「葬室からの励と責～イット・カムズ・レイド」 #5

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魔方陣の安定の為、なるべく周囲を壊す訳にはいかない。手近な壁等を破壊しないのはそれが理由だ。まだ儀式の継続を諦めてはいなかった。数百年がかりの儀式の仕上げだ。失敗すれば最悪処刑よくて破門だろう。壊せるのは元から外に繋がるシャッターや窓位だ。これらなら壊してもほぼ影響しない。 74

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しかし、窓はホワイトに近く魔力弾を阻止される可能性が高い。となるとシャッターが最善だが、今振り向けば壊せても同時にホワイトに殺される。反応速度は向こうが圧倒的に上！準備された『外壁』に気付かず、全力の魔力弾で諸共破壊しなかったのは致命的なミスだった。だが、もう遅い。 75

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「…その隙に私『私は一人でコソコソ逃げる！』…違う！」リバーの声を真似た合成音声！だが極限状態のストーン達は一瞬だけ混乱！！常識で考えれば、例えそんな卑劣を考えて居ようとも、まず言う訳が無い。次の一瞬で二人はこれを看破し、同時に疑った自分達を恥じた。 76

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その十二分過ぎる隙に、ホワイトが彼にしてはのろのろとした動作で、両手に12本ずつ、計24本の銀刃を構え、投擲動作に入っていた。銀断刃シルバーエッジ。ホワイトの代名詞的武器。形状は医療用メスに似ているが、刃の根元と柄先に1個ずつ計2個の宝珠が埋め込まれている。 77

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宝珠一つに予め一種類ずつ術式がこめてあり、刃一本でも宝珠全種類の数の二乗の組み合わせが可能である。そして一つ一つは低威力ながら連続同時多重投擲により、効果は数十数百倍！これを投擲する技を称して…銀刃弾シルバーバレット！投擲！ヒュヒュヒュヒュン！ 78

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右の12本の狙いはワイドリバー！そして左の12本が狙うのは…ロナルド！「危ねぇ！」クインスが師と弟分を庇い前に出る！「ウグワァァア！！」「…うわあああっ！！？？？」「キャアアア！」「グアアアッ！！！」上がった悲鳴は3つ！クインスの背に8本！ロナルドに3本！ストーンにも7本！ 79

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リバーにも6本の刃が襲い掛かっていた。クライムストーンは1本は迎撃できたが、弟子を庇おうとして右目を損傷！ワイドリバーは脳や心臓狙いの3本を破壊したが、脇腹や腕に3本が突き刺さっている。クインスは全て背中。ホワイトに正面を向けたのにだ！何が起きた！？ 80

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これは二つの宝珠の両方に『必中』の術式が込められていたためだ。威力軽視のこの刃なら、片手に12本ずつという無茶な数であれ、目標を追尾して確実に射止める！敵の背後を突くことも容易！手負いの雑魚への止めから強敵への牽制まで幅広く使える優れたコンボである。 81

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それ以上に恐ろしいのは、弱者弱所を的確かつ無慈悲に狙うホワイトの目標選定であろう。更に言えば、彼等が『矢避け・弾除け』の術式を必要最小限しか装備品に仕込んでいなかったのも被害を大きくした。これは科学側の重火器や拳銃などに対する魔術側の防備である。 82

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彼等が用意していたものでも、致命的な銃弾を掠り傷で済ませ、掠る筈だったものを外れさせる程度の効力はある。対魔術師用ないし対機関銃レベル用としては頼りない物だった。彼等がそれだけ魔術師との遭遇戦の可能性を低く見積もっていた油断の表れでもある。 83

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十全な装備があれば、命中率半減か追尾効果無効化は出来ただろう。装備せぬまでもせめて『匣』の中には放り込んでおくべきだった！『いや～お見事』6本追加投擲！「グガアアッ！！？」全弾がクインスの正面へ！必中では無いが、最早避けられない！「あ…あ…ああっ！！！？」 84

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傷の小ささに対して、数十倍の痛みがクインスを襲う！立っていられず、転がりのた打ち回る！刃を抜く余力すら無く、その為に刃から一層痛みが広がる。『見事に急所攻撃を』両手で6本ずつ投擲！左は4発を囮に2発がリバーの左脚を両側から掠る！「っっ！？」右は全てロナルドを真っ直ぐに狙う！ 85

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これは先程と同種の激痛特化！今度はロナルドを抱きかかえたクライムストーンが背で受ける！「ぎ…！？ずうっ！？？？」その激痛に痛み以上にまず驚愕！『躱して、狙い通り本命に掠ってくれて有り難いったら…ついでに情報を全部吐いて自殺してくれるとなお助かるんだが…ダメェ？』 86

