第二大罪大戦:黒陣営第二期交流フェイズ

まとめました。
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――― @sin_gomokumame

扉を抜けて、見慣れた馴染みの屋敷に戻ってきて、真っ先に向かったのは自室だった。ジャケットを片腕でむしるように脱ぎ捨てて、ワイシャツも同じように。 左肩の傷口に引きずり込まれるようにして刺さっている布地も、痛みなど意に介さず引き剥がす。ぬるり、ぐちゃ、と水音。→

2013-08-11 06:14:15
――― @sin_gomokumame

部屋の隅にぽつんと置かれた姿見を通して、自分を見た。 暴食の手を突き立てられて、治るかわからない左肩。仮に完治したとしても何かしらの障害は残るだろう、ならば。 「要らない」 呼び出すスクリーン、姿見越しにその左腕を映し出し、『削落』。→

2013-08-11 06:14:26
――― @sin_gomokumame

自分の身体は、自分が一番良く知っているから。何の障害もなく、『力』は腕を削ぎ落とす。重たいものが、ぼとり、音を立てて落ちた。 鼓動に合わせて響く痛みは、ないもののように振る舞う。スクリーンで改めて『世界』を解析しなおそうと、浮かぶ画面を見つめた。

2013-08-11 06:14:37
――― @sin_gomokumame

画面の表示が目まぐるしく変わっていく。解析が終わるのを、ただ外を眺めながら待つ。 予感はしていた。削ぎ落としたのではなく、欠け落ちているような。 ぴたり。文字を躍らせるのをやめた画面を見て、ただ細い吐息のようなため息をひとつ。 残された『罪』は『2つ』だけ。→

2013-08-11 19:08:42
――― @sin_gomokumame

自分でも、『7つ』が欠けたらいつぞやのように激昂するかと思っていたのに、心は随分と静かだった。心にすとんと落ちるような納得。 だって、屋敷がこんなにも静か。→

2013-08-11 19:08:52
――― @sin_gomokumame

ゆっくりとした瞬きを繰り返す。心は静かなのに早くなる動悸を押さえつけるように。 片腕ではスーツは着られないからと、クローゼットを開けた。同じデザインのスーツがいくつもかけられている中で、息を潜めるように、それはあった。→

2013-08-11 19:08:59
――― @sin_gomokumame

白い、膝丈より少し長いワンピース。いつからクローゼットの中にあったのか、思い出せないほどしまい込んでいたもの。 片腕という不便さに苦労しながら、なんとかそれを着こむ。ぴたりと合うサイズは、確かにそれが自分のものだと伝えている。→

2013-08-11 19:09:18
――― @sin_gomokumame

「欠けたのなら、埋めなければ」 胸に手を置きながら、そう、ぽつりと。その独り言を聞く者は誰もいない。 それから上げた顔に浮かぶのは、いつもと同じ無表情。広間へ戻ろうと、自室の扉を開いた。

2013-08-11 19:09:23
――― @sin_gomokumame

慣れないスカートをひらめかせ、広間に辿り着く。帰ってきたときには様子を見る余裕もなかった。 改めて、見回す。そこには誰もいない。残された自分以外のもう一つの『罪』は、まだ帰ってきていないようだ。 身体は自然と定位置へ向かう。すとん、と座り慣れた椅子に腰を下ろす。→

2013-08-13 08:45:35
――― @sin_gomokumame

視線は誰かを探すように、見渡しているけれど。誰もいないのは明白だった。もう既に『把握』しているのに、『在るべきもの』がそこに在ってほしいと、誰かの姿を求めていた。 ゆったりとした、亡羊とした瞬きをくりかえしながら、肉の断面を晒したままの左肩に喪失の痛みを感じつつ。→

2013-08-13 08:45:44
――― @sin_gomokumame

おもむろにスクリーンをひとつ、呼び出す。心なしかゆっくりとした動作で動き出し解析されるのは、この『世界』。『扉』がないかを探して画面内に文字が躍りだす。 解析を待って背もたれに身体を預ける。細い吐息を、ひとつ。踊る文字を見つめながら、彼女は。→

2013-08-13 08:45:54
――― @sin_gomokumame

――うたいはじめた。 唇がわずかに開いて、そこから言葉にならない音のつらなりが溢れて止まらない。 静かに、一切の感情の見えない、ただつらねられるだけの無意味な音が流れては消えていく。消えていく。

2013-08-13 08:46:03
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

コツ、コリュ、割れた靴を鳴らして少女が帰還する。 聞こえる音は、歌? 声は知っている、けれどそんな声色は知らない。 少女は下げた片手に持つ花束を見る。 これも、何かあったに含まれる……のよね。 彼女なら把握しているだろうけど。 声は「かけるべきかしら」 ぽそりと呟く。

