抗癌剤の意義と患者の選択

緩和ケア・腫瘍内科医の西先生(@tonishi0610)による抗癌剤のお話。
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本題

西智弘@川崎医師 @tonishi0610

先日、とある番組で、ある患者さんの闘病記で、癌による体調不良、そこに「抗がん剤の投与が多大な苦痛を加えたのです!」→それでその後、癌が小さくなり体調がよくなったのは「奇跡」と報じている例が。「予後3ヶ月と言われたのが本人の気力で1年間生き抜きました!」と。抗がん剤はあくまで悪者。

2013-04-10 21:10:57
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

抗がん剤の効果で体調が回復、予後も1年に延長した、というのが本当のところだと思うのですが、そのように報道しないのは恣意的なものを感じます。ただ、「予後3ヶ月です」とか、強い痛みで苦しむ様子が映されていたので、支持療法が弱い病院であったのかもしれませんが。

2013-04-10 21:13:18
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

支持療法をしっかりして、早期から緩和ケアも関わって行う抗がん剤治療は、報道では「地獄の苦しみに耐えて・・・」と言っていましたが、実際には外来通院で治療しながら仕事に通われている方も多いです。もちろん、副作用の感じ方は人それぞれですし、強く出た方には調整が必要なこともありますが。

2013-04-10 21:16:31
takashi_md @takashi_md

@tonishi0610 こんばんは。これは「多大な苦痛を加えた」時点で抗がん剤を中止したのですか?

2013-04-10 21:15:18
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

@takashi_md 報道では、「ずっと抗がん剤治療を続けた」ということになっていました。なので「続けられるくらいの内容だった」とも言えます。なので報道の偏向を感じるわけです。

2013-04-10 21:17:41
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

そもそも、そんな「地獄のような苦しみ」の治療を、どんな方でも1年間も続けることはできません。必ずどこかで調整が入っています。

2013-04-10 21:19:22
takashi_md @takashi_md

@tonishi0610 ありがとうございます。抗がん剤を中止しての結果ならまだわかりますが、継続していたのにその治療効果(の可能性)とは表現せず「奇跡」ですか。最期まで戦った患者さんにも失礼ですよね。

2013-04-10 21:25:37
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

書店ではK医師の「抗がん剤はしてはいけない」本がベストセラーですが、あまり抗がん剤を悪者にしすぎるのはいかがなものと思う。もう少し、メリットとデメリットを整理して、中立的に伝えるべきではないか。ただ、センセーショナルに書いた方が「売れる」だろうから、仕方ないかもですが。

2013-04-10 21:21:22
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

抗がん剤が生活の質を下げない、とは言いません。多かれ少なかれ、やはり多少生活の質は下がります。ただ、そのために生存の期間が延びる、というのは事実です(統計的に)。抗がん剤をしないメリットは、少なくとも抗がん剤による生活の質低下は避けられることです。

2013-04-10 21:23:07
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

なので、多少生活の質を下げても、長く生きる確率を増すことに意義を感じる方は、抗がん剤治療を選択するべきと思うし、そこに価値を見いださないのであれば、抗がん剤をしない、という生き方もあると思う。私達、腫瘍内科医は必ず、この点について説明しています。

2013-04-10 21:25:13
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

それを「生活の質を下げる」ことだけを取り上げて、ことさらに悪者扱いするのは?私達も、いいことばかり言っているのではないです。また、先に述べたように、既に癌による苦痛症状がある場合には、抗がん剤で癌が小さくなることで、症状が緩和して楽になることもあります。

2013-04-10 21:27:03
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

実際、口から食事が摂れずベッド上で寝たきりに近かった患者さんが、抗がん剤投与で元気になり、食事を食べ、歩いて退院する例もあります(癌種によりますが)。そういう事実を全て考慮に入れて、抗がん剤治療を勧めたり緩和に専念することを勧めたりしているのが腫瘍内科医です。

2013-04-10 21:29:06
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

実際、抗がん剤で治るはずだった方が、K医師の本を読んだことで「治療を中断」し、その後手のつけられない状態になった例も多数診ています。それで、本人が納得しているなら「それも本人の生き方」でしょうが、「こんなはずじゃなかった」という方も多数おり、これはもうどちらが悪なんでしょうか。

2013-04-10 21:31:04
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

実際、抗がん剤で治るはずだった方が、K医師の本を読んだことで「治療を中断」し、その後手のつけられない状態になった例も多数診ています。それで、本人が納得しているなら「それも本人の生き方」でしょうが、「こんなはずじゃなかった」という方も多数おり、これはもうどちらが悪なんでしょうか。

2013-04-10 21:31:04
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

抗がん剤をする選択も、しない選択も、その人の人生。私達はその選択をした意志を尊重して、どちらを選んでも最後までその方に寄り添いたいと思っていますが、その選択をした結果、できれば後悔しないでほしいと思うのです。

2013-04-10 21:33:14
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

抗がん剤をする選択も、しない選択も、その人の人生。私達はその選択をした意志を尊重して、どちらを選んでも最後までその方に寄り添いたいと思っていますが、その選択をした結果、できれば後悔しないでほしいと思うのです。

2013-04-10 21:33:14
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

K医師は「何もしない方が長生きする」と言っていますが、その根拠は希薄です。患者さんがそれを真に受けて「私は死にたくないから抗がん剤は止める」として、本当に後悔しないか?

2013-04-10 21:37:19
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

本を書いた本人は、そのような患者さんを最後まで診ないから無責任でいられますが、最後まで診ている我々の考え方に口を出すのは、本当にこちらの気力が削がれます。それとも、それも「本人がきめたことだ」とか言うのでしょうか。

2013-04-10 21:40:48

@cho_shiさんとのお話

たっちー @cho_shi

@tonishi0610 こんばんは。自分は乳がんですが例の本で転移か再発の乳がんの方で治療せずそのままにして皮膚までグズグズになっていたが痛みもなく亡くなっていかれたとありました。 あくまでその方はは痛みがない病巣の広がりだったのかもしれないと自分は読み取りましたが(続く

2013-04-10 21:34:01
たっちー @cho_shi

@tonishi0610 だからといってあの先生が仰るように抗がん剤が不要というのは違うのではと思いました。 しかし、一般的にはあの一例だけで乳がんも放ったらかしでいいのかと感じられる方もおられるかと思うと何とも言えない気持ちになります。(続く

2013-04-10 21:36:43
たっちー @cho_shi

@tonishi0610 かくいう自分も苦しい思いはしましたが複数種あった病巣のひとつは病理的にも奏功し(残ったのは効きにくいタイプ)、再発の知人も化学療法によって復職予定です。抗がん剤も必要な治療であったと感じます。万事がひとつのことで片付かないと思いました。(長文すみません

2013-04-10 21:42:28
西智弘@川崎医師 @tonishi0610

@cho_shi おそらくは「医者が病気を作っている」といった考えが基本にあるのかと思います。確かに、そういった側面は否めませんが、その考えをさも常識であるかのように吹聴しないでほしいのです。「こういう考えもあるよ」くらいで。

2013-04-10 21:45:25
たっちー @cho_shi

@tonishi0610 そうですね。 トータルして考え方のひとつとしてはありかもしれませんが、あれだけが正しいと言い切る姿勢というのはいかがかと思います。 やはり西先生の仰るように当人が何を良しとし選択するかが重要だと感じております。お返事頂いてありがとうございました。

2013-04-10 21:52:32