clear_wtさんの計測の話 郡山勉強会

2013年5月18日に開かれた計測の勉強会より 1、計測は目的を持って 2、校正したから誤差がないと思ってはいけない 3、機器の特性の理解を
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説明の前に、clear_wtさんと遠藤先生共通の話題なんですが、

γ線の測定器は、機器のセンサー部を通るγ線をカウントします。

単位時間内でカウントした数を、cpmなり、空気吸収線量率なり、1㎝線量当量なりに換算して表示します。

空気吸収線量率と1㎝線量当量は別の評価値なので、比率が
空気吸収線量率:1㎝線量当量=1:1.2 ぐらいの値になります。
(現在のCs137による実効線量率は空気吸収線量率とほぼ一緒ぐらい)

なので、自分のサーベイメータやモニタリングポストが何を表示しているかを確認が必要です。
(ほとんどの場合は、サーベイメータは1㎝線量当量を表示しています)

↑にはclear_wtさんから以下の注意が入りました。
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「1:1.2 ぐらいの値になります。」おおよそ間違っていないのですが,私の話の要点の一つは,エネルギー分布や測定器の特性によってそれが変わってしまう,ということなので,この時点でそれを出すとかえって理解を妨げる気がします.

「(現在のCs137による実効線量率は空気吸収線量率とほぼ一緒ぐらい)」  この部分は「係数1で換算しても過小評価しない」ということだと思います.それは,「係数が1である」とは異なります.
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でもきっと冒頭で読むのをやめてしまう人もいると思うので、あえてここに置いておきます(すいませんclear_wtさん)

とういことで講義開始「線量計の校正」についてです。

主催のclear_wtさんは,(放射線関係でない分野の)計測がご専門だそうです。

測るとは何か

測定:ある量を基準として用いる量と比較し、数値または符号を用いて表すこと。

計測:特定の目的をもって事物を量的に捉えるための方法手段を考案し、測定し、目的を達成させるもの。

←目的を意識することが大事  

JISとISOについて。
JISとは、日本工業規格のこと。国内の工業製品に関する項目を統一するために標準規格。(型式、形状、寸法、構造、装備、品質、等級、性能、耐久度、安全度、生産方法、設計方法、製図方法、単位、包装、試験、分析、鑑定、測定方法等々)事細かに規格化されています。
ISOとは、国際標準化機構です。(JISの国際版?)ISO規格があり、その規格の認可を得ることをISO認証取得といいます。
 サーベイメータ等々の計測器もおおむね(→「全て」から訂正)、こうした規格に則って製品化され、校正されています。

「計測用語」の規格は、JIS Z 8103 
原子力・放射線関係はJIS Z の4000番台だそうです.

clear_wtさんから
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これらの規格にそってつくられているものも多いですが,「全て」ではないです。
海外の製品/規格のことは詳しくありませんが,ISOを直接参照するのでなく,それらを元にした国内規格準拠のものが多いかもしれません.
また,ISOをJISの国際版という表現は微妙かと思います.標準化/規格化という意味では同じなので間違いではありませんが,表現として誤解されやすいかなと.
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どれが難しい?

1、サーベイメータで測る
2、食品をスペクトルメータで測る
3、人をWBCで測る

この3つのどれが難しいかという質問?

「真ん中の食品検査が一番測定しやすい。」と会場から答え
(食品検査は、スペクトルが得られる。条件を整えることができるーー食品を刻んで固定量の試料にできる。遮蔽が容易。)

clear_wtさんより
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線量計での測定は,スペクトルが見えない状態で(どのようなエネルギーのγ線が来ているか分からない状態で)一つの測定値を求めるので実は意外に難しい
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測定誤差の3つのタイプわけ

☆系統誤差(Systematic error) 
←測定結果にかたよりを与える原因によって生じる誤差
同一条件下での繰り返し測定ではいつでも同じ傾向がでます。
(条件が既知  例えばBG?)

←解決方法:校正します。

clear_wtさんより
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「(条件が既知  例えばBG)」とありますが,「条件が既知」かどうかは本質ではありません.再現性があるかどうかです.「例えばBG」も,BGは一定でないので例として不適切です.例としては,「機器内での変換係数の誤差」等が良いでしょう.
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☆偶然誤差(Random error)
←突き止められない原因によって起こり得る誤差、測定値のばらつきとなって現れる誤差、
←同一条件下でも、繰り返し測定時にばらつきが発生します。、
←一般的にばらつきはポアソン分布(正規分布)に従います
(放射線は確率的事象なので、この偶然誤差が必然的!!)

← 解決方法:統計処理をします(たくさんカウントして、ばらつきから可能性の高い範囲を決定)

clear_wtさんから
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ここは私の説明が悪かった部分ですね「(放射線に限らない)計測の一般論」として,偶然誤差はガウス分布に従う(近付く),という話をしましたが,放射線計測という意味では,現象そのものはポアソン分布であることを説明すべきでした.数が多くなるとポアソン分布はガウス分布(正規分布)に近付くので全くの間違いではありませんが,ミスリードでした.(なお,地の文にある,「ポアソン分布(正規分布)」というのは違います).
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☆過誤(Operator error、mistake)
←目盛りの読み間違いや、手順ミスのように人為的なミスで生じる誤差
(一度混入すると取り除くのが困難)

←解決方法:「3回測って1回切る。」(何でも3回は測る。そこで極端な値があれば、過誤の可能性が高い。 4回、5回と測らないのは、対費用効率を考えるためだそうです。)

↑clear_wtさんから
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「3回測って1回切る」も計測の一般論として,例えば操作ミス等の<現象に直接かかわる部分以外の>「過誤」に気づく方法として紹介したのですが,計測データの処理方法の一つと解釈された方もいたようで,もう少しその点を明確にした方が良かったと反省しています.
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