〔AR〕その18

東方プロジェクト二次創作SSのtwitter連載分をまとめたログです。 リアルタイム連載後に随時追加されていきます。 著者:蝙蝠外套(batcloak) 前:その17(http://togetter.com/li/388886) 続きを読む
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BIONET @BIONET_

「新聞記事ごときに踊らされた連中の間抜けさは棚上げ?」 胡乱な目をしながら、パチュリーは紫の話に横やりを入れた。

2012-10-18 21:15:54
BIONET @BIONET_

「そんなのは、わざわざ指摘するまでもないこと。今重要なのはなぜ飛ばし記事が生まれたのかということですわ。で、記事を書いた記者を追求したところ、新製品を出す会社の幹部と懇意であることがわかり、酒の席で新製品の情報をリークされたという話でしたわ」

2012-10-18 21:16:09
BIONET @BIONET_

「それじゃあ何で実際の話と食い違いが……って、疑問に思うまでもないか。リークっても、酒の席での話だなんて、どうせ幹部の方がつい口を滑らせただけなんじゃない? しかも、その幹部が新製品の情報をきっちり把握していたわけではなかった、というコンボでね」

2012-10-18 21:17:43
BIONET @BIONET_

「あらあら、答えだけでなく論述までピタリ正解されちゃったわ。まるで似たようなケースを知っているかのよう」 ホホホと笑う紫を、はたては苦虫を噛み潰した表情で見返した。はたてが、外の世界の社会構造を模倣している天狗コミュニティの一員であることをわかって言っているのだろう。

2012-10-18 21:18:44
BIONET @BIONET_

「さて、ついつい話が長くなってしまったけれども、私が言いたいことをまとめるとね。誤った情報を流すことがどれだけ罪深いか……ではそうならないためにはどうすればよいか。おわかりで?」 「……正式に取材して、裏をとることよ」

2012-10-18 21:19:55
BIONET @BIONET_

「それがまさに、今貴方がやっていることで、私が求めていること。お互いの利害をすりあわせた、正当なる交渉、商談、取引。これをイメージの悪い裏取引呼ばわりするのは、些か短慮だと思いません?」 「ぐぬぬ……」 呻いているものの、ぐうの音も出ないとはこのことだろうか。

2012-10-18 21:20:46
BIONET @BIONET_

紫の言っていることは正しい。そして明言していないものの、おそらく、この話は、はたてに断る余地がある。言外に、納得いかないのであれば破談にしても良い、という雰囲気がある。 それを確かめるべく、はたてはさぐりを入れた。

2012-10-18 21:21:05
BIONET @BIONET_

「もし、私が断ったら、どうするつもり?」 「何も。速やかに貴方を解放し、別の手だてを探しますわ」 「でもあんたら、私に結構情報を漏らしたじゃない。それで私が勝手に記事にしたら、困んじゃないの?」 「その時は、貴方が先ほどの新聞記者のようになる可能性が浮上するだけですわ」 「……」

2012-10-18 21:21:56
BIONET @BIONET_

今度は呻くことすらできない。選択肢を開示されているのに、選択の余地などない、この閉塞感。 では、決まった選択肢の中で、自分が求めるものを手に入れるにはどうすればいいか? ――踏み込むしかない。 「ねぇ、あんたたちに協力したら、真相を暴くことはできる?」

2012-10-18 21:23:29
BIONET @BIONET_

「そうですわね。私たちは謎を解き明かさなくてはなりません。プレスリリースに止まらず、協力していただけるのなら、お互い利益となるでしょう」 「わかったわよ、ノってやろーじゃん。それに、妖怪の賢者相手にコネがあるってのは、後々のこと考えれば、結構ハクつきそーだしね」

2012-10-18 21:24:12
BIONET @BIONET_

「ふふ、貴方に私が利用できるかしらね」 紫は扇子を懐にしまった。 「では、今日のところはこの辺でお開きにしましょう。私たちは、ここをチェックした後も、別の地脈に赴かねばなりませんので。詳細は、追って式神を飛ばします。貴方は、その間別のことをしていた方がいいでしょうね」

2012-10-18 21:24:49
BIONET @BIONET_

「おーけー。面白いネタを期待してるわ」 「良い意味で面白いネタになれば、ね」 話がそれで終わりであり、この場を調べても詮はないと判断したはたては、二人に背を向けて、この場から飛び去ろうとした。 が、気になることがあって、肩越しに紫を見る。

