【twitter小説】 ニェスの蛇の巣#1 【ファンタジー】
長距離列車での旅を続けるメルヴィとクシュスは巨大な鉱山都市ニェスを訪れます。そこには巨大な影がその身を横たえていた……。小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
減衰世界
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二人分のティーカップが机の上に転がり紅茶を散らしていた。クシュスは小さな声を漏らす。 「毒……ですね」 「そうですよ」 不意に入口から誰かの声がかかる。二人が振り返ると、そこには一人のメイドが立っていた。 49
2013-07-05 23:28:59
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「メルヴィ様と……クシュス様ですね。わたしはニギミニア」 そう言って彼女はお辞儀をした。青いシャツのメイド衣装を着ており、黒髪は肩まで伸ばしている。彼女の黒い瞳は冷たく濁っていた。彼女は宮殿の主、レニシェルの側近だという。 50
2013-07-05 23:34:03
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「情報が漏れていたのでしょうか……? 無礼をしたのをお詫びします」 そう言ってクシュスはより深く頭を下げた。それを見て慌ててメルヴィも頭を下げる。しかし、本当に暗殺者だと気づいていたのだろうかとメルヴィは不審に思う。 51
2013-07-05 23:37:17
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「あの……まさか私たちが先に来たら、あの毒の紅茶を飲んでいたのは……」 メルヴィは思わずそれを口にしてしまう。あの門番といいニギミニアといい、この宮殿には生気というものが感じられない。 52
2013-07-05 23:40:46
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本当に彼らを信用できるのか、資金援助の代わりに何か厄介なことにならないか……メルヴィはそこが心配だった。ニギミニアは口だけで笑みを作り、濁った目のままその問いに答えた。 53
2013-07-05 23:44:41
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「本物だったとしても構わないことです。ミクロメガス様の使者が毒ごときで死ぬわけありませんもの」 ミクロメガス……帝都にいるという、クシュスの上司。一度電影機で顔を見て会話したことがある。 54
2013-07-05 23:47:41
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メルヴィはこのミクロメガスを何よりも信用できなかった。何もかもが奇妙な男。彼は……メルヴィの夢を何故か知っていたのだ。メルヴィが誰にも明かさなかった夢を。 55
2013-07-05 23:53:27