ATOMTEX社製食品測定装置とホールボディカウンターの結果レポートの読み方
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ベラルーシの放射線計測機器メーカーATOMTEX社の食品用検査装置AT1320と椅子型ホールボディカウンターAT1316は基本機能に絞り込んだ低価格が売りで、震災後各地の市民測定所や自治体で多数導入されていますが、ここの製品は結果レポートの表示形式と誤差の取扱いが独特なので要注意
2012-09-11 14:02:12製造元から直輸入した場合はオリジナルの英語版データ解析ソフトに従って画面表示と結果レポートが出力されますが、日本国内の代理店(アドフューテックhttp://t.co/I6VI783b と日本サードパーティhttp://t.co/8Def6bDS )から購入した場合は(続く)
2012-09-11 14:10:32(続き)それぞれの代理店が独自に日本語化し、場合によっては機能を追加したデータ解析ソフトに従って結果レポートが出力されることになります。日本サードパーティは装置の販売よりはむしろこれを使った検査センターをフランチャイズ展開する方に熱心なので(続く)
2012-09-11 14:13:59(続き)日本で導入されている、あるいはこれから導入されるATOMTEX製品は大半がアドフューテック経由で、従ってアドフューテックが日本語化したデータ解析ソフトが入ったものだと考えて間違いないでしょう。
2012-09-11 14:17:10アドフューテックが販売するATOMTEX製の食品検査装置AT1320は消費者庁の貸出し検査機器の第7次配分用に50台が採用され、また福島県教委が市内の自校給食調理校に1台ずつ配分http://t.co/l6LHC94x するため30台を購入http://t.co/I6VI783b
2012-09-11 14:27:17さらに今年2月22日に日本赤十字は福島市に食品の持ち込み検査用としてATOMTEX AT1320を77台寄付http://t.co/BvsVUZS1 http://t.co/QKbEGKYI (パソコン外付けとCs134の解析機能は日本で独自仕様として追加後本社仕様にも組み入れ)
2012-09-11 14:39:36ちょっと見ただけでもこれほどの台数が導入され、しかも使うのはこれまで測定の経験がほとんどない人が大半であることが予想される以上、代理店は「結果レポートの読み方の手引き」を日本語で作って配布すべきレベルだと思うのですが、待っていても期待できそうにないので自分で作ることにしました。
2012-09-11 15:09:32食品検査装置ATOMTEX AT1320の結果レポートの読み方
(旧版結果レポートの解剖)
まず食品検査装置ATOMTEX AT1320の旧版の日本語データ解析ソフトによる結果レポートhttp://t.co/UWrNWIIo をご覧下さい(新版のデータ解析ソフトによる結果レポートをいきなり見るより、旧版を先に見てからのほうが意味がよく理解できます)
2012-09-11 15:16:53旧版の結果レポートでは核種ごとに「放射能濃度」として測定結果(Bq/kg)が記載され、その右側に「相対誤差(%)」「絶対誤差(Bq/kg)」「統計誤差(%)」と誤差の欄が3つあります。%表示はいずれも放射能濃度の値を100%として計算され(続く)
2012-09-11 15:30:30(続き)統計誤差が放射能濃度の100%を超えた場合(=測定結果が統計誤差を下回っている場合)は「>100%」と表示され、意味のない測定結果としてデータ処理が打ち切られます。例http://t.co/UWrNWIIo ではCs134とCs137がこれに該当
2012-09-11 15:38:47統計誤差が放射能濃度の100%を超えた場合(=測定結果が統計誤差を下回っている場合)、スペクトルを見てもまともなピークは見えていません。
2012-09-11 16:11:17なおATOMTEX社の放射線計測装置はピーク検出の判定基準として基本的に誤差の2倍(2σ)を採用(日本の食品検査の検出判定基準は誤差の3倍3σ)。ただし食品用測定装置ATOMTEX AT1320の場合、5月末に出た改訂版解析ソフトで検出判定基準として3σも選べるようになりました。
2012-09-11 16:15:27旧版の結果レポート例http://t.co/UWrNWIIo のK-40(天然放射性元素)の行を見ると「相対誤差(%)」と「統計誤差(%)」の欄の値が一致せず、「絶対誤差(Bq/kg)」=「放射能濃度(Bq/kg)」x「相対誤差(%)」/100であることがわかります。
2012-09-11 16:17:49「相対誤差(%)」と「統計誤差(%)」の差は一体何なんだ?ということになりますが、同じATOMTEX製のホールボディカウンターAT1316の結果レポートhttp://t.co/j4z9OHWh で食品測定装置の結果レポートの「相対誤差(%)」に対応する欄が(続く)
2012-09-11 16:29:44(続き)「Composite error」(これは統計誤差statistical errorと系統誤差systematic errorの合計)となっているところから系統誤差だと考えられます。
2012-09-11 16:33:06(ATOMTEX製のホールボディカウンターの結果レポートの場合も、日本サードパーティが本社の旧版データ解析ソフトを日本語化せずそのまま使っていたころのものhttp://t.co/N7zWI73o のほうがよくわかります)
2012-09-11 16:41:00統計誤差 statistical error:測定試料から出てくる放射線の強さが一定せず変動していることによる誤差。試料の量を増やす、または試料の測定を繰り返せば(あるいは測定時間を延長しても)小さくすることができます。
2012-09-11 16:44:51Sys=系統誤差 systematic error:装置の部品・配線の不具合の有無、遮蔽のよしあし、電源の安定性、測定室の温度湿度など測定装置とその設置環境に由来する誤差。こちらは試料の測定を繰り返しても小さくすることはできませんが、装置の故障や測定環境の変動のチェックには重要。
2012-09-11 16:46:06(系統誤差は試料をセットせずにバックラウンドを繰り返し、あるいは長時間測定した結果をもとに計算します。1回のバックグラウンド測定は、本番測定1回の4倍以上の時間をかけて行う必要がありますhttp://t.co/KDX5brso p.3下から2行目)
2012-09-11 16:52:27(@mw_mw_mw さん、いつもご教示有難うございます)
系統誤差は統計誤差を幾ら小さくしても真値からずれる誤差であり、真値が不明な限り測定することは出来ず「評価」する類の量です。 このケースでは、効率校正(様々な補正含む)が最大の要因で他に試料の均一性、面積の求積やBGの差し引き法等が考えられます。@parasite2006
2012-09-11 17:34:49食品検査装置ATOMTEX AT1320の旧版結果レポート例http://t.co/UWrNWIIo の最後の見どころは、I-131の行。測定時点(2012年3月3日)で原発事故由来の検出がまず考えられない物質ですが、放射濃度0.00 Bq/kg、絶対誤差±0.00 Bq/kg
2012-09-11 17:04:31ATOMTEX AT1320の旧版データ解析ソフトは生データからバックグラウンドを差し引いた正味値が負の値の場合に「放射濃度0.00 Bq/kg、絶対誤差±0.00 Bq/kg」と表示していたのですが、放射線計測では誤差ゼロはあり得ないことからユーザーの声でソフトが改訂されました
2012-09-11 17:08:35