レプリカ・ミッシング・リンク #6

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは蓄積し続けるダメージに顔を歪めながらパルクールで仕切り直しを試みた。シャドウドラゴンとパンデモニウムは再び彼を挟み込むように展開し連携攻撃の機会を窺う。ナムサン!アマクダリの恐るべき組織力とノウハウ蓄積力よ!敵は着実に包囲網を狭めつつある! 44

2012-12-09 22:41:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ムッハハハハハハ!ニンジャスレイヤー=サン、貴様の負けだ!アマクダリの前に跪き、ブザマに命乞いを……」ビル周囲を旋回していた武装ヘリのスピーカーから、ラオモトの残酷な高笑いが響き渡る!その直後……BLATATATATATA!ノーズ部に吊られたミニガンが突如乱射を開始した! 45

2012-12-09 22:53:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

火炎放射器めいて高速射出された大量の弾丸が、フロアを薙ぎ払う!「「「「イヤーッ!」」」」ニンジャスレイヤーを含む全員が、回避動作を余儀なくされた!シズケサもステルスを解いて側転せざるを得ない!「おい、何だ、演説中に勝手な攻撃を!」スピーカーからラオモトの困惑する声が漏れる! 46

2012-12-09 22:57:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハッキング攻撃下な」操縦クローンヤクザは冷静にUNIX画面のアラートを読んだ。「通信切断しろ!今すぐIRCを落とせ!」ラオモトの声がノイズ混じりで届く。「切断解除できません」とクローンヤクザ。「ごめんなさいね、坊や」ヤバイ級ハッカーYCNANの挑発的な声が回線に割り込む! 47

2012-12-09 23:02:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはナンシーの援護に短く感謝しながら、シャドウドラゴンに狙いを定める。他が援護に入ろうとするが、ミニガンが再び乱射され敵の連携から正確性を奪う!ニンジャスレイヤーは乱戦の中に勝機を見いだすべく、不屈のカラテを構えて跳躍した!高く!鋭く!「Wasshoi!」 48

2012-12-09 23:12:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

静寂。重苦しいほどの静寂。武装マッポビークル突入の少し前。廃墟と化した大型スシ・バーの店内。頼りないタングステン・トーチの光を掲げて闇の中を進むユンコは、前方に白い人影を見た。また何かのポスターか等身大ポップかと思ったが、それは白衣を着たオイランドロイドであった。 50

2012-12-09 23:18:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お迎えにあがりました」オイランドロイドが無表情に言った。ユンコはZAPライフルを収納し、彼女の顔をまじまじと見る。「……生きてたの?」「意味を理解できません。こちらへ」オイランドロイドが歩き出す。ユンコが足を引きずり続く。「私の家に……いたはずの」「私の姉でしょうか」 51

2012-12-09 23:29:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オイランドロイドは無愛想な人間のように、不気味なほどなめらかな会話を行った。姉妹のごとき概念を理解するということは、ネコネコカワイイのマイコ回路の一部が違法流用されているのだろう。継ぎ接ぎの、フランケンシュタインの怪物めいた、自我と人格のパッチワーク。二人は闇の中を歩いた。 52

2012-12-09 23:36:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大丈夫ですか?」彼女はユンコの足の不自由に気づき、介護プロトコルに従って少し冷たい手を差し伸べた。「優しいね」「たいへん優しいです」ユンコはそれを握り、ゆっくりと二人でスシ屋の廃墟を歩いた。全ての事がこんなにシンプルに運べば、世界はどれほど幸福だろうかとユンコには思えた。 53

2012-12-09 23:49:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

階段を下りながら、ユンコは電子音声ノイズ混じりに、オイランドロイドとどこか奇妙な会話を続けた。残された時間を惜しむように。「この先に何が待っているの?」「話すことが許可されていません」「私の父さんを知っている?」「情報が不足しています」「トコロ・スズキ」「知っています」 54

2012-12-10 00:02:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「詳しく話して」「話すことが許可されていません」「彼はどんな人だったか」「質問が曖昧です」オイランドロイドがそう答えた直後、ある種のIRC自我科セラピーめいた二人の会話を踏みにじるように、上階からクローンヤクザマッポ軍団の物々しい靴音と怒号が聞こえてきた。 55

2012-12-10 00:12:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人はすぐ近くにあるVIPタタミ・ルームのフスマを開けた。「チャブに乗ってください」オイランドロイドが手を離す。ユンコ独りを乗せたチャブが回転しながら地下に降りてゆく。「来ないの?」「エスコートを命じられています。侵入者を許さないです」オイランドロイドの顔は見えなくなった。 56

2012-12-10 00:17:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコはまた命綱をひとつ失ったような感覚を覚えながら、地下秘密ラボへと到着した。水槽とUNIX群が放つ青白い光に向かって歩いてゆく。「協力者=サン!」ユンコは苛立たしいほどの焦燥感に駆られながら叫んだ「早く!このクソッタレなAIとボディを修理してよ!ミサイルを補給してよ!」 57

2012-12-10 00:27:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

左手の闇の中からユンコの前に、ドロイド修理用のメカアームを備えたホバー椅子が、頼りないセンサー機能を駆使して近づいてきた。「座りなさい」有無を言わさぬ協力者の声が、マーシャルアンプめいて高く積まれたUNIXのスピーカーから響く。ユンコがそれに座ると、ホバー椅子は前進した。 58

2012-12-10 00:36:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガクン。いささか乱暴な調子で、ユンコの首の後ろの端子に充電ケーブルとLAN端子が突き刺さった。「まずは膝の修理から」姿なき声。アームが動き、遠隔操作で精密なハンダ付けを開始する。「どこにいるの?姿を見せて……姿を見せてよ!」「いいだろう」ホバー椅子は滑るように前進を続ける。 59

2012-12-10 00:43:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブッダ……」ユンコは自らの目を疑った。青白く輝くイケス・プールの中。人工的に作られた水流の中で静止したように泳ぎ続ける、一匹の大マグロがいた。「これが僕だ」相手はユンコの視界を覗いていた「ゴボボボ……今見ている、これが、僕だ」「……あなたは誰?」「ゴボ……僕は君の父親だ」 60

2012-12-10 00:51:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワッタ……父さん……?トコロ……スズキ……?」ユンコは呆然とした顔で言った。引きつった笑いが漏れた。「……ゴボボボ……そうではない。僕が彼とともに、君を作ったのだ……」マグロは言った「……そして彼は死んだ……」 61

2012-12-10 00:59:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコはまだ事態を吞み込めず、実際混乱の中にいた。油断すれば、自我が真っ白になってゆきかねない不安感を覚えた。ひとつひとつ、オイランドロイドと会話するように、入念に言葉を選んで質問した。「トコロ・スズキは、何故、私をこのボディに移植したの?彼は、私に、何をさせたかったの?」 62

2012-12-10 01:12:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ゴボボボ……」知性マグロは瞬きしない瞳でユンコを見た。彼女は何も父親から知らされていないのだ。それを聞く前に彼は殺されてしまった。「……ゴボボボ……全てのニンジャを殺させるためだ……。特にニンジャスレイヤー……!オムラを傾かせたあのニンジャを……何としても殺すのだ!」 63

2012-12-10 01:24:46