#8　「ライトニング・マイ・パワー・トゥー・ビー・ボールド」（上）

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10:40。新渡町西部溝口家。 「何だったんだろうな、さっきの花火？」 「さあな」 「祭りかな？後で行ってみようぜ？」 はしゃぐ起矢とそっけない興基。 福岡や京都から来た彼等は地元の風習に詳しくない。 県外出身者向けの資料も貰ってはいたが読む暇も無かった。

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「違うんじゃない？時間も中途半端だし」 と早紀。 「行ってきてもいいが俺達は行かないぞ」 起矢に構わずロボの調整をする興基。勇矢達との試合に向けての準備。 先程も起矢達と練習試合をしたばかりだ。 「え？行かないのか？」 部屋から出てきた延生は浴衣を着込んでいた。

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「……いやそれは気が早いでしょう。せめてちゃんと調べてからでも…多分無さそうだけど」 直人が端末で地元のイベントを調べている。 「ノブよぉ…あの浅空達への借りを返す、下手すりゃ最後のチャンスなんだぞ？そんな暇があ」 「最後？何故だ？」 意外そうな顔の延生。

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「いつでも練習試合出来るってか？…これから同じチームでやってくんだぞ？今度から作ってくロボも、お互いの技術とかを利用する訳だ…純粋に俺達の手であいつらを倒せるのは最後になるかも知れ」 「なるほど。だが、こだわることか？」 「お前はやられっぱなしで良いのかよ？」 「？」

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「俺達は大会で優勝するのが目的だろう？」「っ…」 「そんなことにこだわってもしょうがないだろう」 「それは…そうだけどよ…だからって手を抜」 「問題ない。俺達が勝つ」 延生は何を当然のことを、という顔で答えた。 「まあ大丈夫じゃないか？」 起矢が続けた。

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「浅空も今日は予定有るらしいし、七橋もデートらしいぞ？」 「んだと！？」 興基が立ち上がる。椅子が後ろに倒れた。 「あいつら～…俺達との戦いを何だと…」 「でもその分先週凄い特訓してみたいだし、な？」 「舐めやがって…！」 歯噛みする興基の後ろでドアが開く。

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「お。自分一人でちゃんと着て来れたな、蘭花」 「うん」 着物姿の蘭花。 「………息抜きも必要だよな。仕方ない！…1時間だけだからな！」 「行かないんじゃなかったのか？俺が蘭花を連れて行くから安心しろ」 「ざけんな！俺が行く！」 「あ、俺も俺も！」

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「「いや、祭りとかやってないから」」 盛り上がる三人と無言で佇む蘭花に、常識人二人が声を合わせて突っ込む。 先程よりも遠くで花火の音がしたのは丁度その時だった。

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ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は～ノー・ティアー！ノー・アゲイン！」 #8　「ライトニング・マイ・パワー・トゥー・ビー・ボールド」

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ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は～ノー・ティアー！ノー・アゲイン！」 #8　「ライトニング・マイ・パワー・トゥー・ビー・ボールド」 #evlst

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-2013年4月21(日)10:52。新渡町北部商業地区　某ビル屋上。 魔女ネクロキャリアーの眼前にいたのは白衣の男―ホワイト。 男は彼女の足元へと二つの死体を放り投げる。 彼女の徒弟達だったモノだ。 心臓に光線銃による銃創が一つずつ。 「オリヴァー！ロバート！」

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「…よくも！」 『くそ雑魚かったよ』 全身に魔力弾の被弾跡を付けながらの発言ではあるが、嘘では無い。 『一切の回避行動を取らず、かつプロトムーバーのみで攻撃をする』という縛りの下で戦ったのだ。 キングとナイト辺りのみでチェスを戦うに等しい。

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彼等は合流を急ぐより安全を取ったため、奇襲し難い雑踏の中を移動していたが誘き出すのは容易だった。二度目の花火で術式を撹乱した隙に、師弟を引き離した。 その上で、音声再生ロボを送り、『声』を流した。 ロバート・エイクリーの弟、ロナルド・エイクリーの断末魔である。

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激昂するロナルドと彼を案じたオリヴァーはこの屋上に誘き出された。 前述の縛りのあるホワイトに取って、相討ち前提のロバートの組みつきとその意を汲んだオリヴァーの友諸共の攻撃は少し予想外で痛かったが死の危険を感じる程でも無く、一分ほど掃射に耐えてから軽く撃ち殺した。

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ネクロキャリアーは心底後悔していた。彼女は死者の記憶の読取を得意とする。仲間の遺体を確認した場合に備えて派遣されたのは当然の流れである。 ロバートは違った。ワイドリバー組の裏切りの可能性を考慮し、その友人や親族は極力外す方向だった。本来なら彼の代わりに他の徒弟を借りる予定だった。

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そこに彼が弟を探したい、と熱心に訴えてきた。 元よりUARは百名強の集団である。15名の派遣メンバーから、先遣の9名分の知己を外し切るのは難しい。ワイドリバー等の実力者もいたのでなおのことだ。その為、必須要員である彼女の上申に上役は簡単に頷いた。 その配慮が裏目に出た。

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徒弟位階の中でも特に優秀だからと安心していたが、やはり冷静さを失っていた彼を連れて来るべきでは無かった。友情に厚いオリヴァーが死んだのも含め自分の責任だ、と彼女は悲しみと怒りに打ち震えていた。 「どうして…こんなことを！二人を！皆を何故殺した！」 激昂する魔女。

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「お前は…許さない！」 『いいから蘇生はよ』 「！？…貴様私の魔術を知って！？」 彼女の固有術式・『ネクロキャリー』は死者を蘇生させて意のままに操るのが本来の用法であり、記憶の読取はその一側面に過ぎない。その事実はごく近しい者しか知らない筈である。

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先遣を含む派遣組では、彼女の徒弟達とチェインバー組しか知らない筈…僅かな間に聞き出したというのか！？ 「どこでそれを！？」 『早く可愛い弟子達を生き帰してやれよ酷い師匠だなオイ』 彼女の蘇生は仮初の命を与えるだけ、恐らくそれを分かっていての発言だ。キャリアーは歯噛みする。

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「外道！私の術は仮初の蘇生！分かってるんでしょう！死んだ命は生き返らない！正義の味方気取りの悪魔め！」 死者は生き返らない。 不完全ながらも蘇生魔術を使う彼女だからこそ分かっていた。 数十の一般人で蘇生実験をした彼女だからこそ分かっていた。 それはホワイトも知るところだ。

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キャリアーは前を警戒しながら遺体に手を当てる。 「いいでしょう…ロバート！オリヴァー！共に貴方達自身の仇を！」 手が発光し、遺体の全身に光が伝わり、胸の傷が一時的に塞がる。 「マ…」「マスター…」 二人が呻きながら起き上がり、両足を撃ち抜かれて崩れ落ちた。

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「ぎゃあ！」「ホワイトッ！」 ホワイトがベルト前面に銃を戻していた。 「貴様ッ！」 再度二人に術を施す。再度傷が一時的に埋まり二人が起き上がり全身を撃たれ崩れ落ちる間に関節部も撃ち抜かれる。 「やめ…ギャアッ！」 魔女の両膝が撃たれ、崩れ落ちる間に関節部も撃ち抜かれる。