2013-08-13 17:20:28
――― @sin_gomokumame

ぴたり。少女の呟きに唄は止む。 「おかえり、ツォルン」 囁かれる声は淡々としたまま、少女に目もくれず、ただ画面だけを見つめ。 「これで『黒(僕たち)』は全部、だ」 その事実を少女に伝えるように、自身に言い聞かせるように。

2013-08-13 19:55:22
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「そう……ただいま」 彼女は欠損していた。目に見えてわかる怪我。私には無い、傷。 「あなたは」 いつもなら言わない事、自分の中で抑える事。 「どうして歌っていたの? 貴女にとって歌は重要な事?」

2013-08-13 20:31:31
――― @sin_gomokumame

「唄、僕は、うたっていた……?」 浮かぶのは困惑。自分が歌っていた、という事実に、指摘されて初めて気が付いたのだから。 「僕はうたっていた?」 自問を、繰り返す。

2013-08-14 05:29:54
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「ええ、私には貴女の声に聞こえたのだけど」 少女はテーブルに花束を置く。置いて、手を。 ここで、これを手から離せば、私はきっと忘れるわね。それは誠実ではないのかしら。でも、分かっている。これは不要な誠実。私にとって必要なのは……。 「貴女は怪我をしたのね」 少女は手を離す。→

2013-08-15 00:13:03
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

相手の言葉を待たずに続ける。 「人は欠けるとまともに動く事ができないと聞いていたけど、あなたは大丈夫なの?」 まだ戦える? それに、様子が変よね。無駄が嫌いな怠惰、あなたは 「貴女は何処が欠けたの?」 私はまだ、貴女と前に会った時と変わっていない、よね? どう見えているのかしら。

2013-08-15 00:16:28
――― @sin_gomokumame

「……うたってたのは、僕。そうか。そうか……」 少女が置くのは小さな花束。戦ってきたはずなのに、そんな可愛らしいものを持っているのはなぜだろうという問いが浮かびかけて、『余計なこと』だと思考から消える。 「唄は僕の、……何なんだろうね」 自分の事なのにわからない、自嘲を含んで。→

2013-08-15 07:13:02
――― @sin_gomokumame

怪我を聞く少女の問いに、微かに頷いた。 「僕はまだ動けるよ、出血も無いし」 空気に晒された無防備な傷は、痛みはするものの『削落』してから血の一滴も落としていない。 「戦える、大丈夫」 言葉に、態度に、染みわたるような落ち着きが戻ってくる。そう、大丈夫。→

2013-08-15 07:13:13
――― @sin_gomokumame

「欠けてしまったね」 ふたつ目の問いには、どこかずれた返答を。視線は画面から、がらんとした広間に向いている。 「でも、『怠惰(僕)』も『憤怒(君)』も残っているのだから、まだ黒は死んでいない。欠けているなら埋めればいい」 椅子に座ったまま、少女を手招くように残された右手を伸ばす。

2013-08-15 07:13:36
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

そう、怠惰がまだ怠惰なら 「大丈夫そうね」 伸ばされた手、近づく少女。少女は怠惰の手首に片手を乗せる。 「まだ終わっていない、そうでしょ?」 一歩、二歩、小さな歩幅で怠惰へと 「たとえ戻ってこなくても、皆はきっと成果を残しているはずだもの。それを確かめないとね。」 →

2013-08-15 18:34:47
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

→ 「ねえ、トレーク?」 座の名前、黒である証明。 「私が次に入るべき扉は何処?」 貴女ならもう判っているのでしょう?

2013-08-15 18:35:42
――― @sin_gomokumame

のせられた小さな手を、そっと握る。此処に在る。 瞼を下ろし、ほんの数瞬だけ、触覚だけでその手を感じ取り。 「……扉はふたつ。1と2。僕は、『1』に行こうと思う」 開いたスクリーン、その解析の結果を、言葉にする。 「『2』に行ってくれるかな、『僕の認めた憤怒(ツォルン)』」

2013-08-15 22:34:15
黒の憤怒:ツォルン @whiteplays_sin

「……?」 この怠惰は、こんな人にすがるような事をするヒトだったかしら。 少女は手を見て首を傾げる。だが、一瞬を置いてこくりと頷いた。 「わかったわ。前回とは逆ね」 そう、逆ね。二つだもの。 「若い番号から、だから世界的にも楽なのかしら」 でもあれね。 →

2013-08-15 23:34:30