〔AR〕その18

東方プロジェクト二次創作SSのtwitter連載分をまとめたログです。 リアルタイム連載後に随時追加されていきます。 著者:蝙蝠外套(batcloak) 前:その17(http://togetter.com/li/388886) 続きを読む
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BIONET @BIONET_

「貴方が踏み込もうとしている領域と、私たちが調べなくてはならない領域、それはきっと、同じだと思いますわ」 「調べなくてはならない……? バイオネットになんか問題でもあったの?」 次々と気がかりな情報が出てくる。はたては、自身のカメラ兼メモ帳、ケータイちゃん(愛称)を取り出した。

2012-10-17 21:59:38
BIONET @BIONET_

「システム構築者として認めたくはないのですが、まさに今、この瞬間、問題が起こりつつあります。バイオネットが、幻想郷の自然の地脈を利用して、情報をやりとりしているというのは、知っていて?」

2012-10-17 22:01:25
BIONET @BIONET_

はたては頷いた。基本的な仕組みは、サービス開始直前のプレスリリースで解説されていた。はたてもその場に居合わせて取材しているので、とりあえず額縁通りには理解している。 「この一帯は、その情報通信のための地脈が通っています。丁度確認のために来たところで、貴方と出会ったというわけね」

2012-10-17 22:02:01
BIONET @BIONET_

「……嘘は言ってないけど順序が逆よ。調べるべき場所のうちの一つに、この天狗がいたから、先に話を付けるつもりで来たんじゃない」 本を脇に抱えたパチュリーが、紫の脇をつつくような感じで付け加える。

2012-10-17 22:02:32
BIONET @BIONET_

「まぁ、それはいいわ。改めて言うけど、バイオネットには、今現在、想定外の怪現象が起こっている。それは、きっとあんたが追いかけている噂話とリンクしているんでしょうね」 パチュリーの言葉に、はたては思わず唾をごくりと呑んだ。思いも寄らず、取材していたネタの核心に迫ろうとしているのだ。

2012-10-17 22:02:59
BIONET @BIONET_

「首謀者であるあんたたちは、どこまでわかってんの?」 「首謀者ではなく発案者と言って。あえて首謀者というなら、それはこいつよ」 「まぁ酷い。思いついたのは貴方の側ではなくて?」 「話が進まないんですけどー」 「天狗はせっかちでいやだわ」 「ほんとにねぇ」 「話を進めろっつーの!」

2012-10-17 22:09:37
BIONET @BIONET_

〔中断〕※明日21時頃再開します。

2012-10-17 22:10:01
BIONET @BIONET_

はたては思わず叫んだ。この二人、仲が良いのか悪いのか定かではないが、とりあえず呼吸は合うらしい。 「はいはい、わかってることね……とはいえ、目に見える現象については、貴方が噂話で聞いているものと情報量は同じよ。ただ、私たちは、様々な証言を整理していく中で、ある推測を導き出したわ」

2012-10-18 21:04:00
BIONET @BIONET_

「変なのを見たのが、バイオネット利用者である?」 「なかなか話が早くて助かるわ。第一の推測として、件の現象は、バイオネットの利用と何かの関係を見いだせる。では、第二の推測はわかるかしら?」 「第二……それは……」

2012-10-18 21:04:27
BIONET @BIONET_

はたては言葉に詰まる。はたてが噂話と取材から導き出せたのは、紫の言う第一の推測までである。 「ヒントをあげましょう。利用者たちは、果たしてどういうものが見えてたのかしら?」 「見えたもの……亡くなった人、夢に出てきた化け物、食べたいと思っていたもの……」

2012-10-18 21:05:59
BIONET @BIONET_

「じれったいわね、教えてあげてもいいんじゃない?」 沈思黙考状態に陥るはたてを見て、パチュリーは再度紫の脇をつつくように言った。しかし紫は。 「今思いつかなくても、凡例がそろっていれば、じきに導き出せますわ」 と、話を一度打ち切るように、そう言い放った。

2012-10-18 21:06:33
BIONET @BIONET_

「それよりも、姫海棠はたて。私たちはまだ仕事が残っている。よって、手短に済ませたいことがあるのです」 「え、へ? そ、そんなのさっさとやればいいじゃない」 「頭の回転が鈍いわね。わざわざ私たちが貴方の前に姿を現した意味がわからない?」 「――は!」

