モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Autumn I~
- IngaSakimori
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走り去るザンザスのテールランプは、ヘッドライトと同質の厚ぼったさを備えており、スクーターのようでもあった。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:34:53「変なバイク……それに変な人、だったな。 でも、結構近くに住んでたりして、な」 三鳥栖志智にとってそれは一夜のささやかな邂逅であり、ナンバーの表示が多摩であった点以外は 特に興味を引く出来事でもなかった。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:35:09「ふぁ……眠い。眠すぎる」 翌朝。夏を思い起こさせるような強い日差しの降りそそぐ登校路を、志智は一人で歩いていた。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:35:52「千歳もクラス委員の仕事だからって、7時出なんてよくやるよな……」 家に帰ってベッドに潜り込んだのが、午前4時を過ぎていたことは覚えている。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:36:03普段なら起こされる時間に、彼の妹はもう家にいなかった。目覚まし時計を二つ仕掛けていなかったならば、今も夢の世界に志智はいただろう。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:36:12「まったく、それにしても晴れてるな……ひょっとすると、太陽光線には人間を眠くさせる作用があるんじゃないのか……」 「普通は真逆でしょうに、寝ぼけてますわね」 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:36:28「亞璃須か」 いつの間にかひとりの少女が隣に並んでいた。見る者の目を奪うその長い金髪は、今日も偉大な魅力をふりまいている。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:36:58「……ぐぅ」 「寝ないっ。まったく志智ったら、妹さんがいないとてんでダメですわね」 半眼になって志智を睨み付ける瞳の色は、右が青。そして左は黒だった。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:37:12本来、奇妙な印象を与えるそのオッドアイは、しかし彼女の美貌を引きたてる小道具として、抜群の効果を発揮している。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:37:20「ふっ」 「今度は急に笑ってどうしたんですの?」 「いやさ。よく双子が入れ替わって……みたいな話あるじゃないか。 お前とティックの場合は、目で見分けられるから簡単だよなって思ったんだ」 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:37:28「ますます寝ぼけたことを言いますのね……そもそも、ティックは男ですわ」 「だけど、あいつあんまり男らしくないしな。ほら、体つきとか似たようなもんだし……特に━━」 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:37:44「ぶん殴られたいみたいですわね? ぐーで殴られたいみたいですわね? 十発くらいは当然ですわよね?」 「わかったわかった、嘘です嘘です。 靴踏むのやめてくれ。歩けないし、爪が割れる」 「……まったくもう」 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:37:54呆れた様子でそっぽを向く亞璃須。 周囲から「またやってる」「見せつけやがって……」などというささやき声が聞こえてきたが、志智はその意味について考えることはしないようにしていた。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:38:04「━━寝ぼけてる、か」 空を見上げると、雲一つない碧が広がっている。その色は亞璃須の右目よりは少し薄く、そして遠い。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:38:13「でも、寝ぼけるにはちょうどいい日だと思わないか」 「……まあ、そうですわね」 ほんの数十秒。二人は茫と空を見上げつづけた。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:38:27言葉もなく。視線も交わらず。 それでも、すぐ近くにある互いの存在感が妙に心地よかった。 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:39:19【お知らせ】 本日の投稿はここまでです。この作品に興味をもった方、特にバイク乗りの方、@mor_cy_dar をフォローしてください。そして友人に広めてあげてください。物語の感想・こんな話が読みたいといったご要望も @IngaSakimori にてお待ちしております。
2013-10-12 20:43:32【モーターサイクルダイアリー・秘密の情報集 志智編】 検索エンジンの履歴 『バイク便 正社員』『婿入り 解消』『保険金 死亡』 愛車で一番好きなところ 『標準より少しだけ小さいヘッドライト』 一つだけ願いが叶うなら 『両親の事故死をなかったことにしたい』 #mor_cy_dar
2013-10-12 20:44:57