「死の淵を見た男(吉田昌郎と福島第一原発の500日)」読書録

震災直後の夏に個人的に東電職員のご家族の方と話す機会があり、原子力保安院は全員逃げたが、吉田所長以下の東電職員は現場に残って懸命の復旧作業をしていた事を聞いていました。そして今年に入って偶然この本を見かけたため、当時の現場の状況を知りたくて購入しました。 吉田所長へのインタビューをもとに書かれた書籍ですが、内容が膨大すぎるので原子炉への注水と冷却に話を絞ってまとめました。マニュアルが全く役に立たない極限状態の中で、現場職員のとっさの機転や判断に東日本全体が救われた事がよく分かります。チェルノブイリ×10になるのか、チェルノブイリ×1/10になるのかは、まさに紙一重だったようです。
48
スカルライド @skull_ride

引き込まれるように購入。「死の淵を見た男(吉田昌郎と福島第一原発の500日)」原子炉への注水と冷却に話を絞って連ツイしてまとめます。 http://t.co/9qfceKG74s

2013-03-18 12:17:05
拡大

SBO(Station Black Out)

スカルライド @skull_ride

(1)「全電源がダメになったということは、原因がなんであれ、電源がまったく使えない前提でものを考えなければいけなくなったということです。これはもう、今まで考えていたこととは全然違うステージに入ったわけです」

2013-03-18 12:27:22
スカルライド @skull_ride

(2)この時、吉田は不思議なほど冷静だった。これまでトラブル対応で、本店で勤務している時も、現場にいるときも、さまざまな場面で緊急対応をしてきた経験が吉田にはあった。いつの間にか吉田には、何かが起こった時に「最悪の事態」を想定する習性が身についていた。

2013-03-18 12:27:35
スカルライド @skull_ride

(3)吉田の頭の中は、この時点ですでに「チェルノブイリ事故」の事態に発展する可能性まで突き抜けていた。すなわち「東日本はえらいことになる」という思いである。

2013-03-18 12:27:47
スカルライド @skull_ride

(4)「頭の中はパニック状態になっているはずなんです。不思議なんですが、チェルノブイリ状態になるかもしれないと思いながらも、もう一方で冷静になんとかせんといかんな、と対策を考えていました。やらなければならないことが頭の中で回転し始めました」

2013-03-18 12:28:00
スカルライド @skull_ride

(5)電源さえあれば安全システムは作動し、原子炉を安全に停止させることができる。外部電源、内部電源がすべて失われた状況では、電源車を使って電気を送るしかない。吉田は本店への電源車の手配を要請するとともに、復旧班へ指示している。「とりあえず復旧班でできることを考えてくれ」

2013-03-18 12:28:11
スカルライド @skull_ride

(6)吉田はそんなことを指示しながら「次」のことを考えていた。消防車の手配である。原子炉を電気で冷やすことができなければ、直接水で冷やすしかない。水なら海にいくらでもある。ではその水をどうやって運ぶか。

2013-03-18 12:28:22
スカルライド @skull_ride

(7)「とにかく水で冷やす他はない。私は水をプラントに入れるには消防車しかないと思いました。海からの距離がありすぎて消防車のホースが届かなければ消防車をつなげばいいじゃないかと、そう考えました」多くの専門家が驚くのはこの早い段階で吉田が消防車の手配まで行わせていたことである。

2013-03-18 12:28:34
スカルライド @skull_ride

(8)「私はずっと原子力の補修とか発電の運営をしてきたもんですから、山ほどトラブル処理をさせられてきたんですよね。ないものねだりしても、ないものはないんで仕方がない。その中でやるしかないという、一種の開き直りみたいなのができていたと思います」

2013-03-18 12:28:46
スカルライド @skull_ride

(9)しかし三台あった福島第一原発の消防車は津波のため動けなくなり、稼働可能なのはたまたま高台にあった一台しかなかった。吉田はそれが分かった午後五時過ぎには消防車の手配を要請している。

