PM1406で塩を測った時のセシウム誤検出の可能性について

★元の情報は誤検出ですらなくK-40の濃度だったようです。K-40が802Bq/kgで、セシウムは不検出。 PM1406で塩を測った時のセシウム誤検出の可能性について自分のツイートを中心にまとめました。販売している「たろうまる」社に見解をもとめたところすぐに回答をいただけ、公表の許可も得たので追加してあります。 PM1406は食品と水の測定の特化した機械としては悪くないし、日本で扱っている「たろうまる」社はサポートもよく、ユーザーの要望が反映されて機能が追加されたり、検出についてもファームウェアが更新されたりしているので悪くないと思いますが、塩はそもそも正しく測れないようです。これはPM1406だけの事情ではなく、原理的にそうなってしまうようです。(http://www.taroumaru.jp/guidebook/pm1406/25続きを読む
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たろうまるさんからの回答(ツイートしようと思ったけど長かったので)

■こちらの状況、把握しています。PM1406 の測定結果が、カリウムによって変わる、という現象は、私も本社メーカーも把握しています。

■原因は、メーカーでも把握していますが、 これが特別に問題とは、考えていません。その理由は、ちょっと長くなるのですが、カリウムが多い物体を測定すれば、ほとんどの測定器はセシウムの放射線量が高くなる普通の現象だから、、というのが本社メーカーの見解です。

■以下、私の理解の範囲での解説ですが、カリウムに限らず、セシウムもそうですが、すべての放射線は、決められた「全エネルギー光電ピーク」を持っています。飛んできた放射線が、検出器に当たって止まる場合に出るスペクトルのピークです。たとえば、セシウム137 の場合、662keV です。

PM1406 の場合、Cs137,Cs137 の両方をカウントするために、400-800 keV の広い範囲をまるごとセシウムからの放射線として見ています。シングルチャネルという形式です。

これに加えて、セシウム137 の場合、662keV よりも低いエネルギー範囲に、「コンプトン散乱」と「後方散乱」と「特性X線」ピークが出ます。

こちらの図のように、662keV 以下に、だらだらと、スペクトルの形が、出ているかと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Caesium-137_Gamma_Ray_Spectrum-de.svg

同じ事は、カリウム40の放射線でも発生しています。カリウムの全エネルギー光電ピークは、1500 keV 程度ですが、このエネルギーからの「コンプトン散乱」が、セシウムのエネルギー範囲(400-800keV)に覆い被さってきます。そのため、カリウムが多いと、セシウムの範囲(400-800keV) のカウント数を持ち上げて、高くします。

これがカリウムが多い物体を測定すると、セシウムと誤判定されるという原因になっています。メーカーでも、この事は、設計段階と、発売前から把握しています。

たとえば、厚生労働省のスクリーニング法に関する文章が、こちらにありますが、この中でも、同様のことが述べられています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000246ev-att/2r985200000246iu.pdf

「他核種の影響の補正
食品試料中には K-40 が含まれていることがあり、コンプトン効果により測定範囲のカウントを増加させ、正のバイアスが生じる。スクリーニング法では正のバイアスを許容しているので、これを補正する必要はない。補正を行う場合は、測定下限値の確認と、補正が過大となり負のバイアスを生じないことの確認が必要であるので、ソフトウェア開発者に確認する。」

厚生労働省の立場でいえば、カリウムが含まれている測定物は、コンプトン散乱の効果で、セシウムの放射線を高くしてしまうが、一切、これを補正せず、セシウムの放射線が、見かけ上、高いままで、放置してよい、という内容になっています。

Polimaster では、「食品」全般に関して、国際的な論文を調査して、食品に限って、カリウムの最大値を見積もって、その分、セシウムのカウントが小さくなるような補正を入れています。ただし入れすぎれば、セシウムのカウントが小さくなりすぎるため、この補正は、最小にとどめる必要があります。

そうして、PM1406 は、食品・飲料水に限って利用できる測定器として、開発されました。そのため、この測定器で、塩、焼却灰など、カリウムが多量に含まれるものを測定すると、より高エネルギーを出す放射性金属の影響によって、セシウムの放射線が高くなります。(セシウムが入っていなくても。。)

ですが、これは、放射線の性質上、普通のことです。コンプトン散乱がある限り、カリウムやチタンなど、高エネルギーの放射性物質があるかぎりは普通にセシウムの放射線は、高くなります。シングルチャネル方式でなくても、高くなります。

PM1406 は、食品に対してのカリウム補正しか入れていないため、「塩」「焼却灰」は、測定することができません。たしかに、「塩」は、食品ですが、塩だけを、そのまま、何百グラムも食べる人は、いないかと思いますので、これは、微妙ところですが、食品には、含めない扱いをしています。

他の食品用測定器でも、このことは、発生していると思います。
塩をまるまる測れば、どの測定器も、おそらくは、高めの値を出していると思います。

かなり高いエネルギーまで、すべての放射線のピークを把握できれば、計算によって、すべてのコンプトン散乱の影響を、計算で、取り除くことはできますが、シンチレーションの場合、--3MeV 程度までしか、見ることができないので、すべてを取り除くことは、できないかもしれません。