2012-10-18 21:25:24
BIONET @BIONET_

「ねぇ、私たち、結構重要な話をしていたはずなんだけど、こんなところで立ち話で良かったの? 今の会話が他の天狗とかにすっぱ抜かれたら、面倒なことにならない?」 はたては念のため周囲の気配を探り、自分たち以外がこの一帯には存在していないことを確かめたが、それでも気がかりだった。

2012-10-18 21:25:52
BIONET @BIONET_

「ご安心を。私たちと貴方が出会ったその瞬間から、この周辺にちょっとした結界を張りました。何者がこの近辺を通りすがろうとも、私たちの存在には気づくことはありません」 うげぇ、とはたては改めて背筋に悪寒を感じた。実質的に脅迫していたと白状されたようなものだった。

2012-10-18 21:27:36
BIONET @BIONET_

「――んじゃ、いい返事を待ってるわ」 悪寒を早くぬぐい去りたいと言わんばかりに、そのような言葉を残して、はたては彼方へと飛び去っていった。 「……ほんとにこれでよかったの?」 パチュリーは、紫を横目で見ながら問う。 「勿論。この局面としては花丸だと思いますわ」

2012-10-18 21:28:16
BIONET @BIONET_

「わざわざ、木っ端マスコミを介して伝達するなんて、私には無駄な手間だとしか思えないけど」 バイオネット端末には、バイオネットのシステム本体からメッセージを送ることが出来る。バイオネットにまつわる重要な情報の発表は、実質的にその機能を使えばすべて事足りる。

2012-10-18 21:30:20
BIONET @BIONET_

実際に、タイミングの差はあれど、システム側からの休止通知は既に予定されたことだ。 だが、紫は何故か首を振った。 「無駄な手間、だと思っているうちは、まだまだ貴方も若いということね。これもまた、必要な手続きであり、有用な戦略。渡りをつけるというのは、そういうことですわ」

2012-10-18 21:31:07
BIONET @BIONET_

「わからないわね。あんたの視点は長期的すぎてじれったいわ。目に見えた成果がわからないようじゃ、労力を費やす意義を見いだせないでしょうに」 「故に、栄枯盛衰は起こるのです。成果だけを求める行いは、未来を前借りしているに等しい」

2012-10-18 21:32:00
BIONET @BIONET_

紫は目の前の虚空に人差し指を払って、空間の裂け目を作る。別の地脈の場所へと通じるスキマだ。紫は先ほどのはたての会話では明言していなかったが、実は既にこの一帯の調査は終えている。

2012-10-18 21:33:20
BIONET @BIONET_

「私が求めるのは秩序ある混沌。秩序のみでは先細って死滅し、混沌のみでは手のつけようがなくなって崩壊する。選択肢を増やしながら、それを制御できるように、二つは両立しなければなりません」

2012-10-18 21:34:16
BIONET @BIONET_

また煙に巻くつもりか……と思いつつ、パチュリーは最近、この妖怪の意図や思想を渋々ながら理解できるようになってきた。少なくとも、この妖怪は、本当に無駄なことは絶対にしないというのは、確かなことだ。

2012-10-18 21:34:44
BIONET @BIONET_

信用されないことで、信頼を勝ち取る。この妖怪は、自分が胡散臭い妖怪であることを最大限に生かして、打算をすりあわせる能力に図抜けているのだ。パチュリーは先ほど成果がわからないと言ったが、実際、この妖怪ほど実利を保証しようとする事業者はそういないだろう。

2012-10-18 21:35:20
BIONET @BIONET_

「面倒な話はともかく……あんたは、あの鴉天狗で実験しようと考えてるんでしょう」 「あら?」 「あの鴉天狗も薄々感づいているんじゃない? 自覚症状があると先入観が混ざってブレが生じるにしても、逆に言えば、あいつが明らかな幻視を見るようになれば、私たちの仮説は確定といっても良い」

2012-10-18 21:35:53
BIONET @BIONET_

「……ふふ」 「何がおかしいの?」 「いいえ、貴方を引き込めたのは本当に僥倖だったと、思っているだけですわ」 このようなやりとりはもう何度目だろうか。パチュリーもいい加減慣れたが、気色悪さは変わらないし、嬉しさのかけらも感じない。

2012-10-18 21:37:07
BIONET @BIONET_

「くだらないこと言ってないで、さっさと次いくわよ。あんたの式神のチェックがザルでないこと、証明したいんじゃないの」 「ええ、ええ。行きましょう。藍のチェックがザルでも困らないんだけど、仮説の検証ができるに越したことはないですわね」

2012-10-18 21:38:10