「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#5
「ハイ、ハイ……物理的にも、また電子的にも……。前任者、あの呪われるべきトランスペアレントクィリンが、かつて何らかのムーホンを企てていたのだとしか……。ハイ、ハイ……そして残念ながら、城内に今、その計画を引き継いだ者がいるとしか……」ヴィジランスはまたアンコ・ラムを嗅いだ。 25
2012-08-06 01:29:56「少なくともグランドマスターの中にひとり、ヨロシサンと秘密コネクションを持つ者が……。ハッキング直後からの電子ログ分析の結果、その者の名は……」ヴィジランスは息を吸った。バックスタブ報告は、失敗すればセプクに繋がる。だが、セキュリティこそが彼の命なのだ。「……スローハンド」 26
2012-08-06 01:36:51居室をしばし沈黙が包む。「最後にもうひとつ……。ハッキング攻撃を凌ぎ、ネットワークを再掌握したことで明らかに……。ハイ、ハイ……ホウリュウ・テンプル地下座敷牢……アラクニッド=サンの生命反応モニタリングが、実際停止……ログ分析によると、これはスローハンド=サンではない……」 27
2012-08-06 01:43:28シャドウウィーヴは酷い吐気を堪えながら、上階への階段を登っていた。城内各所に設置されたモニタ群からは、儀式と下界の様子がまるで別世界の出来事のように中継されてくる。言いしれぬ不安感から、親指の爪を噛む動作が収まらない。マスターに何度も殴られ、克服する事に成功したはずなのに。 29
2012-08-06 01:50:33キョート城という巨大な生命体が、自分を取り込もうとしているかのような感覚。地上で起こっている美しさの欠片も無い殺戮。「マスター!道を!」レイジは叫んだ。答えは無い。俺は何かを間違ったか?全身にどっと汗が滲む。「夜よ!夜よ!」窓のフスマを開け、金色の光に包まれ始める空を見た。 30
2012-08-06 01:59:34彼の目からその黄金は、いかにも色の薄いメッキに見えた。シャドウウィーヴは激しい眩暈を覚えながら、なおも階段を登った。ニーズヘグとパープルタコがいる集中治療室へ向かって。モニタの向こうでは、パラゴンが壇上に進み出てまた演説を行っていた「……この目出度き日に、残念至極な報告を」 31
2012-08-06 02:04:29「死よ!死よ!何故人間たちが寝静まっている間に、全ての命を刈り取ってゆかなかったのか!ひとおもいに!」レイジがニンジャ覆面を脱ぎ、頭を掻き毟りながら叫ぶ。足が独りでに速まる。自らの世界が崩壊する。それを本能的に嗅ぎ取って。パラゴンの声が響く「……反逆の種が蒔かれていたのだ」 32
2012-08-06 02:08:50「…儀式の場にさえ出席せず、利己的な欲望を追い求めている!ロードの祝福の御光から目を逸らしている!この裏切者たちを如何にすべきか?」パラゴンが両手を広げ大広間のニンジャたちを煽った。「コロセー!」「コロセー!」「コロセー!」ニンジャたちが怒りに燃え、得物や拳を高々と掲げる! 33
2012-08-06 02:14:34「ARRRRRRRRRRRRRRRGH!」シャドウウィーヴは目を血走らせながら、集中治療室へと駆けた。家族、ヨモギ、師匠、パープルタコ、ダークニンジャの顔がソーマト・リコールする。(((人間性を捨てろ、脆弱さとともに歩めば、実際死ぬ……))))マスターの教えが脳内に響いた。 34
2012-08-06 02:20:48第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート:ヘル・オン・アース」 破「ライジング・タイド」 #5終わり #6へ続く
2012-08-06 02:21:33