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友野詳氏の「シャハルサーガ 第3部」 ストーリー版

友野詳(@gmtomono、連載は@syahalsaga)氏によるルナル世界を舞台にした新作Twitterノベル「シャハルサーガ 第3部」のまとめです。 こちらは「採用された物語」だけを纏めて、ストーリーを追いやすくする事を目的としたリストです。 「採用されなかった選択肢」なども含めて全てを読まれたい方は、 http://togetter.com/li/488909 をご覧下さい。 第2部 全部入り:http://togetter.com/li/460078 続きを読む
書籍 文学 シャハルサーガ
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第3部 序夜
シャハルサーガ @syahalsaga
#SSG選択 「……海の彼方。……この島、なぜか知ってる気がする」と、ユーディアはつぶやいた。アリクと彼女は、下働きとして商船に乗りこみ、数日がすぎていた。そして訪れた島で、ユーディアを見て、ひとりの老女が驚愕した。「……あなたのその髪は?!」 #シャハル3 0‐B
第3部 第1夜
シャハルサーガ @syahalsaga
世界は、七つの月に導かれ、三つの大陸が存在している。曙のリアド、陽光のジャナストラ、そして黄昏のマーディール。なにゆえに、それぞれの異名がつけられたか、諸説あって定めるのは難しい。 #シャハル3 1
シャハルサーガ @syahalsaga
七つの月に導かれた大地において『黄昏』とは、落日すなわち衰退をのみ意味するわけではない。月こそは導きであり、加護であるのだから。黄昏とは昇月の時であり、すなわち再生と変化の時である。夜は安らぎの時であり、しかし同時に、猛々しき戦の時でもあるのだ。 #シャハル3 2
シャハルサーガ @syahalsaga
まさしく、マーディールは闘争の大陸でもある。ほかの大陸では、人間の国家が覇権を争う。だが、マーディールにおいては、月それぞれの民が、いずれが大陸を制するかを争っている。救いとなるのは、それが殺しあいではなく、いかに栄えるかを競いあう、そんな闘争であることだ。 #シャハル3 3
シャハルサーガ @syahalsaga
マーディールにおいて、双子の月を崇める人間の領域は、他の月に比べて、かなり狭い。大陸の南北をつなげる地峡砂漠。その南北を支配する双月の帝国のみが、国と呼ぶに足る。そのほかは、都市国家レベルで点在しているだけだ。 #シャハル3 4
シャハルサーガ @syahalsaga
双月帝国では、赤と青、双子の月の神々を双面一身の神として信仰する。彼らは、他大陸のごとく、神々を個別に崇める者たちを単神崇拝者と呼んで排除した。排除された者らは、二つの道をとった。地峡砂漠を放浪するか、あるいは砂漠東方の多島海でちりぢりに住むか、である。 #シャハル3 5
シャハルサーガ @syahalsaga
双子の月の八大神のうち、リャノとジェスタだけは、双月帝国で信仰されることが少なかった。法のガヤンと物語のシャストアは言葉の神であり、真実と虚偽を使い分けることは、難しくない。むろん、それをきわめるのはとてつもなく長い道のりになるが。 #シャハル3 6
シャハルサーガ @syahalsaga
空のサリカと風のアルリアナもまた、ともに崇めることは可能だ。ペローマの知恵とタマットの直感もまた、両立はできる。けれど、環境の神々である、ジェスタの大地と静けさ、リャノの海とざわめきを両立させるとなると、複雑怪奇な神学を学ばねばならず、戒律を守り通すのも難しい。 #シャハル3 7
シャハルサーガ @syahalsaga
そしてまた、ジェスタの守護領域である山はドワーフ族の領域だ。かくして、海だけが単神崇拝者に残された。海には、逃亡者を守る広さがあった。リャノを崇める者たちは、特徴ある島々の交易で、双月帝国に滅ぼされないだけの力を手に入れ、大陸にも〈港〉と呼ばれる拠点を築いた。 #シャハル3 8
シャハルサーガ @syahalsaga
砂漠の少年アリクと、運命に翻弄される少女ユーディアは、双月帝国という巨大な追っ手から身を隠すため、その〈港〉に逃げこんだ。そして、小さな交易船に、下働きとしてもぐりこんだ。盗品売買など、やりたくない汚れ仕事も手伝わねばならぬ船だったが、他に選択肢はなかった。 #シャハル3 9
