第二大罪大戦 エピローグ

――全ての大罪は無に帰した。 後に残されたのは――。
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トレークハイト エピローグ:そして永き罪の時は終わりを告げ

シーン主導PC:トレークハイト
シーン参加PC:フライシェスラスト

――― @sin_gomokumame

小鳥が、一羽。白い雪のようにひらりと、降りてくる。 掌にすっぽりと収まってしまうような小さな白い鳥は、倒れて眠る『彼女』の肩にそっととまって、つぶらな緑の瞳で、『彼女』を見守っていた。ほんの少し、不思議げに首を傾けつつ。

2013-08-28 00:38:47
――― @sin_gomokumame

小鳥の視線に晒されて、伏せられた睫毛がふるり、震えた。うっそりと瞼が持ち上げられて、目覚める。 小鳥を肩にのせたまま、彼女は立ち上がって周囲を見回した。『何もない』。人も、物も、地面も空も、――音さえも。 ただ取り残されたように、独り。

2013-08-28 00:39:01
――― @sin_gomokumame

自身の身体を抱きしめながらその顔に浮かぶのは恐怖。無くしたはずの腕があることすら、意識せず。 何もない。何もない。何もない。何もない。何もない。 掻き回される意識の中ひとつだけ、はっきりと形になった名を、呼ぶ。 「…………シェ、ス」 頼りなげに、囁く。

2013-08-28 00:39:08
イーシェ @meiji_sin2

結果を見届けていた身体は消えようとしていた。 それを引き止めるように囁かれる名前はいつもよりずっとか弱く、それでいてしっかりと絆を結びつけるちからがあった。 呼ばれるまま細い道を壊さないように歩くとぽつんと残された小さい背中が見える。→

2013-08-28 01:16:32
イーシェ @meiji_sin2

戦闘中もその前も一度だって呼ばれなかった声、想いは自惚れだったと驕る心に気づかされた程。 それが今、触れる位近くにあるから迷い無く名前を呼んで手を伸ばした。 「トーリ、やっと俺を呼んだな」 姿は扉を潜る前と同じ、ただ顔を隠す布はもう失われている。――拒絶する必要がない。

2013-08-28 01:16:39
――― @sin_gomokumame

無の世界に、低い声が、落ちて。 身体を抱きかかえたまま振り返る。 求めた姿は記憶と変わらず、そこにあって。 「…………シェス」 今度は、はっきりと。肩にとまる小鳥が、ぴっと一声、鳴いた。

2013-08-28 01:25:56
イーシェ @meiji_sin2

「うん?なんだ」 自分の死因にもなった腹の傷が無くなったように、痛々しかった肩もまた元通りになっている。 ただ違うのはスーツではなく真っ白いワンピース姿であることと、小鳥が肩に留まっていること。 この場では触れられないという認識は無いまま、伸ばした手はその肩へ。

2013-08-28 01:41:06
イーシェ @meiji_sin2

かつての仲間である艶やかな金糸の彼と、彼に愛された彼女を同時に喪って以来の服装はトレークハイトが選ぶには違和感が強くて、同時にあの頃を思い出させる。 笑っていた彼女、笑わなくなった怠惰、二人がまるで揃ったような錯覚さえ浮かんだ。

2013-08-28 01:49:44
――― @sin_gomokumame

一歩、引いた。その手が届かないように。 「どうして、死んだの」 「どうして欠けたの」 零れる問いは喉の奥から絞り出される。泣きそうな、けれど目尻に涙は浮かんでいない歪んだ表情。 人としての自分。それから大罪を『削落』した彼女にあるのは、『記憶』とそれに付随する剥き出しの想いのみ。

2013-08-28 01:56:19
――― @sin_gomokumame

永かった。押さえつけられていた想いが、永すぎた。 「僕は君さえいれば立っていられたのに!」 『七つの大罪(安寧)』が揃う事を望む『怠惰(トレークハイト)』が、抱えてはいけなかった想いが、     きみ 「『僕は安寧さえあればよかったのに』!」 吐き出されて、

2013-08-28 01:56:38
イーシェ @meiji_sin2

手は、触れることなく空を切って落ちる。 むき出しの感情は、終ぞ聞くことのなかった想い。 「俺が、大罪として相応しく無かったからだ」 最後まで「役目」は放棄しなかった、それにしてももう黒には立てないとさえ思ったから帰ることを諦めた。 『怠惰(トレークハイト)』ごと手放そうとした。

2013-08-28 02:17:18
イーシェ @meiji_sin2

黒と紅が交差しなければ、それこそ永遠に居座っていただろう居心地の良い場所。怠惰の作る安寧は、心地よすぎて抜け出せない程。 「でもお前それ、もっと早く言えよ」 距離が開いた分の一歩を詰める、泣きそうな顔を見つめるのは少しだけ困ったような笑顔。

