【twitter小説】 ニェスの蛇の巣#1 【ファンタジー】

長距離列車での旅を続けるメルヴィとクシュスは巨大な鉱山都市ニェスを訪れます。そこには巨大な影がその身を横たえていた……。小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
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rikumo 745view 1コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:13:17
     長距離列車は灰土地域の殺風景な火山灰の荒野を過ぎ去り、大きな都市のターミナル駅へと到着した。目的地の帝都へ行くには、ここで別の長距離列車に乗り換える必要がある。メルヴィは大きな革張りのキャスター付き鞄を引っ張りながらホームへと降り立った。ここは大都市ニェスだ。 1
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:18:03
     目の前には雄大な鉱山都市が広がっていた。街の中心に横たわる小高い丘のような鉱山は、機械化された建築物ですべて覆われていた。あちこちから蒸気が噴き出し、巨大な重機が行き交う。メルヴィはこのような巨大都市を見たのは初めてだった。 2
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:24:44
    「メルヴィ様、観光はお仕事の後ゆっくりしましょう。とりあえず今日は宿に入って休みませんか?」  いつの間にか隣に長身の女が立っていた。べたつくようなくせっ毛の黒髪、たれ目で優しそうな目、ニヤニヤと気味悪く笑う口元、胸は……大きい。彼女はメルヴィの旅の共だ。 3
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:31:00
    「分かってるよ、クシュス。わたしも丁度疲れが限界に来てたとこなの」  彼女たちはある目的のために人類帝国の帝都を目指す旅人だ。彼女たちはこの大都市ニェスでスネークタン家から援助を受ける予定だったのだ。 4
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:36:00
     スネークタン家はこのニェスの広大な鉱山の採掘権を牛耳る巨大な存在だ。莫大な資産とその資産によって集められた強力な魔法物品を多数所有する。メルヴィの旅の共……クシュスはスネークタン家とコネクションを持っているらしい。 5
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:42:02
     しかしそう上手くことは運ばないことも列車の中で聞いていた。スネークタン家は陰謀のさなかにあったのだ。ニェスの資源採掘権の6割を握るスネークタン家の血は、いま絶えかねない状況にあるのだ。 6
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:48:56
     3年前に当主のメルクが事故死し、メルク夫人も相次いで亡くなってしまった。いまやその巨大な権益は一人息子のレニシェル・スネークタンの肩にかけられている。レニシェルはまだ17歳。しかも生まれたころから病弱であった。 7
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:54:45
     月に一度は昏倒してしまうことがあり、そのたびに医者の世話になっていたらしい。詳しく分からないのは、10年前から彼は公の場に姿を見せてはいないからだ。彼は要塞化された宮殿の奥に住んでいるとされ、信頼できる従者のみ入ることを許されている。 8
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 18:58:45
     スネークタン家には分家が3つあり、もし本家が絶えたときは資源採掘権をこの3家で分割することになっている。メルクやメルク夫人の死には不審な点が多い。大きな陰謀を感じずにはいられないが、証拠は何もなかった。 9
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:03:29
     メルヴィは機械化された街並みをクシュスと歩いた。セラミックプレートの石畳で舗装された地面に鞄のキャスターが転がる音が響く。メルヴィは長い旅の途中だった。彼女には使命がある。 10
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:09:01
     メルヴィはごく普通の娘だった。灰土地域では珍しい青髪の耳長族ではあったが、彼女の故郷では耳の長くとがった様子もごく普通のものだ。前髪は長く目を隠していたが、視線を嫌う魔法使いにはよくあることだ。 11
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:14:19
     魔法と言っても帝都の魔法使いのような天地を揺るがすほどの大魔法を使えるわけでもない。辺境の落第魔法使いのように腕や肩に打ち込んだシリンダーの力を借りねば魔法は使えないし、魔法の種類もその辺の魔法店で売っている市販のものだ。 12
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:18:47
     そんな片田舎の普通の娘だったメルヴィがなぜ大陸を縦断する大きな旅路へと出発したか、それには長い理由があった。最初の渡り鳥の一匹がなぜ住みかを離れ遠い地へと旅立ったか考えたことはあるだろうか。 13
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:24:20
     彼女の中にある理由もまた同じものであろう。突然変異的な本能が彼女を突き動かした。それは月へと辿りつく夢である。そのためには灰土地域の北西の果てにある人類帝国の首都へと行かなくてはならない。そこに協力者がいるのだ。 14
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:32:24
     その大きな夢の始まりについてはまた別な話で語ろう。いまやその旅は終わりに近づいていた。長距離鉄道で何日もかかるとはいえ、ニェスで列車を乗り換えればあとは寝台車でうたた寝をしているだけで帝都に着くのだ。 15
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:37:27
     しかしその費用も馬鹿にならない。長い旅路で路銀は尽きかけていた。メルヴィは隣を歩くクシュスを見上げる。クシュスはメルヴィの旅の同行者であり協力者だ。だがクシュスの資金提供も限界に近付きつつあった。大きな組織が背後にあるとクシュスは言う。 16
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:42:38
     だが、メルヴィの旅への支援はあまり予算を動かせないというのだ。クシュスの上司である……ミクロメガスという男。クシュスの話では帝国政府の高官らしいのだが、閑職にいるらしい。それで資金の工面が難しいというのだ。 17
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:46:01
     幸いこのニェスのスネークタン家は、そのミクロメガスと繋がりがあったらしい。それで今回資金援助を求めに来たというわけだ。しかしメルヴィはこの状況にとてつもない違和感を感じずにはいられなかった。 18
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:49:43
     なぜただの馬鹿げた夢を持っただけの小娘にそこまでしてくれるのだろうか。ここまでしてそのミクロメガスという男には何か見返りがあるのだろうか。しかし、好都合なことは甘んじて受けよう、そう彼女は思っていた。 19
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 19:55:03
    「ねぇ、クシュス。貴女は私を援助してどうしたいの?」  不意に問いを投げかけてみる。しかしクシュスはいつもニヤニヤと薄気味悪く笑い、同じように返すのだった。 「御意のままに。貴女様を帝都まで送る……それが私の役目」 20
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 20:00:22
     小一時間ほど歩いた頃、目的の街外れの宿に到着した。赤レンガの壁の木造3階建ての落ちついた宿だ。駅前の観光案内所で予約を取ってもらったのだ。このニェスは都会で観光需要も多く、街にはいくつも宿があった。 21
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 20:30:38
    「メルヴィ様、ここはシャワー付きですのでゆっくり汗を流してお休みしましょう。列車で座りすぎて腰が痛くなってしまったことでしょう。相部屋ですみませんが、その分広いですよ」  そう言ってクシュスは宿に入っていった。 22
  • 減衰世界 @decay_world 2013-07-05 20:35:15
     正直クシュスには助かっている。宿の手配や列車のチケットなど旅の煩わしいことはみな彼女がやってくれているのだ。以前はメルヴィがこの役目だった……そこまで考えてメルヴィは背筋が凍る思いをした。 23

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