ザ・マン・フー・カムズ・トゥ・スラム・ザ・リジグネイション #6
……眼下に広がるのはひび割れた荒野だった。イクサだろうか?戦闘機や戦車とおぼしき残骸が散在し、ところどころクレーターめいた着弾の痕が禍々しく残る。ニンジャスレイヤーは身構えた。地表が近づくにつれ、肉体の感覚が戻る。落下予測地点には破壊された戦車が数台。そして……ニンジャ? 9
2012-06-01 11:33:00物理的に非現実的な滑らかさでニンジャスレイヤーは地表に着地した。まず彼は反射的に自分が落ちて来た空を見上げた。雲一つ無い水色の空だ。だが、太陽のかわりに遠くに浮かんでいるのは、自転する黄金の立方体である。彼はそれから、破壊された戦車の上、ガトリング砲を剥がすニンジャを見た。 10
2012-06-01 11:38:31ニンジャはピンク色を基調とした金属めいた質感の装束に身を包んでいた。流線型の官能的なメンポが顔全体を多い、その奥の表情を窺う事はできない。二者は数秒間睨み合った。ニンジャはフジキド同様、困惑しているようだった。片手にはガトリング砲。片手には軍用レーションを持っている。 11
2012-06-01 11:44:46異様なニンジャは片手に持っていた軍用レーションを投げ捨てた。だがガトリング砲は離さない。ニンジャスレイヤーは先手を打ち、オジギした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」 12
2012-06-01 11:47:51異様なニンジャはオジギを返した。「ドーモ。ザ・ヴァーティゴで010001」言葉の端はノイズに覆われ、意味が掻き消える。そのニンジャ自身も困惑を深めたようだった。ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構え、警戒した。「ここはどこだ?」 13
2012-06-01 12:01:24「010010101」異様なニンジャは片手でガトリング砲を持ったまま、身振りを交えて説明しようと試みた。だが不可解で意味の通らぬ音声が発せられるばかりだ。「0100101」「……」ニンジャスレイヤーはひとまず、即座の敵意がこの者に無い事を確認した。 14
2012-06-01 12:07:54成り行きなんだよ、おれはあちこちをこう、飛ばされちまうんだよね。ここは頭のおかしい博士が支配していた戦争世界で、レジスタンスが……言葉が通じないんじゃ、しょうがねえよ。
2012-06-01 12:09:41彼は周囲を見渡した。戦場である。兵士の無残な死骸があちこちに横たわる酸鼻な光景だ。既に戦いは終わったのだろうか。そして、このニンジャは?ここはキョートではあるまい。セキバハラ荒野?まさか。「0100101」異様なニンジャは戦車から飛び降り、近づいて来た。「01001」 15
2012-06-01 12:13:26とにかくあンた、ここでそのままこうしてるってわけにはいかんだろう?でも、俺にもどうしたらいいか、なんでこんなさァ……スパムアカウントにタグは捕捉されるし……
2012-06-01 12:16:14二者の間におかしな沈黙が流れる。それを見下ろす黄金の立方体はただ静かに、超然と、自転するばかりだ。……と、その時である。音叉めいた金属音が鳴った。ニンジャスレイヤーの懐からだ。彼は相手を警戒しながら、金属音の源を取り出す。……鍵。 16
2012-06-01 12:20:30「01001!」鍵を取り出すや、音叉めいたハーモニクス音は鼓膜を破るほどの大きさとなった。ニンジャスレイヤーは呻いた。「これは……」異様なニンジャはその数倍は苦しんでいる……心臓の鼓動めいて、そのピンクがかった金属色の装束に銀色の表面色が走る! 17
2012-06-01 12:25:24変色の周期と鍵が発する音叉めいたハーモニクスの強弱はシンクロしている……やがて異様なニンジャが震えながら身を屈めると、陽炎のように別の輪郭がはみ出した。「ニンジャスレイヤー=サン。俺だ」ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。「シルバーキー=サンか?」「ああ俺だクソッ……もう少し」18
2012-06-01 12:31:45シルバーキーと思しき超常存在は、おぼつかない銀色の輪郭をニンジャスレイヤーの持つ鍵へ伸ばそうとする。ニンジャスレイヤーは反射的にそれを差し出す、「ニンジャスレイヤー=サン……鍵は俺のニューロン情報……圧縮……外に逃がした……だから捨てるなよ……そして頼む、クソッ、今はまだ」 19
2012-06-01 12:40:08その指先が鍵に触れようとしたその時、銀色の輪郭は0と1の飛沫に砕け、零れる。異様なニンジャは苦しみながら片手を掲げた。拡散しかかった0と1がニンジャの中に再び吸い込まれてゆく。ニンジャスレイヤーのニューロンに声が響く!「俺を呼び出す方法を探せ。頼む……必ずある!方法がある!」20
2012-06-01 12:46:55