アナザー・ユーレイ・バイ・ザ・ウィーピング・ウィロウ

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」ドタドタと足音が近づき、隣室のボンボリやフクスケを蹴散らしながら、騒動の主たちが姿を現す!オヤブンは驚愕し、腰を浮かせた。「貴様は!ゲンミ!」「アッコラー!」ハカマにサラシ、リーゼントのヤクザはオヤブンを睨み下ろした。「戻ってきたぜ!」25

2013-08-02 23:50:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲンミてめえ……何のつもりだ!」「アッコラー!」リーゼントヤクザ、ゲンミは叫び返した。手勢の者達がズカズカと部屋に入り、ショウジ戸や押入れを蹴破って回る。「スッゾー!」「チェラッコラー!」ジェノサイドはアグラしたまま動かない。目深に被った帽子の下、その表情は窺い知れない。26

2013-08-02 23:54:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウオーッ!」オヤブンはトコノマに飾られたカタナを取ろうとした。BLAM!ゲンミはチャカ・ガンを躊躇いなく発砲!「グワーッ!」キドニーを撃たれ、タタミに転がるオヤブン!「アバーッ!」「テメッコラー……俺に罪をおっ被せてテメェ、約束破ラレッコラー……何でジヘキ後継者ッコラー!」27

2013-08-02 23:57:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」オヤブンは畳の上でのたうつ!「何が」ゲンミは歯を剥き出しにし、「何がクランの為に頼む、だコラー!」BRATATA……BRATATA……廊下の外では激しい銃撃戦の様相だ。ナムサン……ジェノサイドは思いがけず、ヤクザクーデターの現場に居合わせてしまったというのか? 28

2013-08-03 00:01:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「てめえ、犬野郎!」オヤブンは泣き叫び、罵る。血の染みが拡がってゆく!「狂犬!」「バカハドッチダー!」ゲンミはその横面を容赦なく蹴りつけた。「アバーッ!」「ジヘキどこに隠れてやがる!ア?言えオラー!」「ジ、ジヘキ、は、アバッ、オキナワだ、リゾート……」「シャッコラー!」 29

2013-08-03 00:04:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

興奮したゲンミは己のリーゼントをかきむしり、部屋の中を肩を怒らせてグルグル歩きまわった。「あの野郎、ネオサイタマ入りするその日を命日にしてやる……!あの野郎!いつもいつも器用に立ち回りやがって!俺のマゴコロを利用して!踏みにじりやがる!」「アバッ……テメェは狂犬だ!」30

2013-08-03 00:08:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アッコラー!」「テメェ、テメェなんざなァ……」オヤブンは血を吐きながら、「テメェなんざ、最初から、捨て駒よ!忘れ果てたわ!」「チャルワレッコラー!」「アバーッ!」オヤブンの脇腹を蹴りつける!「スッゾオラー!」「モノはどこだ」ジェノサイドが呟いた。「死ぬ前に教えてけェー……」31

2013-08-03 00:12:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「真鍮ダルマの」オヤブンは白目を剥いた。「中……」そして痙攣。動きを止めた。「スッゾオラー!」BLAM!ゲンミが振り向きざまに発砲した。銃弾はアグラするジェノサイドの帽子を貫通し、弾き飛ばした。「……」緑の目がゲンミを睨み据えた。 32

2013-08-03 00:18:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア?さっきからどこの誰だテメエって話だよ」ゲンミが凄む。興奮に目は血走り(まず間違いなくZBR影響下にあるだろう)、口の端から泡を吐いていた。先程室内を荒らし廊下へ飛び出していった二人が戻ってきて、それぞれジェノサイドの頭に銃を向けた。「俺はよォ……」ジェノサイドが呟いた。33

2013-08-03 00:23:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺は貴様らヤクザの問題なんぞに、興味はねェ……」「ア?」「俺はただ、俺の環境を改善してえ、ただそれだけだ……それなのに貴様らのようなカスどもが……ややこしくしやがる……ナメやがって……土足で乱していく……」「ア?」ドルッ。ドルッ。ドルッ。何らかの唸り音。「ナメやがって!」34

2013-08-03 00:26:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア?何者だッツってんだよ!」「俺は!」ジェノサイドは立ち上がった。「エ?」ゲンミは狼狽し、彼を見上げた。天井につくほどの巨体だったからだ。ズタズタのカソックコートが作る朧なシルエット。そこから伸びる鎖。畳の上の円盤状の物体……円形の鋸刃。死の危険。「俺は!ジェノサイドだ!」35

2013-08-03 00:30:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドルッ、ドルル、ドルルルルル……「俺は!」ジェノサイドの両腕が霞んだ。鎖が跳ねた。「俺はジェノサイド!」チュン!「え?」ゲンミは切り株めいて切断された己の右手を見た。チュン!その顔面が鼻の高さで水平に断ち切られた。チュンチュン!ジェノサイドの背後の二人の首が同時に飛んだ。 36

