2013/05/21 松岡祐子氏講演内容まとめ@早稲田大学・大隈小講堂

自分用に取り急ぎ整理しました。 原作あとがき・ふくろう通信等で既出の説明はすべて省いています。
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Gustave Courbet @Sayolanthe

【早大松岡祐子氏講演】講義本体の内容、新情報(と思しきもの?)を中心に流していきます。タグは #wuicc_hp で。早大での質疑応答は前のツイートに掲載。当方ハリポタ原作あとがき、ふくろう通信は既読ですが、松岡氏の自伝等は未読なので既出の部分があるかもしれません。

2013-05-21 20:55:26
Gustave Courbet @Sayolanthe

(1)ハリポタの売れ方の特徴として、「大人も子供も男性の読者が多い」ことが挙げられる。通常児童書は女性読者の率が圧倒的に高いが、ハリポタは異なる。米国でハリポタを読んだことのある子供は計54%だが、うち男子57%、女子51%と特異な結果が出ている。 #wuicc_hp

2013-05-21 20:55:56
Gustave Courbet @Sayolanthe

(2)日本では愛読者カードで面白い結果が出ている。愛読者カードを送ってくる層はふつう全体の0.×%程度だが、ハリポタは2%(HBP時)。また男性は通常ほとんど愛読者カードを送らないが、ハリポタでは愛読者カード全体のうち15%が男性だった。 #wuicc_hp

2013-05-21 20:57:00
Gustave Courbet @Sayolanthe

(3)また性差を問わぬ人気もさることながら、ハリポタの読者の年齢層の広さも驚異的。HBP出版後に老人ホームを訪問した際、後期高齢者の方に「早く七巻を出してほしい、間に合わなくなるかもしれないから」と言われたとのこと(会場笑) #wuicc_hp

2013-05-21 20:57:36
Gustave Courbet @Sayolanthe

(4)【リリー・ペチュニアの姉妹表記問題】当初PSで「リリー妹、ペチュニア姉」としたのは、「妹の方がかわいくていい子/姉はあまり美人ではない」という児童書の伝統に則った結果。その後出版社のパーティでローリング氏本人が「リリー姉だけど、どっちでもいいわよ」→ #wuicc_hp

2013-05-21 20:58:04
Gustave Courbet @Sayolanthe

(5)→と発言したことで慌てて訂正。ところが七巻でリリーが妹であることが明らかになり、女史の代理人に確認したところ「リリー妹だが、今更直せないので姉で通してくれ」とのお言葉。しかしさすがにそうするわけにもいかず、日本語版ではぼかした形をとった。 #wuicc_hp

2013-05-21 20:58:39
Gustave Courbet @Sayolanthe

(6)【各巻のタイトル】タイトルだけ公開された状態で、単語の意味を推測した上で邦題をつける必要があったため非常に難しかった。7巻の"Hallows"は当初"Saint(聖人)"であるという記事が出回ったため、それにならい当初は『聖人』とした。→ #wuicc_hp

2013-05-21 20:59:06
Gustave Courbet @Sayolanthe

(7)→だが、その後検索をかけ「アイルランドか北欧神話に伝わる『3つか7つの秘宝』がHallowsだろう」という結論に至り『死の秘宝』と変更した。当たってよかった(会場笑) #wuicc_hp

2013-05-21 20:59:25
Gustave Courbet @Sayolanthe

(8)【本文の訳出について】訳すのが大変だった本編中の言葉遊びは、おもに『頭韻』と『人称』。『頭韻』で一番頑張った箇所はロックハートの本の数々。原作の意味通り訳するのは不可能なので、固有名詞に「形容詞」を組み合わせて韻を踏んだ。→ #wuicc_hp

2013-05-21 21:00:00
Gustave Courbet @Sayolanthe

(9)『人称』で難しかったのはスネイプ。普段の「我輩」は「こういうキャラは威張っていないと」という思いから。ただしダンブルドアと本音で話すときには「私」、そしてラストに正体を現すシーンでは「…」と変化する。ラストの一言には万感の思いを込めたつもり。→ #wuicc_hp

2013-05-21 21:00:26
Gustave Courbet @Sayolanthe

(10)→GoF~のヴォルデモートの「俺様」という一人称は、復活のシーンを読んで自然と浮かんできた。二人称ではお互いの呼称にも気を配る必要があった。三人称は「彼」「彼女」という訳は極力避けた(いかにも翻訳という感じが出てしまうため)。 #wuicc_hp

2013-05-21 21:01:11
Gustave Courbet @Sayolanthe

(11)キャラクターの語調も気を配った。ハリーは当初自信のなさそうな口調→だんだん自信がついてくる感じに。ハグリッドの「北の方の優しい訛り(ローリング氏曰く)」は福島弁を取り入れた。スタンのコックニー訛りは江戸、築地のことばを参考に。#wuicc_hp

