「キョート・ヘル・オン・アース」序「エンタングルメント」#2
「オイ……応答しろ……どうなってる……平気か……」遠くでガンドーの声が反響している。ナンシーはマングローブの幹にもたれかかった。数百羽のフラミンゴはみな一様に片足を上げた姿勢で停止し、微動だにしない。ナンシーは荒い息を吐き、上空を旋回するエイ01見010る00010101 (47
2012-07-13 23:09:44010真0っ01白な視1が徐々に晴れ、彼女は薄暗いUNIXモニタの照り返しを受ける自分の身体感覚を取り戻す。ヨロシサン・トンネル。電子バン。「DAMN SHIT!」ナンシーは左耳から流れ出した血を腕で拭った。「ええ、ええ、そりゃ、ベイビーサブミッションてわけにはいかないわよ」48
2012-07-13 23:15:19「どうした」ディプロマットが車内に身を乗り出し、声をかけた。ナンシーはつとめて微笑した。「死んだわ」「大丈夫か」「冗談よ。でも、このままじゃ捕捉される。もう一回死んで来るわ」彼女はすぐさまタイピングを再開する……。 49
2012-07-13 23:21:12重苦しい音と砂埃を立てて巨大門が開き、二者を迎え入れた。中庭エリア。以前にスパイ潜入を試みたガンドーも、ここから先の様相は全くの未知だ。地面には渦巻き模様を無数に描く美しい白砂がどこまでも敷き詰められ、球状に剪定された巨大なバイオパインが迷路めいて視界を遮っている。51
2012-07-13 23:32:47バイオパインの向こう、東の空を突き刺すように、禍々しいホンマルの威容。二者は途方も無い圧力を感じた。錯覚であろうか?ニンジャスレイヤーは片膝をついてニンジャ聴覚を研ぎすませ、護衛ニンジャの存在を推し量ろうとする。「オイ」ガンドーはそれをやめさせた。「無意味だ。何故というに」52
2012-07-13 23:35:38ズシン!「何故というにだな」ズシン!「……何故というに、何だ?」ニンジャスレイヤーは言った。「念のため訊いておく」「ま、答えは後だな」二者は背中合わせに立ち、各々のカラテを構えた。ズシン!彼らは左右から迫り来る敵を見据えた。6メートル、青銅製の巨人……戦闘的ブッダ像! 53
2012-07-13 23:43:34ニンジャスレイヤーが対する像は口を開いており、ガンドーの対する像は口を閉じている。どちらも怒りに満ちた目を彼らに向け、カラテは見慣れぬ構えだ。青銅巨人の鎖骨の上には円い穴が穿たれ、その中で、いかなるジツの作用であろう、暗紫色の火が燃えていた。「「……」」巨人は無言だ! 54
2012-07-13 23:52:40「ドーモ。はじめましてニンジャスレイヤー=サン」声は上から飛んで来た。二者はそちらを見やった。ガンドーは目を見開き、ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。彼らの頭上の空中に、いつの間に現れたか、アグラ姿勢のニンジャが反重力めいて浮かんでいるではないか……! 55
2012-07-13 23:59:10暗青紫色の装束を着たニンジャの両目はブッダ像の火と同色に光り輝き、上向けた掌の上にも、やはり同色の炎が燃えている。ただものではない。アイサツの時点でカラテの格が伝わる程のニンジャだ。「よくもこの神聖な白砂を踏み荒らしに参ったことよ。下郎。そしてその太鼓持ちめいたヨタモノめが」56
2012-07-14 00:07:29「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」「ディテクティヴです」二者はアイサツを返す。敵ニンジャの周囲に、どこからか飛来してきた複数の武具が、ぴったりと寄り添うように浮かんだ。カタナ、サイ、斧、ジュッテ、メイス、丸盾!「ザイバツ・シャドーギルド……グランドマスター……ケイビインです」57
2012-07-14 00:14:22(第二部「キョート殺伐都市」より:「キョート・ヘル・オン・アース」序「エンタングルメント」#2 終わり。#3に続く)58
2012-07-14 00:17:25