第二大罪大戦《二の狭間》【戦闘フェイズ2】
「――!!」 次に痛みが襲ってきたのは、少女が狙って攻撃した胸だった。 そうか、これは。 「…………」 声が出ない。 少女は手の力を失い、地面に倒れた。 少女は人間ではなかった。体のほとんどは人間と同じように作り変えていたが、血は巡っていなかったし、一部の臓器は人形のままだった。
2013-08-25 18:47:32皮膚が焼け爛れても、まだ生きる事はできた。痛みはあっても動く事もできた。 だが、今攻撃を返された場所は、残していた、残すしかなかった人形の部分だった。 倒れた少女の目がかすかに動く。私に傷を返してきた相手と、その相手の仲間へと。 負け。私、壊れた。 →
2013-08-25 18:50:09憤怒が倒れたことを認識する前に、憶えていてと繰り返していた口が言いかけたままで、止まる。目は虚ろ。生気はなく、もう何も映らない。 無事な部分が見当たらないほどの傷を負って、しかし肯定という自分の罪科を否定し憶えていてと願った彼女の身体は、肯定することで背負えた大罪に潰され消えた。
2013-08-25 19:06:11消えて往く気配に、声に。それでも瞳を逸らさずにじいと、不鮮明なそれを見つめる。 憶えていて 「――おぼえてるわ」 返した言葉は無意識に。それでもはっきりと紡いだ。 それは身勝手な自分さえも受け入れてくれた彼女へ。 もはや大罪ではない記憶と言うあやふやな存在の己から、笑って
2013-08-26 02:39:29僕はただ、見ているだけだった。見ているだけでよかった。なんの感慨もなく、ただ、その結末を見ていた。 色を欲しがった彼女は、受け取るための器さえ遺さず消えてしまった。けれど、 「よくできたね」 首にかかる銀の鎖をはずして、紅い石を彼女が抱いていた小さな人形の傍らに置く。 →
2013-08-26 08:24:00怠惰がくれたものだけれど、僕は他に紅色を持っていないから。 「……色をとられた僕でも、帰れるのかな」 扉が開く気配はない。 過ぎてゆく時間。ぽつり、ぽつり、意味のない言葉をこぼす。 「会いたかったな」 「もう一度、言いたかったんだ」 「愛してるって」 『狭間』は崩れ行く。
2013-08-26 08:31:57