2013-08-28 02:17:24
――― @sin_gomokumame

「だって、」 『人(クァート)』を失くした自分は『怠惰(トレークハイト)』としてしか『在る』ことができなかった。許されなかった。 なのに、永い時の中で、『怠惰』として求めるべき『安寧』が七つから一つへすり替わっていた。 『大罪』として相応しくないというなら、こちらも同じ。

2013-08-28 02:37:13
――― @sin_gomokumame

「『怠惰』として、この想いは、抱いてはいけなかったから」 「形にしてはならなかった」 「形にしたら、『僕』は存在できなくなっていただろうから」 でも、今は。 「相応しくなくても、僕は、『君』がいれば、それで」 「それでよかったのに」 俯いて、震える。

2013-08-28 02:37:21
イーシェ @meiji_sin2

「じゃあ、今お前はどうしたいんだ」 姿はそのままとは言え互いに罪から堕ちた身なら、立ち止まる必要は恐らく無く。 もう一歩二人の距離を詰めればもう体温さえ感じられるくらいの近さ。 「何を望む?」 安寧と言う名の小さくて居心地のよい場所はもう無い。 自分からは動かず両手だけ開いて。

2013-08-28 09:00:02
――― @sin_gomokumame

すぐそばに黒い大きな姿がある。俯いていた顔を、そっと上げる。 クァートでもトレークハイトでもない、『想い(トーリ)』の望みを聞かれたら。答えはひとつしかない。 「『わたし』は『貴方』が、欲しい」 ずっと、ずっと、伸ばさないよう押さえつけていた手が、伸ばされる。

2013-08-28 09:49:56
イーシェ @meiji_sin2

「ずっと側に居たろ」 望めば直ぐに全てを差し出せるように、想いに触れられるように。 「やっと、聞けたなあ……」 伸びてくる手が肌に触れる。温度はよく解らないが、届いたのはそれが馴染んだものだからか。 再び右腕を、その背を抱き寄せる為に伸ばした。

2013-08-28 12:29:31
――― @sin_gomokumame

腕は確かに『触れて』、彼に比べれば小さな身体を容易く抱き寄せた。視界いっぱいに褐色が広がる。 ――ああ、『此処』が、ずっと『此処』が欲しかった。 愛した人と共に削落されたクァートなら。どこまでも『七つの大罪』を求めたトレークハイトなら。きっと、触れることは、できなかった。

2013-08-28 14:32:38
――― @sin_gomokumame

今まで片鱗すら見せていなかった涙が、突然堰を切ったように溢れ出す。手のひらで押さえようとしても、次から次へと涙は溢れて、手を伝いぽたぽたと滴り落ちる。 「……ごめんなさい……!」 届けられなかった、気づけなかった事に。

2013-08-28 14:32:54
――― @sin_gomokumame

「『僕』と『わたし』が全部悪かったんだ」 『紅の傲慢となるもの(ヴィエルヴィア)』と、まだクァートと共にあったトレークハイトが『約束』を交わさなければ。 『想い(わたし)』を抱えてしまったトレークハイトが、『在るべき嫉妬(ナルシス)』と『自分(クァート)』を削落しなければ。

2013-08-28 14:33:06
――― @sin_gomokumame

均衡を失ったトレークハイトが、均衡を保つために『在るべき大罪』を『僕の認める大罪』にすりかえなければ。 『紅の傲慢(オルグイユ)』と出会ったトレークハイトが、頑なに『削落』せんと願わなければ。 それぞれが、在るべき場所に在れたのかもしれないと。

2013-08-28 14:33:16
――― @sin_gomokumame

それぞれがそれぞれ、在るべき場所で、殺し合うことなく在ることができたのかもしれないと、そんなことさえ想ってしまって。 「ごめんなさい……!」 すべてに。『怠惰の安寧』に巻き込んでしまった、すべての『大罪』たちへ。

2013-08-28 14:33:26
イーシェ @meiji_sin2

「お前の可愛いわがままに振り回されたな、皆して」 溢れる涙を拭いながら、ぼそりと零すと少し身を屈めて続きを囁く。 「トレークハイトじゃ泣けなかった、それに気づくべきだったよ俺も」 いつも、トーリを見ていたから涙が、謝罪の言葉が深く刺さる。刺さるけれど。 「ま、今更だな」

2013-08-28 16:52:53
イーシェ @meiji_sin2

その傷さえも、愛しいものとして身体に残す為に余さず受け取ろう。 「ごめんなさいよりもっと聞きたい言葉があるな」 これも、トレークハイトなら絶対に言わない様な言葉。ぽそぽそと耳に直接落としてから、顔をのぞき込んだ。 恐らく自分は今、他の奴には見せられない顔をしている。

2013-08-28 16:58:29
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