- toshihiro36
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<ナレーション> 日雇い運転手の実態はどういうものなのか。毎週、日雇いでツアーを請け負っている男性に話を聞くことができました。この男性は月曜から金曜までは、フルタイムで送迎バスの運転手をしています。平日は昼12時から夜10時まで毎日仕事。
2012-05-07 21:36:22<ナレーション> 金曜の仕事が終わるとすぐに、夜行バスの日雇いの運転手として大阪から東京へ向かいます。東京に着くのは土曜の朝。仮眠をとったあと、その日の夜には東京を出発。日曜の朝、再び大阪に戻る過酷なスケジュールです。
2012-05-07 21:42:48日雇い運転手:(バス会社は)ただ来てくれて、その仕事をこなしてくれると、それでOK。本職は何をしてようが、全然関知してないですね。体調が悪かったときとか、実際僕も居眠り運転はしてるんですよ。「もうどんなことがあっても夜行バスには乗るな」と身内にはよく言ってましたね。
2012-05-07 21:48:46<ナレーション> 今回の事故の背景には、ツアーバスの仕事が丸投げされていく業界の仕組みにも問題があったことがわかってきました。その仕組みです。ツアーを企画したのは大阪の旅行会社。その旅行会社と陸援隊の間には、仲介業者Aとバス会社Bが介在していました。
2012-05-07 21:53:57<ナレーション> 旅行会社は17万円でバスの手配を依頼。AとBがそれぞれ1万円の手数料を取り、陸援隊に渡ったのは15万円。安全にかけるコストがさらに削られていました。私たちは仲介業者Aに電話で取材しました。A社は陸援隊に仕事がまわったことも出発直前まで知りませんでした。
2012-05-07 21:59:53Aの社長:それはわからないもん。俺も3日も4日も前にわかってたら、そのバス会社大丈夫なのぐらいは聞くけど。私もB社のバスが走るものだと思ってるから…ところが陸援隊に仕事が流れちゃったんでしょ。だから、それは分からないの…俺は。
2012-05-07 22:08:15<ナレーション> 年間の利用者が600万人にも上る高速ツアーバス。熾烈な競争の中で、安全管理が疎かになっている現状が浮かび上がりました。しかし事故の後も、乗り場は大勢の利用客で込み合っています。
2012-05-07 22:13:38スタジオに戻ります
国谷:今夜は運輸産業の安全問題や事故調査のあり方についての研究を続けていらっしゃいます、関西大学教授・安部誠治さんにお越しいただきました。こうして高速バスの実態を見ますと、事故は起こるべくして起きた…もっと起きてもおかしくないという状況ではありませんか?
2012-05-07 22:18:24安部:5年前に大阪の吹田でスキーのツアーバスが同じような大きな事故を起こしたんですね。その時に私はかなり実態を調べたんですが…今のVTRを拝見してますと、当時よりももっと状況が悪くなっているという感じがします。ひとつは日雇いのドライバーがかなり目立っていると。
2012-05-07 22:22:39安部:5年前は(日雇いが)あったんですけれども、それほど目立ってなかったんですね。この夜間のツアーバスというのは夜間運転をするわけですから、労働時間の管理…過労運転を防止するというのが大事なんですね。
2012-05-07 22:26:01安部:そのためには月単位でドライバーがどういう労働状態にあるかを見てやる必要があるんですが、日雇いだと月単位で見れないわけですよね。そうすると疲労の蓄積を見ることができませんので、安全管理が非常にゆゆしき事態になるということですよね。
2012-05-07 22:30:30安部:それから飲酒運転の防止も非常に大事なんですけれども、これも普通のバス会社ですと出発前に運行管理をしっかりやって飲酒運転のチェックもするんですけれども。こういう形で日雇いですとその管理もどこまでできるのかという問題があると思います。
2012-05-07 22:38:59安部:今回の場合は途中で2つの会社が間に入っているわけですよね。これも今回見てびっくりしまして、昔はこれほど中抜きはなかったんです。これ(中抜き)をやってしまうと実運送を行うバス会社の収入がどんどん少なくなりますから、どうしても経営が苦しくなると。
2012-05-07 22:45:29安部:それでどこを削るのかということになるんですよね。ひとつが日雇いのような不安定なドライバーを呼びこんでしまうこと。もうひとつがバスの車両の更新という問題もあって、適正に古くなったバスは換えなきゃいけないんですがそれもままならない。一時は古いバスで火災事故も起こっていた。
2012-05-07 22:51:23国谷:しかし利用者は急拡大して…その原動力になったのは価格が安いということなんですけれども。本来なら適正価格というのはいくらぐらいなんですか?
2012-05-07 22:56:04安部:なかなかこれは難しいんですね。少なくとも言えることは、規制緩和前は大阪・東京間で夜間の高速バスの場合は8500円ぐらいの価格だったんです。これが今は半値以下の3000円とか3500円になってるわけですから。
2012-05-07 23:01:35安部:例えば十数年前と比べると燃料代は上がっているわけですから、それで半値になるということは…やはりどこかに無理がいっているということだと思います。ですから今の3500円とかいう値段は、あまりにも安全のコストを見込んでいないという運賃だと思います。
2012-05-07 23:06:33国谷:でも、それがずっと放置されてきたということになりますね。はい。 激しい価格競争の中で安全が置き去りにされている実態をご覧いただきました。現在夜行バスはかなりの距離を1人のドライバーが運転しても違法ではありません。国の安全基準がどうあるべきなのか、いま問われています。
2012-05-07 23:11:29VTRが流れます
<ナレーション> 7台のバスを所有する大阪のバス会社です。ギリギリの採算ラインの中で、長距離の夜行バスは運転手2人の体制をとっています。週2回東京・大阪間を往復している楠木明弘さんです。この夜の運行に同乗させてもらうことにしました。
2012-05-08 05:51:08