【twitter小説】氷のイコン#2【ファンタジー】

騎士ミェルヒと冒険画家のエンジェは氷のダンジョンに挑みます。そこで不思議な氷漬けの女性を見つけて……? 小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
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減衰世界 @decay_world

「騎士さん、私自身もどうしていいか迷っているのだよ」 「雪熊が……喋るだと!?」 「この生き物は雪熊というのか。この低級生物に憑依している私自身は精神生命体だ」  そういえば雪熊は口を動かしてはいない。これもテレパスの一種だろうか? それにしては自然に聞こえる。 56

2013-09-23 16:03:13
減衰世界 @decay_world

「私も彼と同じく冷たく眠る主人の召使だ。この先で見たろう。あの氷の中で美しく眠るお嬢様……彼、ああ、あのゾンビだ。彼は私の同僚だ。我々は元の肉体を失い、それぞれ違った方法で肉体を手に入れた」 57

2013-09-23 19:49:16
減衰世界 @decay_world

「私も迷っている。我々は主人に忠義を誓ったのだ……だが、それは人道に反する結果を生んでしまった。我々の行いを知ったらお嬢様は酷く悲しみ、泣いて、怒るだろう。だが我々は忠義によって生きているのだ。忠義こそ我々の存在なのだ」 58

2013-09-23 19:55:27
減衰世界 @decay_world

 ミェルヒは黙って剣と盾を拾った。盾を前面に向け、長剣を上段に構えた。 「心配するな。お前たちは忠義によって俺と戦い、忠義に殉じ死ぬんだ」  雪熊はどこか笑ったような表情になった。実際には変わらなかったかもしれないが。 59

2013-09-23 20:03:48
減衰世界 @decay_world

「ふふ、そうなったらどれほど楽なことか……戦いは楽だ。そこには二つの結果しか無い。生きるか、死ぬか。コインは投げられたら必ず表か裏になる。だが青年よ、忠義に生きるものは強いぞ」 60

2013-09-23 20:11:14
減衰世界 @decay_world

「お前を倒し、ゾンビも倒し、さらわれたひとたちやエンジェを助ける。それが僕の忠義だ」  それっきり二人は話すのをやめた。狭い通路で間合いをゆっくりと詰めていく。ミェルヒは急ぎたいのはやまやまだった。だが、隙を見せれば死ぬのはミェルヒだ。 61

2013-09-23 20:16:04
減衰世界 @decay_world

 赤錆の全身鎧に霜が張っていく。ミェルヒは奇妙だと警戒した。いくら寒いとはいえ凍るのが早すぎる。ミェルヒは自分の周囲の霜が成長していくのを感じた。魔法の類か、ミェルヒは意を決し盾を前に突撃する! 62

2013-09-23 20:20:42
減衰世界 @decay_world

 ヴォオオオと雪熊が咆哮をあげる! 咆哮は氷の波となってミェルヒに打ちつける! ミェルヒの突進は幾分か勢いを減らしたが、盾が氷の波をはじいてくれる。剣の間合いまであと3歩、2歩、1歩……近づくにつれ氷の波は圧力を増していく。 63

2013-09-23 20:27:24
減衰世界 @decay_world

「ウオオオオオ!」  ミェルヒは力強く最後の1歩を踏みこんだ。氷の波を切り裂き……ミェルヒの鈍く銀色に光る剣は振り下ろされた。 64

2013-09-23 20:29:27