2013-03-18 12:28:57
スカルライド @skull_ride

(10)ただちに自衛隊に伝えられ、福島第一原発に消防車が向かうことになるのだが、吉田が手配した消防車の存在が事故の拡大をぎりぎりで止めることになることを、この時点では誰も知らない。

2013-03-18 12:29:09

ラインをつくれ

スカルライド @skull_ride

(11)平野にはとにかく「水を入れなくてはならない」ということだけは分かった。冷やすための電源がない。それがすべて使えないとなれば、電源を必要としない消火用のポンプを流用して水を「入れる」しかない。

2013-03-18 12:29:21
スカルライド @skull_ride

(12)「私はもうその事しか思い浮かばなかったですね。そのためには消火ポンプで原子炉に水を入れるライン作りをしなくちゃいけない。私が最初に思い浮かんだのは給水系から消火ポンプで水を入れるラインです。それでまず給水系のバルブを開けないと水を入れられないという話をしたんです」

2013-03-18 12:29:33
スカルライド @skull_ride

(13)「その後アクシデントマネージメント設備のラインもあるという事に気が付きまして、そっちのラインナップにも夕方から入っていく。最初にその消火ポンプが健全かどうかを確認していこうと。もう電源を使わないで水をいれるのはこういう方法しかないんで、これはどうかと伊沢君に伝えました」

2013-03-18 12:29:45
スカルライド @skull_ride

(14)午後四時五十五分、すなわち大津波襲来から一時間十五分後には、現場の状況を確認するために最初の部隊が原子炉建屋に向かっている。この時点では放射線用の防護マスクはまだつけていない。しかし第一陣は原子炉建屋に突入する前に引き返した。

2013-03-18 12:29:56
スカルライド @skull_ride

(15)「原子炉建屋に入るところは二重扉になっていて外と遮断されています。一つを開けて中に入り、それを完全に閉めないともう一方の扉が開かない形になっている。でももうその扉の前に来た段階で、持っていったGM管式サーベイメーターが振り切れてしまったんです」

2013-03-18 12:30:08
スカルライド @skull_ride

(16)そして二回目の部隊が向かったのは午後五時十九分である。このとき平野は自身がその作業に入っている。「もう私服は脱いでB服と呼ぶ青いつなぎの作業着に着替えていきました。この段階では放射性物質が直接皮膚に付くのを防ぐためのタイベックはまだ着ていなかったです。三人で行きました」

2013-03-18 12:30:19
スカルライド @skull_ride

(17)この作業がこれからの注水作業に決定的な役割を果たすことになるのである。真っ暗な中で頼りは懐中電灯だけである。言葉にこそ出さないが、いつ津波が来るかわからない。恐怖がなかったといえば嘘になるだろう。

2013-03-18 12:30:31
スカルライド @skull_ride

(18)やがて三人は消火ポンプ室に辿り着いた。五メートル四方ほどの部屋である。この中にコンクリートの架台に載ったエンジンとポンプがあった。エンジンを起動するセルモーターの電源はポンプの横にある小型バッテリーだ。外の電源はいらない。

2013-03-18 12:30:41
スカルライド @skull_ride

(19)「中に入って消火ポンプの操作盤にあるスイッチを入れました。動くことを確認してその後で止めました。動かし続けると燃料を使っちゃいますからね。まだ炉に入れるラインができてないのでその時点で止めたんです。動くことは確認できたのでラインができたらまた起動させることにしました」

2013-03-18 12:31:41

覚悟を決めさせた一文字ハンドル

スカルライド @skull_ride

(20)戻ってきた平野たちが水流のラインを作るために動き始めるのは間もなくである。午後六時半を過ぎ、今度は実際に原子炉にポンプから水を入れるためのラインを作りに入った。

2013-03-18 12:34:37
スカルライド @skull_ride

(21)「全部で五人で向かいました。手で開けなくてはいけないバルブは五か所ほどありました。この時はもうタイベックに全面マスクの状態です。線量はまだそんなに上がっていなかったと思いますが、念のために着けていきました」

2013-03-18 12:34:50
1 ・・ 5 次へ