【カオス理論】1.理論から得られる哲学的な結論についての混乱①
- Abraxas_Aeon
- 4528
- 0
- 0
- 0
断っておきたいが、私はカオス理論を使って天気予報を否定しようとしたわけではない。カオス理論を引き合いに出したからといって、たとえば、ある年から十年間の、ある場所での気温と降雨量の平均値と偏差を予測するといった将来の天候の〈統計的な予測〉までもが不可能なものだとは言いえない。
2010-01-23 15:21:07驚くべきは、地球の大気圏のような極めて複雑な系の予測が困難だということよりも、二つの振り子をつないだだけの系のように、少ない数の変数で記述され、単純な決定論的な方程式に従う系が、極めて込み入った挙動を見せ、非常に敏感な初期値への依存性を持ちうるということである。
2010-01-23 15:32:02ここから一足飛びに哲学的な結論を下すことは危険である。カオス理論は科学の限界を示したといわれることが多いが、自然界には非カオス的な系もたくさんある。カオス的な系を研究しているときでさえ、科学者は別に行き詰るわけではないし、そこから先立ち入り禁止だという壁にぶちあたるわけではない。
2010-01-23 15:46:27むしろカオス理論のおかげで、将来の研究のための広大な領域が拓かれ、数多くの新しい研究対象へと目が向けられているのである。科学の限界を示したというだけでは誤解されてしまうであろう。
2010-01-23 16:35:35人間が全てを予測し計算できるなどということは望み得ないことである。そのことから、たとえば、天気予報なら天気予報に関心を持つものが、興味を持って調べている天候の三週間後の予測ができないと知るのは面白くないと思われるかもしれない。しかし、それで科学の発展が止まってしまうわけではない。
2010-01-23 16:43:27天気予報の譬えと同じく、19世紀の物理学者たちが統計力学の方法論を発展させ、気体のように非常に多くの分子からなる系のさまざまな性質が理解できるようになったのも、気体中の全ての分子の位置を知りえないという「認識の限界」の認識からなのである。
2010-01-23 17:10:22カオス的な現象についても同じである。カオス現象を解析するために、以上のやり方と同じく、統計的な手法が使われるのである。そして、そもそも重要なこととして挙げておかなければならないのは、科学は、予測を行うことだけではなく、「理解すること」を目的としているということである。
2010-01-23 17:15:46@Abraxas_Aeon ちなみにリアプノフ指数は簡単に言えば「系の予測不可能性の度合い」、ストレンジ・アトラクターはカオスの軌道の集合、構造のことです。
2010-01-27 00:18:30