〔AR〕その20

東方プロジェクト二次創作SSのtwitter連載分をまとめたログです。 リアルタイム連載後に随時追加されていきます。 著者:蝙蝠外套(batcloak) 前:その19(http://togetter.com/li/392477) 続きを読む
1
BIONET @BIONET_

だが、それとは別に、紫には懸念があった。その感情は、御阿礼の子という古い付き合いの友人に向けての心配と、稗田阿求という少女に向けての半ば親心めいた老婆心とがない交ぜになった、微妙にして複雑なものだ。

2012-10-22 21:25:25
BIONET @BIONET_

紫自身は、『Surplus R』に対して何か思うところがあるというわけではない。バイオネット管理者としては、一人当たりの文章量としてはトップを走っているアカウントであるな、という程度の認識である。

2012-10-22 21:25:40
BIONET @BIONET_

しかし、管理者という都合上、紫は通常ユーザーにはわからない、バイオネットの裏側の情報を把握している。つまるところ、紫は『Surplus R』がどこでバイオネット端末を利用しているかがわかるのだ。

2012-10-22 21:26:01
BIONET @BIONET_

勿論、それは重要なセキュリティ情報であり、紫自身口外するどころか、進んで調べることさえ決してしない。ただ、仕事をする中で、どうしても知り得てしまうことがある。

2012-10-22 21:26:56
BIONET @BIONET_

そう、紫はとある人物からのサポート要請によって、『Surplus R』が何者なのかを特定してしまったのだ。厳密には、多分間違いないだろうという妥当性のレベルだが、あえてそれを検証はしない。それは、紫のプライドが許さない。当人の尊厳を傷つけるからだ。

2012-10-22 21:27:11
BIONET @BIONET_

だが、知ってしまったことを忘れることは容易ではない。故に、迷った。楽しそうにかの人物との邂逅を待ち望む彼女の心に、不安を差し込んではしまわないか。しかし、言わなければ、阿求に害が及ぶかもしれない――。 結局、紫は話を流した。今でもその判断が正しかったのか、紫は自問を続けていた。

2012-10-22 21:27:59
BIONET @BIONET_

あるいは、今この瞬間、少しだけ予定を変えて、手を回すことはできなくもない。かの人物と「話を付け」、阿求との顔合わせを白紙に戻させる。阿求には無念さを味あわせてしまうことになるが、それでも、予想されうる最悪の事態を避けるには、いたしかたない――。

2012-10-22 21:29:13
BIONET @BIONET_

「――考え過ぎか」 やはり自分は疲れている。睡眠時間が減っているだけではないだろう。バイオネットの異変の謎は未だに判然としていないからだ。その苛立ちが、思考をささくれ立たせているように思えてきた。

2012-10-22 21:29:37
BIONET @BIONET_

ものは考えようだ。秋祭りは、多くの人妖が集まる。予定では博麗霊夢も参加する(というか、様々な事情でさせる手はずだ)。そんな場所で、人を襲ってはいけないルールを破り暴れるようなことがあれば、真っ先に取り押さえられる。秋祭りは、その日だけ、ある意味幻想郷でもっとも安全な空間となる。

2012-10-22 21:31:15
BIONET @BIONET_

それならば、たとえかの人物に危険性があったとしても、最悪の事態は未然に回避できる。いやそもそも、かの人物が阿求に害をなしに現れるという前提も、見方を変えれば思いこみだ。阿求が言うとおり、かの人物もまた、本当にただ阿求と一緒に人形劇を見たいだけかもしれない。

2012-10-22 21:31:55
BIONET @BIONET_

何より、かの人物は、愚かではない。 そこを、信用してもいいかもしれない。 「何かあったとしても、若気の至りで済んでくれると思いたいところね」 考えの整理がついた。紫は、今度は音を立てることもなく、その場から姿を消した。

2012-10-22 21:32:19
BIONET @BIONET_

阿求は女中に茶器の片づけを頼むと、自室に足を向けた。部屋には、まだ確認していない、祭り当日の屋台の配置図、催し物の予定表がある。それを頭に納めた後、当日の予定を構築するつもりだ。

2012-10-22 21:46:11
BIONET @BIONET_

今年は、精力的に布教活動を行う命蓮寺、守矢神社に、かの豪族三人組まで出展するというかつてない混沌とした状況の顕現が予想され、里外からの人手も幾分か増えることが予想される。永遠亭の出張販売と因幡の餅つき、河童のバザー、秋の神様の登場も定番である。

2012-10-22 21:46:57
BIONET @BIONET_

スペルカードルール制定後、着々と増え続けるあまたの勢力が集う人里の祭りは、もはや幻想郷全体を挙げた一大祭典と言っても過言ではない。 人形劇の開演時間が昼の時刻であるため、その開演前一時間のうちに『Surplus R』と落ち合い、数々の魅力的な出展を見て回るつもりだ。

2012-10-22 21:47:33
BIONET @BIONET_

それはどれだけ楽しいことだろう。阿求の想像と期待は、自室へと向かう一歩一歩ごとに、果てしなく膨らんでいく。 新たな記念すべき幻想郷の記憶の一ページを、憧れの人と共に見つめることができる。なんと幸せなことだろうか。 もうすぐ、かの人と会える。 秋祭りは、目前だ。

2012-10-22 21:48:58