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両手を重ね、おねだりめいたポーズでに要求する。「貴様ァァッ！」もう戦えるのはワイドリバーだけだ。「死ねぇっ！外道！」ワイドリバーが杖を再度向ける！今度は外の水を呼び込もうというのではない。杖内のシリンダーに収められた300ml程の水、それを霧状のカッターにしようと言うのだ！ 87

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先程、雨水を当て込んで使わなかったのは迂闊であった！だが、特に何も起こらない。「！？」シリンダーが割られている！先程躱したうちの1本によるものだ！『いやー皆悪いね～悲鳴のおかげで割れる音が掻き消えてたよぅ。悲鳴合唱団サイコー！』パチパチパチ！楽しげな『声』で無味乾燥な拍手。 88

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『アンコール！』ヒュン！投擲！宝珠すら無い廉価版銀断刃！「「あああああ！！」」盾2人に6発ずつ命中！『アンコール！』投擲！「「あああああ！！」」6発ずつ命中！「ぅおのれおのれおのれおのれえええっ！」ワイドリバーは杖から割れたシリンダーを排莢！匣からその予備を呼び出す。 89

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空間が揺らめきシリンダーが出現！『ホイ！』銀断！割れ落ちる！「くそっ！」今度は同時に20本が出現！『ホイホイホ～イ！』銀断銀断銀断！ヨガじみたポーズとふざけた甲高い声のホワイトがこれを次々に粉砕。所要時間わずか0.1秒！「ぅおのれぇぇっ！！！」召喚！『ホイ！』銀断！粉砕！ 90

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「おのれ！」召喚！『ホイ！』銀断！粉砕！召喚！銀断！粉砕！召喚！銀断！粉砕！召喚！銀断！粉砕！必死に召喚を続けるワイドリバーに対し、ホワイトは右手のみで対処。廉価刃だけで気だるげに高速投擲を継続。合間合間に左手投擲で周囲も牽制する。召喚！銀断！粉砕！召喚！銀断！粉砕！ 91

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「死ねぇ！」召喚！銀断粉砕！召喚！銀断粉砕！召喚！銀断粉砕！召喚！銀断粉砕！『嫌だ！』召喚！銀断粉砕！召喚！銀断粉砕！召喚！断砕！召喚！断砕！召喚！断砕！召喚！断砕！召喚！断砕！召喚！断砕！「死ね死ね死ね死ね！」『いやいやいや～ん』銀断銀断銀断銀断銀断銀断断断断断断！！ 92

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既に300mlシリンダーを400本は粉砕しただろうか。ホワイトは感心すると同時に呆れていた。水使いには水の携帯が必須とは言え、他に用意すべきものが色々有ったであろう、と。ワイドリバーとホワイトの間には、割れたシリンダー片の山と……120Ｌ相当の水溜りが広がっていた。 93

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（掛かったなホワイト…！お前相手にシリンダーの装填は無理だと1発目で分かっていた…だが同時にお前を倒す策も閃いていた…お前は気付いているか？いや気付いていれば両手で阻止しに来るか…。まあ今気づいたところでもう遅い！）「終わりだ！！」『知ってる』「馬鹿め！足元を見ろっ！」 94

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『お前、奇襲に声かけるとか…』「食らえっ！」勢いよく杖で水溜りを突く！トォン！パシャ…。水が飛び跳ね、飛沫がホワイトに掛かった。『うわーくらっちゃったー』それ以上何も起こらない！「！？…食らえ！」全力で魔力を注ぎ込む！すると、水が泡立つ！ワイドリバーは勝利を確信！ 95

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この距離なら躱せない！先程のは疲労で集中が乱れただけだ！…だが、やはりそれ以上は何も起こらない。『お前が足元見ろよ…』呆れ声。「何っ！？」ワイドリバーは敵を警戒しつつも咄嗟に足元を注視！そしてあるものを発見し…呆然となり、『はい馬鹿が見る～！』「うぐわっ！」顎への蹴り！ 96

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『いや…まさか本当に見るとは…いや、見るにしてもあそこまで無防備とか…おい、お前らのリーダーだろ？早く何とかし……たところで、もお♪手、お～～くれさ♪』ワイドリバーとて警戒はしていた。その上で術の失敗の原因を確認しようとしたのだ。そして驚愕のあまり警戒が止まったのである。 97

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彼は目撃した。シリンダー片に紛れた、見慣れないポリ容器数個と、水の表面に浮かぶ光る被膜を。その500ml容器の一つをホワイトが足で抑え『空容器をどぶ川に、シューッ！…』ゴン！「ッ！」空ポリ容器らしからぬ重い音でリバーの顔面に衝突！『…ホワイトオリジナルから！』 98