友野詳氏の「シャハルサーガ 第3部」 ストーリー版

友野詳(@gmtomono、連載は@syahalsaga)氏によるルナル世界を舞台にした新作Twitterノベル「シャハルサーガ 第3部」のまとめです。 こちらは「採用された物語」だけを纏めて、ストーリーを追いやすくする事を目的としたリストです。 「採用されなかった選択肢」なども含めて全てを読まれたい方は、 http://togetter.com/li/488909 をご覧下さい。 第2部 全部入り:http://togetter.com/li/460078 続きを読む
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シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

その二人は「青く輝くいただきを持つ山」のある島から来たと言っていたそうだ。年上のほうは、爪が青く染まっていて、それは島の輝きのゆえだとも口にしていたらしい。 #シャハル3 23

2013-04-16 22:29:29
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

船をおりて隠れられる平穏な島を見つけるよりも「青き輝きの山」を探すべきなのか? それは、アリクたちにとって、新たな希望ないなるのか、それとも完全な絶望をもたらすのか。ともあれ、もう少し、船に乗っていよう……と思った。その迷いが、二人をまたもや翻弄する。 #シャハル3 23

2013-04-16 22:30:55
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

#SSG選択 だが、夢見蓮の島を出てすぐ、すさまじい嵐が、船を襲った。ひときわ巨大な波が、船を襲った時、アリクがのばした手は、わずかにユーディアに届……かない?! #シャハル3 24‐B

2013-04-16 22:34:15

第3部 第2夜

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

風がアリクを押し留め、波がユーディアを連れ去る。海が彼女を呑みこむなら、いっそ己も共にと、アリクは深淵に飛びこむを厭わぬ覚悟をした。だが、そんなアリクを引き留めるように、風にあおられた帆綱が彼の胴体に巻きついた。ふりほどくうちに、ユーディアはどんどん遠ざかる。 #シャハル3 25

2013-04-24 22:04:29
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

船は大きく揺れ、甲板がほとんど垂直にまで傾いた。船員たちが海にほうりだされてゆく。アリクが、帆綱から我が身を自由にした時、ついに船は、前後に引き裂かれた。もう、ユーディアに手は届かない。波とともに絶望が押し寄せた時、アリクの心臓が異様な力を湧きだせた。 #シャハル3 26

2013-04-24 22:04:56
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

闇がアリクを満たす。理不尽な現実への怒りが、彼の肉体を歪めてゆく。アリクの心臓は、既に失われている。代わりに埋め込まれた魔法の品が彼の命を維持しているが、ユーディアを失う絶望は、たやすく彼を魔物へ変貌させる。かろうじて船にしがみついていた船員たちが息を呑んだ。 #シャハル3 27

2013-04-24 22:05:14
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

けれど、ユーディアの絶叫が、アリクの理性を覚醒させた。暴風にも荒波にも、少女の想いをさえぎる力はなかったのだ。変貌しかけていた彼の肉体が、急速に戻ってゆく。だが、異形の力を借りずして、どうすればユーディアと共にいられるのか。このままでは、彼女は海に喰らわれる。 #シャハル3 29

2013-04-24 22:06:40
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

けれどその時、荒れ狂う風の中、忠実な友人が姿をあらわした。マガナックだ。船が引き裂かれて、船倉の檻を抜け出してきたのだ。その姿を見た瞬間に湧き上がった罪悪感が、アリクを完全に元に戻した。長年の友人が船の中に閉じこめられていることを、少年は失念していたのだ。 #シャハル3 30

2013-04-24 22:07:20
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「ルバ! アクダ! ユーディア!」こちらへ飛んでこようとしたマガナックを、アリクは制止した。あの強靭な羽は、ユーディア一人なら、きっと支えてくれる。マガナックのことを忘れていた自分に、救われる資格はない。けれど、ユーディアに、失われる理由はない。 #シャハル3 31

2013-04-24 22:08:12
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「アリクっっ!」 「大丈夫! すぐにまた会える!」 #シャハル3 32

2013-04-24 22:08:27
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

マガナックは、ユーディアをかかえた。ユーディアはアリクの名を叫び、必死で手をのばす。だが、そこで風の向きが変わった。マガナックの強靭な羽も、アリクに近づけない。暴風が、ユーディアとマガナックを遠くへ吹き飛ばしてしまう。 #シャハル3 33