2012-10-18 21:07:12
BIONET @BIONET_

そう言われて、出会い頭の時の懸念が再燃した。 「く、口封じでもしようっていうの!? そして問題を隠蔽するつもりでしょう! やっぱりあんたたちなんか企んでるわね!?」 「ほら、私はやめようって言ったのに」 「若い子は気が短くていやぁねぇ」

2012-10-18 21:07:38
BIONET @BIONET_

パチュリーと紫は、共にあきれ顔を見せるが、それぞれに意味するところは違った。パチュリーは、鴉天狗一匹如き放っておけ、と言わんばかりの目つきだが、一方の紫は、教え子の察しの悪さに悩む教師のようであった。

2012-10-18 21:08:47
BIONET @BIONET_

「まず要点を言いましょう。姫海棠はたて、私たちは、問題解決のために、バイオネットの一時休止を予定しています。また、今後の状況次第で、この一件を公表することも考えています」 「へ? バイオネットをやめるの?」

2012-10-18 21:09:03
BIONET @BIONET_

「あくまでも一時休止です。それ自体は、前々から予定はしていたのですが、問題発生につき幾分か前倒しせざるを得ないでしょう。で、ここからが本題です」 紫は、懐から取り出した扇子をバッ、と開いて、一度自らの顔面を覆った。扇子はすぐに閉じられ、はたての鼻先に突きつけられる。

2012-10-18 21:09:59
BIONET @BIONET_

扇子の先を突きつける紫の表情には、いつもの薄ら笑いはかけらもなかった。 「貴方の花果子念報に、バイオネットのプレスリリースを一任します。今後、バイオネットに関する重要な情報は、貴方の新聞を通して、最速で幻想郷に公開されるということです」 「!!」

2012-10-18 21:10:27
BIONET @BIONET_

はたては我が耳を疑う。これは、とんでもないビジネスチャンスというものではないか……はたての心拍数は、花火のように跳ね上がった。 そして同時に、はたてのかろうじて冷静な部分が、この誘いをいわゆる裏取引の類ではないかと警戒する。 「裏取引、などとお思いで?」

2012-10-18 21:11:06
BIONET @BIONET_

「い、一体、どういう交換条件を出すつもり……?」 「なんてことはないですわ。ただ、私たちが要求する通りの発表を、私たちの指定するタイミングで、貴方の新聞に載せていただければよいだけのこと。書状を丸写しして、後は要点を付け加えれば、それで終わり。簡単でしょう?」

2012-10-18 21:12:29
BIONET @BIONET_

確かに簡単だ。あらかじめ新聞のスペースを空けておき、事前に渡された原稿を載せるだけならば、苦労はない。 しかし、ともすれば、そのような独占的な情報の開示は、癒着を疑われ、あらぬ噂を立てられる元になる。それに、新聞そのものを、バイオネット運営の広報として乗っ取られる危惧もある。

2012-10-18 21:13:20
BIONET @BIONET_

魅力的であるが故に、はたては紫に答える次の言葉が出てこなかった。 「そんなに悩まれるとこちらも困るのですけど……そうね、こんな例え話はどうかしら」 「うん?」

2012-10-18 21:13:32
BIONET @BIONET_

「外の世界の話です。とある新聞が、とある会社の新製品についての情報を、他のどの媒体よりも早く記事にしました。ところが、実際に会社側が正式に告知した製品の情報と、新聞が報じた製品の情報には、大きな食い違いがあったのです。いわゆる、飛ばし記事というものですわね」

2012-10-18 21:14:03
BIONET @BIONET_

いきなりはたてにとっては耳の痛い話だ。天狗の新聞は、飛ばし記事が日常茶飯事といってもいいどころか、事実無根な情報も珍しくはない。

2012-10-18 21:14:35
BIONET @BIONET_

「この飛ばし記事は大きな波紋を呼び、新聞の情報を鵜呑みにしてしまった企業や人民の中には、先走った行動によって無視できない損失を被ったところもありました。当然新聞に対しては非難が集中。刊行した新聞社は謝罪と共に、原因究明をしなければならなくなりました」

2012-10-18 21:14:55