2013-05-21 21:01:58
Gustave Courbet @Sayolanthe

(12)とはいえ、最も難しいのは基本的な単語だった。単純な動詞、副詞ほど多様な意味を有するため、訳するのが困難だった。差別用語なども極力配慮したが、使わざるを得ない場所もちらほら。日英間のカルチャーギャップについては友人/スタッフに助けられた。#wuicc_hp

2013-05-21 21:02:23
Gustave Courbet @Sayolanthe

(13)結論、『翻訳は孤独な障害物競争である』。しっかりと原書を読みこんでから取組み、同じ文章を五回ほど訳しながら訂正することを心掛けていた。辞書は英英辞典・ラテン語辞典・翻訳英和辞典などを参考にした。(おわり) #wuicc_hp

2013-05-21 21:02:50
Gustave Courbet @Sayolanthe

2009年に松岡氏主催で、ハリポタの各国語ごとの翻訳者が集まる翻訳者会議がパリにて開催されていたそうです。それぞれの言語ごとの翻訳の苦労について語り合ったそうですが、強烈だったのは古代ギリシア語訳者の方の「古代ギリシアには汽車がない……」の一言。吹きました。

2013-05-21 21:09:41
Gustave Courbet @Sayolanthe

以上です!ツイートした内容はほんの一部です。講演中は他にも、賢者の石を翻訳するまでの秘話や、それぞれの言葉遊び(頭韻)などについて細かい説明がなされていました。が、恐らく本を読み込んでいる方々にとっては今更だと思うのでざっくり省略しました。 #wuicc_hp

2013-05-21 21:07:29
Gustave Courbet @Sayolanthe

質疑応答Q1:DHのスネイプvsマクゴナガルの場面で「ダガー」を「手裏剣」と訳した意図は? A1:手で投げるものなので誤訳ではないと思う……(ベラトリックスがドビーに投げた「短剣」のことを指しての答えか?混乱有) #wuicc_hp

2013-05-21 17:38:18
Gustave Courbet @Sayolanthe

すみません、最初の質疑応答の「Dagger」の件、再び訂正。原書と和訳照らし合わせつつ、ちょっと確認取りました。

2013-05-22 00:03:33
Gustave Courbet @Sayolanthe

原書DH-30でマクゴナガルが使った魔法は"(smoke) ... solidified in seconds to become a swarm of pursuing daggers;"なので、「投げていた」とは取るのはキツい。おそらく松岡女史側に誤解有。

2013-05-22 00:04:02
Gustave Courbet @Sayolanthe

先程の答えはマクゴナガルのDaggerではなく、DH-23でベラトリックスがドビーに投げた「Silver Knife/小刀」とを指していると思われる。 女史自身「あれ?マクゴナガル先生のシーンで手裏剣って訳したかしら?覚えてない…」と仰っていたので、そのあたり曖昧だった模様。

2013-05-22 00:05:26
Gustave Courbet @Sayolanthe

質疑応答Q2:WWWの中でほしい悪戯グッズは?どんなグッズ使いたい? A2:グッズというより「姿くらまし」「姿現し」できるようになりたいです。巻が進むにつれ好きなものは変化していくものだが、やっぱり「姿くらまし」が好き。 #wuicc_hp

2013-05-21 17:40:20
Gustave Courbet @Sayolanthe

質疑応答Q3:スネイプの一人称/プリンスの物語(DH32-33)は訳すのに時間かかった? A3:訳し終わるのがもったいなかった。非常に楽しかったし訳し終わった時がっかりした。 #wuicc_hp

2013-05-21 17:42:16
Gustave Courbet @Sayolanthe

質疑応答Q4:人名や韻を訳しきれないとき/原作にない情報を付け加えるときの信念は? A4:なるべく過不足なく訳するのが基本。韻文などは、口にのせた際自然になるよう気を付けた。 #wuicc_hp

2013-05-21 17:44:46
Gustave Courbet @Sayolanthe

質疑応答Q5:コンピューターによる翻訳の可能性についてどう思う? A5:人間の情感がふくまれるものは機械では処理しきれない。文学作品の翻訳はやはり難しいのでは。 #wuicc_hp

2013-05-21 17:47:01
Gustave Courbet @Sayolanthe

質疑応答Q6:全七巻の翻訳で特に苦労した章/巻は? A6:第一巻第一章がもっとも難しかった。文芸翻訳自体初めてで、財政的にも後がなかったため。失敗した場合ローリング女史に申し訳が立たない……などなどの理由。つかみは難しい。 #wuicc_hp

2013-05-21 17:49:10