「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」#7 (終)

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Astal_jukebox @astral_jukebox

―某国某所。現地時間: 2013年4月11(木)、20:12。 26

2013-01-10 20:05:08
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「それは本当かね?」男が、通信術式越しに部下に問い返した。「は、はい…1時間前に来る筈の報告が…無いのです…!」震えながら部下が改めて言った。「通信は長距離用の非暗号化術式による筈だったのですが、それが無く…緊急用の電話連絡すら無いのです…」 27

2013-01-10 20:05:19
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「……」「……」二人の間に沈黙が流れる。彼等にとって不可解極まりない事態だからだ。日本に派遣された6人はいずれも忠誠心の高い者ばかり。裏切るとは考え難く…「考えたくない、話ではありますが…万一彼等が裏切ったとしても…それにしてはおかしいのです!」 28

2013-01-10 20:10:45
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「そう、始点の儀式は成功し、大魔方陣は正常に起動しているのだから、ね…」『ええ…』「考えられる可能性は二つだ」男が二つ指を立てる。『二つ…ですか?』「そう、まずは…我が兄弟を疑うのは…心苦しいのだが…造反の可能性が一つ」『?…ですが』 29

2013-01-10 20:15:27
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「残る可能性は、敵対組織か現地組織の襲撃」『それは私も考えました…ですが!』「何だね?」『全滅したのなら儀式は失敗し、生き残ったのなら連絡が有る筈です!』「それは違うぞ?」『は…?』部下の表情が疑問に染まる。 30

2013-01-10 20:24:06
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「彼等は何者かに襲撃を受け…まあ可能性なのだが…不幸にも全滅した。そして最後の力で儀式を完成させた。最後の力でね」『最後の…力ですか?』「そう、最期の、だ」男の笑みが濃くなる。部下は意味を察した。『!?』「まあだが何にせよ儀式は成ったのだ。まずは祝おうではないか?」 31

2013-01-10 20:30:10
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男の従者が赤のグラスワインを運んでくる。側の従者がそれに何かを入れようとし「っ!」杖で打ち倒され、壊れる。そして男はソレが持っていた器を空中で受け止める。その中から一枚だけ薔薇の花びらを手に取り、ワインに浮かべた。それを軽く呷る。「さて、今後についてだが」 32

2013-01-10 20:32:52
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『……は、はぁっ!』部下が絶叫気味に返す。男の暴挙を目の当たりにし、震えが止まらない。「まずは先程の真偽を確かめるべく、先遣隊を派遣するのだ。一般人として手配し、最小の魔術行使で済ませば『検問』の心配はない」『は!』「その結果次第だが問題は…二週間後だな」 33

2013-01-10 20:34:38
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「襲撃と裏切り、どちらの場合にせよ、大人数の派遣が必要になるだろう…そうだな、元々の次回の要員を含めて今回と同レベルの者12人程をひとまず用意しておき給え。後は先遣隊の調査如何で調整する」『は、はい!……それと!』「何だね」『ワイドリバー達の朋友は外しておきましょうか?』 34

2013-01-10 20:41:18
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「?」一瞬その意味を理解しかね、疑問が表情に出る。「!」次の一瞬で『他の裏切り者』の可能性に気付き、「勿論だ!」『ひっ』先に気付かれたことで思わず語気を荒げた。「まあ…先遣隊次第だがね」『は、はい!直ぐに全て手配致します!』部下は男の顔を見ずに済むよう最敬礼した。 35

2013-01-10 20:45:11
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―通信が終わった。「ハァハァハァ…あい…あの方は全く…いや…その…」通信は切られているというのに部下はすぐ側で彼がいるかの如く恐怖し、ソファに座り深呼吸を繰り返す。寿命が縮む思いだ。あの男が長命なのは案外こうして他人の寿命を吸い取っているからではないかと真面目に考えもした。 36

2013-01-10 20:51:10
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暫くして現状を思い出し、慌てて各方面に連絡をし人員の手配をした。だが不幸にも彼の独り言やその後の言動は、『彼』に全て聞かれていたのだ。 37

2013-01-10 20:54:57
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―『へー中間管理職って恐ろしいもんすなぁ…』インカムで盗聴音声を聴くホワイト。火曜日に盗聴用の自動機械を某国に郵送し、自動操作と遠隔操作で現地で展開させた。この屋敷の他数か所にそれを忍ばせたのだ。距離が有り過ぎるので雑な仕込みになったが、週末にでも微調整しに行けば済む。 38

2013-01-10 21:02:41
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『ここまでは…良し』朝食のサンドイッチを開いた。『お前らを笑顔にはさせてやらん…今のうちに笑っとけ』苛立ち交じりに食らいつこうとして、ふと天を仰ぐ。一昨日の豪雨の明けゆえの快晴。青空だった。『…』一度サンドイッチをしまうと装束を解き、機器も『匣』に仕舞った。 39

2013-01-10 21:12:23
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小鳥の鳴き声に耳を澄ませ、風の音を聴きながら、ゆっくりと食べ始める。多彩な食感と色が目と口に嬉しく、合間に飲む水筒の紅茶が温かかった。時間に余裕があり距離も近い。急ぐことは無い。軽くなった荷物を枕にする。「ハァー…フゥー…」深呼吸。そして青空……笑顔。 40

2013-01-10 21:15:14
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―『M文書』と■■が告げた、あの葬室からの激励。そして課せられた■■への責任。『重い』という言葉も軽くなる程の重責。それを殺意と憎悪に変えてみたところで、所詮背負いきれるものでは無い。背負いきれぬ重荷ならば、少しづつ確実に、永き時を掛けてでも運んでいくしかない――― 41

2013-01-10 21:27:39
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―――――――――――― 42

2013-01-10 21:28:07
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―「……何か言い残すことは?」「…すきにしてください」 43

2013-01-10 21:33:44
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― 星咲学園1-A教室。2013年4月12(金)11:35。 二日連続で遅刻した浅空勇矢が入ってきたのは、三時限目、またしても現文の授業終了の5分前だった。 44

2013-01-10 21:39:55
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「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」終わり ← →4話「護るべき笑顔は~ノー・ティアー!ノー・アゲイン!」に続く。

2013-01-10 21:41:07
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―次回予告:「私と付き合って……恋人になってください!」「1人で勝てると思われてるのかしら?私達」「怖いかクソッタレ。当然だぜ。元グリーンベレー括弧HNの俺に勝てるもんか」「3対1は卑怯だろ!」『ドーモ、ボールドキャンサーデス』『ドーモ、ネクストステージデス』「グワーッ!?」

2013-01-10 21:42:33
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「ガールズトークという奴らしいな…分からん」「女はおっぱいじゃないわ…体よ!」「今週中に全部完成させる…だから日曜は空けておけ」「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」「浅空勇矢、貴方を殺します」「ドーモ、ナイトリーヴス=サン。ならばその脚か薄胸でお願いしまグワーッ!?」

2013-01-10 21:52:10
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『イイイヤーッ!』「本当の正体を見せる時が来たようだ…」『屍体と土塊で出来た世界一不味い多層包菓子<ミルクレープ>の原材料・主成分に成りたくなければ仲間の場所を吐け!』「少女!これを使え!」「キス…して下さい」「梢!こっちだ!」「ホワイト!弟の仇ぃ!」『カミカゼグワーッ!?』

2013-01-10 21:55:55
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「もうあの子の笑顔は奪わせない…そしてお前らに次はやらない!…ホワイトアウト!」 →4話「護るべき笑顔は~ノー・ティアー!ノー・アゲイン!」

2013-01-10 21:58:33