「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
2
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キエーッ!」ドラゴン!「グワーッ!?」突如、ジェットロケットめいたトビゲリ・アンブッシュが空気を裂いて飛び、パラゴンに側面から命中した!ゴウランガ!それはドラゴン・ユカノ!パラゴンはワイヤーアクションめいて吹っ飛び、壁に叩きつけられる!「グワーッ!」 41

2012-07-30 22:00:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノは拘束されていたはずでは?「重点!」モーターチイサイである。ユカノの声に反応したモーターチイサイが、LAN触手で拘束機械の端子に直結を行い、彼女を拘束から解き放っていた。ガンドーの推理と身を挺した戦闘がパラゴンの注意を引き続け、モーターチイサイの活躍を許したのだ。 42

2012-07-30 22:03:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「敬意を払うにも限度があるぞ」壁に叩きつけられたパラゴンは、激突の衝撃から回復し、ジュー・ジツを構えた。アンブッシュは彼に冷静さを取り戻させてしまったようだ。「こちらも限界です」ユカノもジュー・ジツを構え迎撃態勢を取る「ザイバツ・シャドーギルド。虚構の砂の上に築かれた城」 43

2012-07-30 22:09:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダメだ、ユカノ=サン、ここは逃げてくれ!増援が来たら袋の鼠だ!」ガンドーが仰向けのまま叫んだ。「しかし」ユカノが短く言い、ガンドーとパラゴンを交互に見る。「その男は死ぬぞ」パラゴンが言う。「俺は大丈夫だ、後から行く!」ガンドーが叫ぶ。ユカノは頷き、ショウジ戸の方向へ走る。 44

2012-07-30 22:17:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハッハー!それでいい!外でニンジャスレイヤー=サンと合流しろ!そうすりゃ何とかなる!」ガンドーは仰向けのまま叫んだ。パラゴンは小さく舌打ちしてから、ガンドーとモーターチイサイに対してありったけのスリケンを投擲しつつ、身を翻してユカノ追跡に向かう。「イヤーッ!イヤーッ!」 45

2012-07-30 22:22:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パラゴンの放ったスリケンは、ヤバレカバレな悪足掻きなどではなかった。目、喉、眉間、股間など、ガンドーの急所を確実に狙って十二枚ものスリケンを投擲していったのだ。「ピガーッ!」そのうちの一枚がモーターチイサイに突き刺さり、小型ドロイドはバチバチと火花を散らして墜落した。 46

2012-07-30 22:28:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いけるかな……」BLAM!49マグナムで畳を撃ち、辛うじて体を横に転がして、背中で全てのスリケンを受ける構えを取った。首筋は腕で守る。「グワーッ!」ガンドーの腕から背中、臀部にかけて、スリケンが深々と突き刺さる。探偵時代にドジを踏み、滅茶苦茶な暴行を受けた夜を思い出した。 47

2012-07-30 22:36:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三十秒後。死んだように横たわっていたガンドーは、戦闘ダメージから辛くも回復し、呻き声と共にゆっくり身をもたげた。儀式控え室にはもう、彼とモーターチイサイしか残されてはいない。ZBRがまだ回っているおかげで、背中に生えたカイジュウめいた棘の痛みはさほど感じないが、満身創痍だ。 48

2012-07-30 22:48:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイオイ……死にたかねえぞ……」ガンドーは片脚を引きずりながら歩き、全身に受けたダメージを値踏みした。良くない。歩くたび、背中から血がタタミに垂れる。網膜ディスプレイが破損し、視界は事故車のフロントガラスめいてヒビが入ってる。「とっととずらからねえと……アブハチトラズだ」 49

2012-07-30 22:59:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーは防弾ショウジ戸へ歩き、途中で少し道を外れて、瀕死のモーターチイサイを掴みあげ懐に押し込んだ。「……まだやれるかもな」自分に言い聞かせるように言うと、敵と遭遇しないまましばらく回廊を進む。ガソリンが漏れているような感覚。歯を食いしばり、スリケンを何枚か抜いて捨てる。 50

2012-07-30 23:12:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

IRC端末は未だ沈黙中。これはナンシーがハッキングを撃退され、敵に城内ネットワークの制御権を無線有線問わずほぼ奪い返されているという意味だ。この状態では、ニンジャスレイヤーとの通信もできない。「ZBR……ZBRどこだ…」痛みと恐怖がじわじわと体を蝕んできたことに彼は気付く。 51