2013-04-24 22:09:05
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

塩辛いしぶきが、アリクの顔をはげしく濡らす。痛いほどにぶつかってくる。目が開けていられなくなり、呼吸もできなくなった。マガナックが、ユーディアを救ってくれることを確信したいまは、あっさり気絶という救済に逃げこむことができた。 #シャハル3 34

2013-04-24 22:09:36
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

#SSG選択 「おうおう、気がついたか、小僧。生き延びたのは、俺たちだけぜ、くそ畜生」。目覚めたアリクを、いかついヒゲ面がのぞきこんでいた。悪党船長のモッガンだ。「けど、まだ生き延びれたとは決まってねえぞ」。砂浜の二人を、巨大な蟹が囲んでいる。 #シャハル3 35‐A

2013-04-24 22:10:29

第3部 第3夜

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

めぐりあった少女ユーディアと、おぞましい運命を分け合った砂漠の少年アリク。ふたりは、追っ手から逃れて、海へと出た。しかし、離れぬと誓った二人を、嵐が引き裂いた。難破したアリクは、砂浜に流れ着いたが、目覚めた時、そこにいたのはヒゲの極悪面の船長だった。 #シャハルサーガ雑記

2013-04-27 22:25:30
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

アリクは立ち上がった。頭の芯がくらくらしていたが、それも徐々に消えていく。足もとは白い砂だ。砂浜である。アリクが育った砂漠と、感触は近い。こういう場所で走るのなら得意だ。だが、周囲はすっかり囲まれていた。 #シャハル3 37

2013-04-27 22:26:02
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

しゃきしゃきしゃきしゃきしゃきしゃき。牛ほども巨大な蟹が五匹。アリクとモッガン船長の前後左右をとり囲み、ハサミを鳴らしている。「こいつらぁ、人を食うぞ、坊主」船長が唸るように言ったが、言われるまでもなかった。 #シャハル3 38

2013-04-27 22:26:47
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

船長だって『言わずもがな』だとはわかっている。だが、信仰ゆえに言葉を絶やすわけにいかないのだ。「おい、小僧。どうする? どうすればいい? さてどうしようかな」と、つぶやき続けている。『陸の上ではざわめきを絶やすなかれ』というのが、彼の信じる異端派の教義なのだ。 #シャハル3 39

2013-04-27 22:28:11
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

船長がぶつぶつ言う声と、蟹がハサミを鳴らす音。ふたつが重なって、アリクの神経をさかなでした。だが、高ぶる神経を抑えて、冷静に考える。せっかく嵐を生き延びたのだ。ユーディアに再会するまで絶対に死ねない。だが、五匹の巨大蟹は、正面から戦って勝てる相手ではない。 #シャハル3 40

2013-04-27 22:28:47
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「こっちは素手だ。せめて武器がありゃあな。ううむ、ぼうずを囮にするってのはどうだ? だめだな。群がるのは三匹までだ。一対一なら勝てるが、二対一はな」「船長、全部、だれもれですよ?」「うるせえ。おまえ、餌にされたくなきゃ、何か考えろ」 #シャハル3 41

2013-04-27 22:29:14
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「そんなこと言われても。船長、リャノの加護はないんですか」双子の月の神々は、信仰を捧げれば、魔法という形で守りを授けてくれる。「やっつけた後に、鍋にするのなら得意だがな」「……それ、魔法じゃない加護ですよね」 #シャハル3 42

2013-04-27 22:29:30
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

そんなやりとりをかわしているうちに、アリクの目は、砂浜に散らばる荷物の中から、あるものを見つけていた。武器だ。「船長……素手でも一対一ならなんとかなるんですよね?」「まあな」モッガンは、丸太ほども太い腕を示してみせた。巨大蟹の足もひきちぎれそうだ。 #シャハル3 43

2013-04-27 22:30:33
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「じゃあ、武器があれば?」「二対一でも勝ってやらあ」それを聞いて、アリクは決断した。「身をかわすのは得意なんです。手早く解体してください……よ!」アリクは砂を蹴った。歩きやすい地面と変わらない動きだ。蟹の一匹の足もとに飛びこんだ。 #シャハル3 44

2013-04-27 22:31:04
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