトを持ちかけられた彼は、疑うことなく車に乗ってヨロシサン製薬の実験施設へと連れてゆかれる。そこでは恐るべきバイオ鹿計画が進められていた)

2012-04-06 21:50:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(謎の記憶喪失男マサムネとともに脱走を試みたヨシチュニは、半人半鹿の凶暴なバイオニンジャ「セントール」と、ザイバツの邪悪なニンジャ「スカベンジャー」に遭遇する。マサムネの記憶が戻り、彼が元ヨロシサン社員であることが明らかになる大混乱の中、ニンジャスレイヤーが登場しアイサツした!)

2012-04-06 21:55:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです……」鋼鉄メンポのスリットからジゴクめいた息が吐き出される「ニンジャ……殺すべし」。これに対し、ビルの廃墟を見上げながら、2人の敵ニンジャも即座にアイサツを返した「ドーモ、セントールです」「ドーモ、ザイバツ・シャドーギルドのスカベンジャーです」 1

2012-04-06 22:00:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オジギ終了からわずかに0コンマ3秒!ニンジャスレイヤーは爆発的な速度で両手を鞭のようにしならせ、眼下の敵ニンジャに対し6枚のスリケンを投擲した。タツジン!「イヤーッ!」スカベンジャーは連続側転でこれを回避!「ニィイイイイーッ!」セントールも危険な大角でこれを弾く! 2

2012-04-06 22:06:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」敵が回避行動によって分断されたところへ、殺戮者の鋭いトビゲリ!「ニィイイイイーッ!」鹿胴体に命中!ガレキの中に倒れるセントール!ニンジャスレイヤーは間髪いれずに横マウントポジションを奪い、左右のパウンドだ!「イヤーッ!」「ニィーッ!」「イヤーッ!」「ニィーッ!」 3

2012-04-06 22:13:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがセントールは、その危険な大角で相手を振り払おうとする。「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの両腕のうち、ブレーサーに守られていない部分が一瞬にして引き裂かれ、血に染まった!何たる殺傷力!まさに究極のバイオ騎兵である!さらにセントールは強靭な四肢を使い、マウントを跳ねのけた! 4

2012-04-06 22:18:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((鹿とニンジャ……油断ならぬ恐るべき怪物!)))ニンジャスレイヤーは二連続バク転から廃墟の壁を蹴って三角跳びを決めた。そこへスカベンジャーのスリケン攻撃!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは飛来するスリケンを人差し指と中指で挟み、最低限の動作で後方へ受け流す! 5

2012-04-06 22:27:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー=サン、貴様の相手は俺だ。ブッダにも等しい力を手に入れたこの俺を、倒せるものなら倒してみるがいい…!」スカベンジャーは、突き出した右腕の人差し指と中指を曲げて挑発を行う。飛びかかるニンジャスレイヤー!たちまち激しいカラテの応酬!「イヤーッ!」「グワーッ!」 6

2012-04-06 22:32:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

純粋なカラテでは、ニンジャスレイヤーが上であった。スカベンジャーは何発も重いチョップを受けつつも、致命打を巧みに回避し、ニンジャスレイヤーを誘い寄せたのである。そのまま二人のニンジャは廃墟ビル街を飛び渡り、エマージェンシー扉を破壊して、あっという間に戦闘実験室から姿を消した。 7

2012-04-06 22:39:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニィイイイイイーッ!」マウント攻撃で受けた脳震盪から回復したセントールは、後ろ足で激しく地面を蹴り、この戦闘に加わろうとしていた。だが、モニタ室からヨシダ先生の声が響き、これを制止させたのだ。「マサムネ=サン!戦闘はザイバツに任せればいい!貴重な被検体と共に退避したまえ!」 8

2012-04-06 22:45:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「止まれ!セントール!」マサムネの冷たい声が浴びせられると、怪物じみたニンジャは不服そうに蹄を打ち鳴らした後、向き直ってマサムネの後に続いた。「マ、マサムネ=サン……助け……」声を震わせるヨシチュニ。「先に歩け!」マサムネは彼の背中に銃口を突きつけたまま、廃墟の一つを指差す。 9

2012-04-06 22:53:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そのアルバイターは殺さないのか?」スピーカー越しにヨシダ先生の声が降ってくる。威圧的な残響とともに。「…彼には適性があります!第2のセントールを作るために必要なのです!」マサムネが天に向かって叫んだ。「アイエエエエエ!嫌だ!」混乱し耳を塞ぎ、その場に立ち尽くすヨシチュニ! 10

