「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#1
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ NINJ@SLAYER ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2012-07-29 15:09:27◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ KYOTO : HELL ON E@RTH ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 2 RISING TIDE ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2012-07-29 15:11:59◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ Z J @ D T SN ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ N K | D J B S ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ G M | P Y ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2012-07-29 15:12:47ガイオン・シティは奥ゆかしい夜の帳に包まれていた。電子基板のように規則的な道路や水路。黒漆塗りの低階層ビル群に、洗練されたネオン文字やプラズマカンバンの灯りが燈る。無数の五重塔がコンデンサめいた等間隔で並び、最上階に備わった大型アンプからサイバーな雅楽音声を鳴り響かせていた。 1
2012-07-29 15:18:51「すごいもんだねえ!」「そうだねえ」ネオサイタマから観光に来た老夫婦は、リキシャーシートに座り、キョート山脈から望む夜景に感服していた。参道に立てられたボンボリの灯りすらも幻想的に見える。「なんだってキョートは、こんな作りにしたんだい!」老婆はリキシャー・ドライバーに訊ねた。 2
2012-07-29 15:26:03「何千年も前、平安時代に作られた規則的な街並みです。そのパターンのまま、ガイオンは拡張されてきました」ヤマト社の新人リキシャー・ドライバーであるアナカ・マコトは、ガイドを志す者としての基礎的な歴史知識で老婆の問いに答える「何かとてもシステマティックな文明が存在したんでしょう」 3
2012-07-29 15:31:18「すごいねえ」老婆は頷き、夫とともに目を細めて夜景を眺めた。アナカは一瞬、不意に胸騒ぎを覚えた。ごく当たり前だと思っていた事が、ぐにゃぐにゃと曲がって揺らぐような感覚。吹き出す冷汗をテヌギー・タオルで拭いつつ、見慣れたはずの夜景を睨みつける。そこにはいつものガイオンがあった。 4
2012-07-29 15:40:35儀式控え室前。ガンドーは両手に49マグナムを構え、静かに呼吸を整えていた。ショウジ戸を隔てた向こうには、ユカノとパラゴン。……幸い、二人の位置は離れている。ニンジャソウルで解る。ブッダラッキーだ。ユカノ=サンを巻き添えにする心配が無い。ガンドーは右上に浮遊するチイサイを見た。 6
2012-07-29 16:01:02モーターチイサイはLAN触手を壁穴に直結し、防弾ショウジ戸のロック解除コードを入力している。通信が途絶える前にナンシーから送られたものだ。ここから先はガンドーが独力でカタをつける。計画では既にナンシーがセキュリティを完全掌握し、援護してくれる筈だったが……計画は常に流動的だ。 7
2012-07-29 16:06:23ガンドーは心の中で秒読みした。1……2……3! モーターチイサイがロックを解除し、鶴の透かしが入った電動ショウジ戸が左右に勢いよく開く!スターン!ショウジ戸が雅な音を鳴らすと同時に、ガンドーは49マグナム二挺拳銃を前方に突き出しながら、正座するパラゴンめがけ突撃する! 8
2012-07-29 16:13:08「イヤーッ!」ガンドーがシャウトを発する。BLAM!右の49マグナム!BLAM!左の49マグナム!壁際に拘束されていたユカノは驚きに目を見開き、そのアンブッシュを見やる。彼女の目には、部屋の中の出来事がスローモーション再生され、ガンドーが水の中を走っているかのように見えた。 9
2012-07-29 16:19:4249口径の銃弾は、巨大なゼリーの中をえぐるようにゆっくりと、パラゴン目掛け飛んでゆく。「イヤーッ!」ガンドーが3歩目を踏み出しながら、さらにシャウトを発する。BLAM!右の49マグナム!BLAM!左の49マグナム!オーバーキル級の銃弾が、チャを啜る小柄なニンジャに迫った。 10
2012-07-29 16:25:10パラゴンは敵の方向に目を向けると、正しいプロトコルで茶碗をタタミの上に置く。そして右足、左足と順に礼儀正しく腰を上げる。この動きもまた、ユカノにはスローモーションに見える。だがパラゴンの身のこなしは、荒削りなガンドーの動作と比べて、明らかに洗練された無駄の無いものであった。 11
2012-07-29 16:30:20ガンドー自身の視界もまた、ZBRブーストによってスローモーションの中にあった。立ち上がったパラゴンはジュー・ジツを構え、最低限のダッキングで最初の2発の銃弾をかいくぐる。ナムアミダブツ!弾道を完全に見切るニンジャ動体視力だ。(((オイオイオイ、何だコイツは、話が違うぜ))) 12
2012-07-29 16:34:55ガンドーはアンブッシュ失敗に気付く。だがすでに脳は、突撃プロトコルを全身に発動した後だ。前面に二門のキャノン砲を生やした武装新幹線めいて突き進むガンドーの巨体は、ひとたび動き出すと、そう簡単には止められない。敵は3発目4発目の弾丸をスウェー回避しながら、懐に潜り込んできた。 13
2012-07-29 16:40:45ガンドーの精神は敵の動きに気付きながらも、カラテがそれに追いつかない。BLAMBLAM!左右の49マグナムは先程まで敵の座っていた場所を狙って火を噴くブザマ。(((ああ、ちくしょうめ。ナンシー=サン、これが補助輪って奴かよ)))敵はガンドーの眼前で腰を沈め、そして跳躍した。 14
2012-07-29 16:49:54あれは伝説のカラテ技、サマーソルトキック!「イヤーッ!」「グワーッ!」パラゴンの放った一撃はガンドーの岩のような顎をしたたかに蹴り上げ、彼の巨体を仰け反り姿勢で弾き飛ばした。猛烈な脳震盪がガンドーを襲う。ディテクト能力を重点すべくZBRを増やしたのが、裏目に出てしまった。 15
2012-07-29 16:56:14白目を剥くガンドー。アブナイ!このままでは、威風堂々たるショウグン・オーヴァーロードの墨絵が描かれた天井に頭から突っ込み、虚無僧めいた姿勢で死を迎えることになるだろう!だがガンドーは直前で意識を取り戻して身を捻り、片膝立ちで床に着地した。忠誠を誓う騎士めいた屈辱的な姿勢で。 16
2012-07-29 17:11:20敵はアンブッシュ失敗を嘲笑うかのように、ジュー・ジツを構えてガンドーのアイサツを待ち受ける。「ドーモ、パラゴン=サン、ディテクティヴです」「ドーモ、パラゴンです。今の技はサマーソルト・キック。マケド・ズンイチが平安時代に編み出し、当初はマケドズ・デッドリーアーチと呼ばれた」 17
2012-07-29 17:19:53