【twitter小説】暗中模索#3【ファンタジー】

魔法使いの街、帝都の政府機関『教導院』へと呼び出されたメルヴィ。そこで彼女は自分の夢の秘密を知らされます。小説アカウント @decay_world で公開した物語です。この話は#4まで続きます
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減衰世界 @decay_world

「おいで、メルヴィ。大丈夫。そんなに強い力ではないよ。ただ、あなたの魔法をもっと使いやすくするだけ」  メルヴィは恐る恐るベルベンダインの懐へ歩み寄る。 85

2013-09-14 15:12:14
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 一歩一歩近づくたびに、メルヴィの腕に埋め込まれたシリンダーが熱を帯びて疼いた。シリンダーは魔法を使いやすくするため身体にインプラントする器具だ。メルヴィはシリンダーの力を借りて、市民用に調整された量産魔法を使うことができる。 86

2013-09-14 15:20:56
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 歩み寄るたび、服の中で何か粘液が滲むのがわかる。メルヴィはそれがベルベンダインの力だと気付いた。膿が出るような感覚だが、不思議と痛みは無くむしろ快感さえ感じる。メルヴィの袖から紫色の液体が滴り落ちた。 87

2013-09-14 15:26:25
減衰世界 @decay_world

 身を投げるようにメルヴィはベルベンダインの胸元に飛びこんだ。ベルベンダインは彼女を抱きしめ、耳元で囁く。 「あなたを狙っている者がいます。混沌神のひとり……イミドア。しかし、彼の目的は果たされないでしょう」 88

2013-09-14 15:30:12
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「あなたはたくさんの者に守られています。記憶の果てに置き忘れた者たち、命を落とした者たち、そして神々たち……あなたは重大な使命を帯びているのです」  そしてベルベンダインはメルヴィを強く、強く抱きしめた。 89

2013-09-14 15:34:24
減衰世界 @decay_world

 メルヴィは口から、耳から紫色の粘液を噴き出し悶絶した。痛みは無い……むしろささやかな快感が彼女を襲う。ベルベンダインはさらに彼女を抱きしめる。メルヴィはそのままスポンジを握りつぶしたように紫の液体を流し、くしゃくしゃになった。 90

2013-09-14 15:38:39
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 壁にかかった、黒く塗りつぶされた絵に無数の目が出現し、視線を交わす。ベルベンダインの身体は折れ曲がり、髪の毛の塊のようになった。やがてパチパチと裸電球が明滅し、部屋は闇に包まれた。 91

2013-09-14 15:42:10