2012-04-06 23:00:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ごりっ、と重い鉄の塊が右のこめかみに押し付けられた。ヨシチュニは嗚咽を洩らし、凍りついた。マサムネが構えるオートマチック拳銃だ。ヨシチュニは堰を切ったように泣いた。恐怖だけではない。マサムネと力を合わせれば、このジゴクから脱出できると思っていたのに、裏切られた無念さだった。 11

2012-04-06 23:04:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……全てを疑え……」ヨシチュニに銃口を押し当てたまま、マサムネは耳元で小さく囁いた。「……エッ?」ヨシチュニが問い返そうとした途端、マサムネは彼の背中へと乱暴なケリ・キックを入れる。「……アイエエエエエ!」ガレキの山を転がるヨシチュニ!「歩け!」マサムネの無慈悲な命令! 12

2012-04-06 23:08:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

夜霧にけぶるキョート山脈の裾野。見事な松や楓が自生する神秘的な山林へと、ニンジャスレイヤーは迷い込んでいた。ヨロシサン製薬の実験施設はアッパーガイオン地表部まで続いている……ガンドーから提供されたデータの通りだ。土壌は湿った紅葉に覆われ、松の根元にはマツタケが顔を覗かせる。 14

2012-04-06 23:21:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジュー・ジツを構えたフジキドは、全方位に警戒を怠らぬままゆっくりと霧の中を歩く。落葉と湿った土が僅かに沈む。彼がセントールよりもこちらを優先したのは、挑発に乗ったからではない。バイオニンジャは所詮ヨロシサンの駒であり、ザイバツの情報を有さない……ゆえに後で殺せばよいからだ。 15

2012-04-06 23:30:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それにしても、この悪臭は何とかならぬものか。これでは、鋭敏すぎるニンジャ嗅覚が逆に仇となる。フジキドは軽い吐気を催した。マツタケは高級食材であり、自生の大物ともなれば、ツキジに眠る旧世紀の未汚染冷凍マグロ並の価格を誇るが、いかんせん臭い。腐った死体の臭いを放つキノコなのだ。 16

2012-04-06 23:38:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それでも日本人はマツタケの香りを好み、カンポと呼ばれるオリエンタル的薬効成分を珍重する。松の木の下に死体を埋めると、そのマツタケは美味くなるという伝説も古事記にある。これは古来より、日本ではキノコが神々やそれに連なる人間の霊的な食べ物とみなされてきた事に関連するのだろう。 17

2012-04-06 23:47:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」突如、ニンジャスレイヤーの背後の落葉の山がつむじ風めいて巻き上がり、土中からスカベンジャーが間欠泉めいて飛び出した!ドトン・ジツ!出現と同時にスリケンを投擲!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはこれを受け流し、カラテに持ち込む!「イヤーッ!」「イヤーッ!」 18

2012-04-06 23:58:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カラテを打ち交わしながら、フジキドは微かな違和感を覚えた。敵のカラテ段位が上がっているように思える。しかも、先程両腕の骨を破壊した筈なのに、そのダメージが微塵も感じられない。……ナムアミダブツ!フジキドはまだ、逆にフーリンカザンの中へと誘い出されたことに気付いていないのだ! 19

2012-04-07 00:07:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」渾身の力を乗せたニンジャスレイヤーのカラテ!肋骨粉砕!「グワーッ!」弾き飛ばされるスカベンジャー!だが彼は松の枝を掴んで大回転を決め、そのまま地面へと魚雷めいて勢いよく飛び降り、ドトン・ジツを使う!ニンジャスレイヤーが近寄ると、すでにその気配は消えていたのだ! 20

2012-04-07 00:15:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((またしても……!)))ニンジャスレイヤーは落葉を蹴散らしながら、メンポの奥で舌打した。先程から何度も、止めを刺す直前でドトン・ジツを使われている。そのたびに敵は姿を消し、傷を回復した状態で再び現れるのだ。一方、少しずつではあるがフジキドの側にはダメージが蓄積している。 21

2012-04-07 00:21:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は再び四方にジュー・ジツを構えた。キョート山脈の山肌には「精神的」の文字がライトアップされ、彼方でウシミツ・アワーを告げる陰鬱な鐘の音。だが、ナラク・ニンジャは目覚めない。ナラクが健在ならば敵に憑依したニンジャソウルの正体を看破し、フジキドの愚かさを一喝したであろう……。 22

2012-04-07 00:27:28