2013-08-03 00:35:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一秒後、切断面から鮮血が噴火し、赤い霧が室内を満たした。「アッコラー!」「スッゾオラー!」騒ぎを聞きつけたヤクザ達が殺到する!ジェノサイドの緑の眼光が赤い霧を透かす!「ゼツ!」バズソーが展開!柱を、フスマを切り裂きながら、ヤクザ達を切断!「メツ!」「「アバーッ!」」 37

2013-08-03 00:39:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

五臓六腑!鮮血!殺戮!ジェノサイドはタタミに落ちた帽子を蹴りあげ、掴んでかぶり直すと、隣室へ飛び込んだ。「アイエエエエ!」生き残りヤクザが後退りながら発砲を繰り返した。BLAMBLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」「アバーッ!」切断殺!室内を見渡す!ガラス棚に、真鍮ダルマ!38

2013-08-03 00:41:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」KRAAASH!ガラスを破壊し、真鍮ダルマを引きずり出す!そのまま廊下へ飛び出す!BRATATATATATAT……アサルトライフル銃撃が襲いかかる!遠い!攻撃範囲外だ!「イヤーッ!」ジェノサイドはカモイから白砂へ跳躍、石灯籠を蹴って塀の上へ跳躍、更に跳躍! 39

2013-08-03 00:46:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATATAT……BRATATATATAT……「スッゾオラー!」「チェラッコラー!」「イヤーッ!」ヤクザ敷地から飛び離れ、着地した道路のマンホール蓋を持ち上げると、彼は躊躇いなく地下へ飛び降りた。 40

2013-08-03 00:50:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ざぶざぶ。ざぶざぶ。足首まである水を蹴り、ジェノサイドは歩き進む。足を止める。また歩く。ざぶざぶ。また足を止める。また歩きかけ、素早く振り返る。痩せた犬が飛び離れた。「……」ジェノサイドは犬を睨みつける。犬の目は赤い。レーザーサイト。サイバネ改造されているのだ。41

2013-08-03 00:56:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この異形の動物に、ジェノサイドには心当たりがある。リー先生が放ったゾンビー斥候犬。犬の死体をサイバネで無理やり動かす冒涜的な存在だ。ジェノサイドの居場所を求め、その周囲を嗅ぎまわる。「……」「……」ジェノサイドと犬は、しばし、互いを凝視した。……BLAM!「ギャン!」 42

2013-08-03 00:59:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゾンビ犬の頭が爆ぜ、泥水の中に倒れた。その奥の闇から、銃撃者が姿を現す。その手に構えたショットガンをポンプしながら。「フームフームフーム」「……」ジェノサイドはカラテ警戒を解く。そしてアイサツした。「ドーモ。キャプテンジェネラル=サン」43

2013-08-03 01:03:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フーム。フーム。ドーモ。ジェノサイド=サン」南北戦争風のニンジャ装束を着たヒゲモジャの男は、ガラス玉めいた狂的な目をジェノサイドに向け、ぎくしゃくしたアイサツを返した。「フームフーム。フームジェノサイドフーム」「話が早い」とジェノサイド。「アンタの棲家に向かってたところだ」44

2013-08-03 01:06:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フーム?」キャプテンジェネラルはショットガンを収め、リュックサックにくくりつけたカンテラを手に持つと、それでジェノサイドの顔を照らした。「そりゃあ、そうじゃろうとも。ここは暖かいし、若い人間どもはおらんじゃて。ワシだけじゃてな。若い連中は老人を棄てる!殺してやる!」45

2013-08-03 01:10:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やりたきゃ勝手にやれ」ジェノサイドは取り合わず、懐から真鍮のダルマを取り出した。「ホム?」突発的な怒りに顔色を紫に染めていたキャプテンは、興味をそそられたようだった。「それは……」「お望みの品が入ってる」「盗品!」キャプテンは顔を近づけた。「フーム……旋盤を使おう」 46

2013-08-03 01:15:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

老人はジェノサイドを追い越し、泥水を蹴立てながら早足に進んでゆく。「早く来なさい。ワシの店がすぐそこだ」ジェノサイドは黙って後に続く。老人は闇の中でブツブツと呟いていた。「ヤクザどもめ。目にもの見せてやったろうな?ワシの、ワシの宝がな……許せんのじゃ!やつらが盗みよった!」47

2013-08-03 01:20:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて右の壁に崩された部分が見つかる。「フームフーム」キャプテンジェネラルはヒョイヒョイと瓦礫をまたぎ、奥に入り込んだ。天井は低い。ジェノサイドは身を屈めて続いた。キャプテンは天井から垂れる紐を引いた。蛍光ボンボリが隠し部屋めいたその空間を冷たく照らした。「ダルマ貸しなさい」48

2013-08-03 01:22:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャプテンはジェノサイドからダルマを受け取り、作業机に置いた。旋盤のスイッチを探る。その間に、ジェノサイドは室内を見回した。人体模型や、布製フクスケ、郵便ボックス、ソバ屋台のノレン、UNIXデッキ等が並び、全てに手書きの値札がつけられていた。およそまともな場所ではない。49

2013-08-03 01:25:57