シャハルサーガ @syahalsaga
そんないかがわしい仕事ばかりの船だからこそ、二人の素性も気にせず、簡単に乗せてくれた。船長のモッガンは、デキューラという島の出身で、単神崇拝者ではなく、双月教徒の異端派だった。海上では沈黙、陸上では饒舌という、奇妙な風習に従う、刺青だらけの男だ。 #シャハル3 10
シャハルサーガ @syahalsaga
船長が二人を雇ったのは、アリクの相棒である、巨大なカマキリに似た魔獣マガナックの戦闘力と労働力を評価したからだ。マガナックを従えられるのは、家族同然に暮す〈沙覇留〉族だけ。無頼な乗組員たちが、美しいユーディアに手を出さないのも、マガナックがいればこそだ。 #シャハル3 11
シャハルサーガ @syahalsaga
アリクたちは、いつまでもこの船に乗っているつもりはない。どこか平和で、そして人の来ない島を見つけて、静かに暮すことが願いだ。世間をろくに知らない十代の少年と少女には、人が多いところこそが、隠れ場所に向いているのだ、などということはわからない。 #シャハル3 12
シャハルサーガ @syahalsaga
だが、逃亡の疲れから回復すれば、自分たちにはまだ、多くの可能性があることは思い出すはずだ。それが若さなのだから。二人は、きっかけさえあれば、もう一度、希望をいだくことができるだろう。 #シャハル3 13
シャハルサーガ @syahalsaga
そして「きっかけ」は、船に乗りこんで、17日め、訪れた四つめの島で生じた。船員たちのひとりが、ユーディアの異貌の美しさに、ねばりつく視線を向けはじめた、そんな時期だった。 #シャハル3 14
シャハルサーガ @syahalsaga
その島には、麻薬を仕入れるために訪れた。島が丸ごと、夢見蓮と呼ばれる花の栽培場になっている。どこもかしこも、澄んだ水をたたえた池になっていた。ユーディアとアリクは、その島にある小さな居留地で、酒と食料を買いこむように言いつかった。 #シャハル3 15
シャハルサーガ @syahalsaga
「……この匂い。……知っているような気がするの」と、ユーディアは言った。夢見蓮は、魔法的な加工によって、さまざまな夢を見せる。手術にも使われる。ユーディアの体が、いまのように作り変えられた時に、嗅いだのかもしれないとアリクは思い、しかし口には出さなかった。 #シャハル3 16
シャハルサーガ @syahalsaga
ユーディアに、自分がふつうではないと思い出させたくはなかったからだ。けれど、彼女は、すぐにアリクの考えを悟り、そして否定した。 #シャハル3 17
シャハルサーガ @syahalsaga
「そうじゃないの……。花の匂いじゃない。なんていうか……島全体の匂い」と、ユーディアは言った。そして、彼女のその感じが何を意味していたのかは、アリクたちが、雑貨屋にたどりついた時に、明らかになった。 #シャハル3 18
シャハルサーガ @syahalsaga
「あんた……その髪、染めてないよね?」と、雑貨屋の老女が言った。ユーディアの髪は、赤銅色に、銀がひとふさ混じっている。めったにない色だ。まさか双月帝国の手配が回っているのかと、アリクは警戒した。だが、老女が続けて言ったのは、別の言葉だった。 #シャハル3 19
シャハルサーガ @syahalsaga
「お嬢ちゃん、大昔に、この島に来たことないかい?」。それは衝撃的な言葉だった。戸惑い、こわばってしまったユーディアに代わって、アリクが話は聞いた。だが、アリクも、どちらかといえば口下手だ。たどたどしい会話しかできなかった。 #シャハル3 20
シャハルサーガ @syahalsaga
十年前、五歳くらいの幼女と、その若すぎる母か年の離れた姉らしい女性が、この島を訪れた。女性は、驚異的な医術で、流行り病を癒してくれたのだという。その二人が、やはり赤銅色の髪をしていたという。 #シャハル3 21
シャハルサーガ @syahalsaga
「……わたし『こうなる前』があったの?」船に戻るまで、ユーディアは、ずっとアリクの手を握っていた。ふるえている。彼女は、アリクに出会う前、魔術研究施設に囚われていた頃の記憶しかないのだ。自分が、作られてまだ短い年月しかすごしていない存在だと信じていた。 #シャハル3 22
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