2012-07-30 23:19:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、ZBRアンプルは割れていた。血の気が引き始めた。車輪の壊れたディーゼル機関車めいた足取りで、長い廊下を歩く。辛うじてスリケンは全て抜き取り、出血はおさまっているが、眩暈がする。城内は騒然としている。ニンジャたちが動き回っているのが解る。ユカノを捕えようとしているのが。 52

2012-07-30 23:27:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーは嫌な視線を直感的にディテクトし、振り返る。数十メートル背後で、3人のアデプトがこちらを指差し……明らかな敵意を持って駆け込んできた。「オイオイオイ……勘弁してくれよ、死にたくねえぜ……」ガンドーは毎回片脚を泥沼から引き抜くような動きで、不恰好に駆けて角を曲がった。 53

2012-07-30 23:40:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

迷宮めいた長い廊下がガンドーの前に姿を現す。直線的に走れば確実に追いつかれる。左右には無数のフスマやショウジ戸があるが、どれが安全かはナンシーとの通信が途絶えた今、皆目検討がつかない。ガンドーはヤバレカバレで走り、直感で無人茶室のフスマを開け、転がり込み、フスマを閉じた。 54

2012-07-30 23:47:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーは暗い茶室内にある大きな衣装箪笥と、大きなチャブを見た。それからあまりのカトゥーンめいた行動に馬鹿馬鹿しさを感じつつも、衣装箪笥の中に逃げ込んだ。覚悟を決めて、眼を閉じた。ZBR切れの恐怖がじわじわと彼を襲い、思考が曇ってきた。疲労がピークに達し、意識が遠のいた。 55

2012-07-30 23:53:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クセモノダー!」「クセモノダー!」「クセモノダー!」アデプトたちは、フスマやショウジ戸を片端から開け放ち、手負いの侵入者を探す。いない。いない。ここにもいない。ガンドーが隠れた無人茶室のフスマが開かれる。いない。「待て」「何だ?」「衣装箪笥……隠れようと思えば隠れられる」 56

2012-07-31 00:00:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まるでカトゥーンだな!」格上と思しきアデプトが、相手を嘲るように言った。「馬鹿馬鹿しい、時間の無駄だ」もう一人のアデプトも同調した。「だが……」発案者が言いかけたところで、城内に奴隷マイコ音声の緊急放送が流された。「緊急事態ドスエ……ドラゴン・ユカノ=サンが脱走中……」 57

2012-07-31 00:08:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「聞いたか、ワンハンドレッド・トリイの渡り廊下だ」「ああ、行くぞ。……どうした?」二人のアデプトたちは頷き、ユカノ追跡に向かおうとする。もう一人のアデプトが頭を振る。「……もう少し探索していく」「勝手にしろ」2人のアデプトは長廊下を走り去った。 58

2012-07-31 00:17:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さてと……」残されたアデプト、エクスターミネイターは、背中のニンジャソードをくるくると回して構えながら、箪笥に向かって摺り足でゆっくりと歩いた。ニンジャ聴覚を研ぎ澄ます。寝息のような音が聞こえる。こいつはビンゴか?壁に掛けられた「不如帰」のショドーが不吉な運命を暗示する。 59

2012-07-31 00:27:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エクスターミネイターは箪笥の取っ手に手を掛け、開く。暗がりに何者かの気配!ニンジャソードを突き刺そうとした瞬間!BBLAM!ユカタ・ウェアの間から49マグナムを握った腕がぬっと突き出し、火を噴いた。「グワーッ!」右肩周辺を吹き飛ばされるエクスターミネイター! 60

2012-07-31 00:32:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

衝撃で後ずさりながら、エクスターミネイターは血みどろのニンジャの隻眼を見た。脳内UNIXが誤作動しているのか、ひび割れた網膜ディスプレイに、「REBOOT」の大文字が逆写しになって光っていた。BLAM!エクスターミネイターの頭が消し飛ぶ!「サヨナ」爆発四散! 61

2012-07-31 00:39:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ!ハァーッ!」ガンドーは肩で大きく息をしながら、箪笥の中に座り込む。敵が突き刺そうとしていた場所には、飛行能力を失ったモーターチイサイがユカタに包まれ、わざとらしい寝息音を再生していた。「オイオイオイ……勘弁してくれよ……こんなにチカチカされちゃあ、眠れねえよ…」 62

2012-07-31 00:47:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーは鉛のように重い四肢を引きずって、立ち上がった。こめかみをバンバンと叩いて、網膜ディスプレイの異常表示を消す。ZBRがまた薄れ、痛みと不安が全身を蝕む。「……シキベに比べりゃあ、全然痛くねえぞ……」満身創痍のガンドーは、頭を抱えながら歩き始めた。電算機室へ向かって。 63

2012-07-31 00:58:35