、、、ちょっと話が脱線しましたが、

厚生労働省の立場が、たとえ補正をまったく入れずに、セシウム値が高めにでる分には、問題ない、、高めに出た上で、基準値以下であれば、食品は、安全として、みてよい、という方針なので、食品の最低限のカリウム補正を入れた PM1406 は、食品・飲料水にかぎっていえば、十分に精度高く判定できる測定器となっています。
逆に、塩の放射線量が低めにでる測定器は、補正が強く入っているため、食品などの放射線を低めに見積もってしまう危険性があります。

正しく測りたいというユーザーの要望もよく分かるのですが、理想的に言えば、かなり高エネルギーまで測定できる検出器を使い、高エネルギーで見つかったピークからのコンプトン散乱の影響を、一つずつ、セシウム領域から、引いていく、、みたいなことをすれば、正しく測定できると思いますが、シンチレーション検出器の場合、あまり高いエネルギーは、正しく測定できないので、どのメーカーも限界は、あるかと思います。

厚生労働省のスクリーニング法は、そういった状況を考慮して、やりやすい範囲で、測定器をつくる形を目指したものだと思いますが。。

たろうまるさんからの回答(その2)

私の方も、塩 500 g みたいなものの測定結果が、大きな影響を受けることを、しっかりと、伝えていく必要がありますね。ご指摘頂き、誠にありがとうございます。今後、サイト上に追加情報を掲載していきたいと思います。

たろうまるさんからの回答(その3)

塩 500g で、802 Bq/kg ですかね。みかげさんが 2012/10/31 に測ったやさしおは、123 Bq/kg でしたので、802 ということは、かなり高めですね。その時のカリウムの Bq/kg の値も分かると、より理解しやすいのですけどね。

キュウリの写真がでている場所で、議論があるので、何を測っているのかな、、?と思ってしまいますが、、

μSv/h と違って、Bq/kg は、測るのが難しいですね。シンチレーションタイプは、各社いろいろだしていますが、正しい値を知るためよりは、一定値より低いかどうかを、99%精度で判定するというスクリーニング的に使う方がよいと思いますね。各社、カリウムや高エネルギーの補正の入れ方も、様々だとおもいますので。

ただ、すごく塩っぽい食品は、日本には、多いですかね。塩漬けみたいな、、
でも、食べる状態にして測っていただくのがよいかと思います。塩漬けでも、漬けた状態で食べるひとは、いないと思うので。。

802 Bq/kg に関しては、高いかどうか、分かりませんが、カリウムの値の方も、相当、高く出ているのでは?と思います。


birdtaka @birdtaka

(どうも802 Bq/kgはカリウムの値として表示されたもので、セシウムはもっと低かったもようです。ひとさわがせ。)

2013-07-30 14:57:50
birdtaka @birdtaka

.@ref_nishiogi @Rosa_centifolia facebook見に行ったらご本人がK40の数字だとコメントされていました。

2013-07-30 15:29:50
birdtaka @birdtaka

.@ref_nishiogi @Rosa_centifolia 誤検出問題ですらなかったわけです。PM1406はとんだとばっちりということですね。

2013-07-30 15:31:25
birdtaka @birdtaka

@champoolcan そうなんです。誤検出ではなさそう、という当初の私の予測が当たっていたとも言えますが、なんとも複雑な気分です。

2013-07-30 15:32:42

蛇足

birdtaka @birdtaka

K-40とCsの取り違い問題は私としては示唆に富む問題だと思っています。なぜなら同じBqでもCs-134/137よりもK-40の方がγ線のエネルギーは大きい。そしてスペクトルをみたことがある人がCsはリスクでK-40はリスクと関係ないの?と疑問持つのは当然。

2013-07-30 16:20:36
birdtaka @birdtaka

β線の寄与や代謝の速度、そもそもK-40は一定量体内にあって多少余計に取ってもそれが変わらない(平衡状態にある)一方で、Cs-134/137は平衡量(摂取量に比例)に達するまでは増加する、という違いはもちろんある。

2013-07-30 16:22:05
birdtaka @birdtaka

経口摂取の実効線量係数(摂取Bqから被曝量Svへ換算する係数)でいえば、たとえばCs-137はK-40の約2倍、Cs-134はK-40の約3倍。 http://t.co/n2oXbnlARq

2013-07-30 16:25:02
birdtaka @birdtaka

その程度の違いはあるけどK-40も計算上のリスクがゼロではない。カリウムに含まれるK-40ならそもそも体内にあるから上乗せにはならなくて、Cs-134/137は少し上乗せになりますね、ということ。体内に既にあるK-40もCs-134/137も

2013-07-30 16:26:34
birdtaka @birdtaka

崩壊する時にβ線とγ線を出す、という点は同じ。それによるリスクがどれくらい「上乗せ」になるか、ということを気にすればいい。K-40のリスクとCs-134/137で違う種類のリスクがあるわけではない。それぞれの寄与が増えるか増えないかという点で違うだけ。

2013-07-30 16:28:28
birdtaka @birdtaka

どのくらいの上乗せを気にするかは、ひとそれぞれだけど。

2013-07-30 16:29:04

たろうまる社のサイトに解説が掲載されました

birdtaka @birdtaka

PM1406に関連して、たろうまるさんのサイトにK-40による測定値の影響についての詳しい解説が掲載されました。 http://t.co/ofTvf3dAHa

2013-08-05 11:54:25