放射能観の歴史―甲状腺疾患診断と放射線

日本のひとびとは放射能をどのようにとらえてきたのでしょうか。今回は、医者と放射線のつきあいの歴史の一端を見てみましょう。日本を代表する内分泌外科医のひとり、藤本吉秀(1926年生)の著作からの抜粋をまとめました。 藤本吉秀氏略歴など modern media 2009年5月号(第55巻5号) http://bit.ly/191o2wr
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dabitur @dabitur

[book] 今日はこのへんをひとつ。甲状腺疾患専門医と放射線とのかかわりを証言する「放射能観の歴史」の一エピソード。 / 藤本吉秀(1997:42)『いろはにほへと―甲状腺・副甲状腺疾患診療の真髄を求めて』 http://t.co/0ZtTRq5eZr

2013-11-25 01:34:03
dabitur @dabitur

甲状腺機能検査. 「昔から甲状腺の各種機能検査法があったわけではなくて,甲状腺の機能検査というと昔はもっぱら基礎代謝率(BMR)の測定だったですね。これは鼻をつまんで,口にゴム管をくわえ,虚心坦懐,静かに寝ているような状態で息をするのです」(藤本吉秀(1997:42))

2013-11-25 01:34:48
dabitur @dabitur

[quote] 「そして1分間の酸素消費量を測るのです。それで基礎代謝率が上がっているということは酸素消費量が上がっているということです。患者が変な検査をされると思うと,思 っただけで測定値は上がってしまうので,心臓がどきどきしたら駄目です」(藤本吉秀(1997:42))

2013-11-25 01:35:34
dabitur @dabitur

[quote] 「鼻をつままれてゴム管をくわえたら誰でも少しは変になりますよね。ですから,これはあまり信用できない検査法なのですが,短時間だけ効くような眠り薬を静注して測るとかいろいろ工夫もしたものです」(藤本吉秀(1997:42))

2013-11-25 01:36:00
dabitur @dabitur

[quote] 「「〔また、〕放射性ヨード(I131)を用いてそれの甲状腺摂取率の測定は昭和30年頃できていました」(藤本吉秀(1997:42)) http://t.co/gn7QIwh5Ch

2013-11-25 01:37:02
dabitur @dabitur

[quote] 「それから同じくI131を投与して甲状腺シンチグラムをとりましたが,そのためには 100μCi〔3.70MBq〕と多めに使ったので,甲状腺における被曝量は100rad〔1Sv〕以上とあまりにも被曝線量が大きく」(藤本吉秀(1997:42))

2013-11-25 01:38:49
dabitur @dabitur

[quote] 「しかしそのわりには診断価値があまりないということで,私どもは昭和40年頃にやめました。いま頃になってシンチグラムは甲状腺結節性病変の鑑別にあまり役に立たないという意見が世界的に出始めてきました」(藤本吉秀(1997:42))

2013-11-25 01:39:26
dabitur @dabitur

[quote] 「昭和43年頃からT3レジンアツプテイク,昭和45年にTSH,それからT3,T4が 測れるようになりました。サイログロブリン(Tg),fT4,fT3が測れるようになったのはわりあい最近で,TSH受容体抗体(TRAb)*はさらに最近です」(藤本吉秀(1997:43)

2013-11-25 01:41:02
dabitur @dabitur

[quote] 「「TSHが測れるようになったのは昭和45年ですから,それまではバセドウ病ではTSH がたくさん出て甲状腺が腫れるのだという人もいまして,とんでもない話です。いまはTSHが出ないのがバセドウ病ですね。時に医者というのはいい加減なことを言うものです」(ibid.)

2013-11-25 01:41:53
dabitur @dabitur

[quote] 画像診断.「シンチグラフィI131の半減期が8日ですから,これはいかんというのでテクネシウム(Tc-99m)にとってかわるのです。テクネシウムでとった甲状腺結節のシンチグラム所見は必ずしもヨードのものと一致しないのです」(藤本吉秀(1997:43))

2013-11-25 01:43:04
dabitur @dabitur

[quote] 「〔たとえば、〕つい最近日赤で7歳の男児で甲状腺乳頭癌があった症例では,テクネシウムのシンチで腫痛によく入っているのです。入るので良性結節という診断がついているのです」(藤本吉秀(1997:43))

2013-11-25 01:44:52
dabitur @dabitur

[quote] 「〔けれども、〕私は,触診でリンパ節が腫れていたし,超音波検査でも腫痘の辺縁が完全に平滑でないので癌と診断していたのです」(藤本吉秀(1997:43))

2013-11-25 01:46:35
dabitur @dabitur

[quote] 「〔同様に、〕甲状腺乳頭癌患者をI311あるいはI123でシンチ*を行うと,これは癌に放射性ヨードが入りません。いわゆるcold noduleですね。このようにTc-99mとI131とは必ずしも一致しないのですが、一般的にはほぼ一致するということでやってきました」

2013-11-25 01:48:38
dabitur @dabitur

[quote] 「「私らが超音波を初めて甲状腺結節の検査に使ったのは昭和37年です。英語で論文を書いたのが昭和42年です。超音波検査を甲状腺結節にやったというのは,私らが世界で最初です」(藤本吉秀(1997:44))

2013-11-25 01:49:25
dabitur @dabitur

[quote] 「その後しばらく経って発表された最初の頃の欧米の論文には私どもの文献がいつも引用されていたのですが,その後続けて発表しなかったので間もなく消えました。数年経つとわれわれが始めたといわんばかりの調子でアメリカの放射線科医がどんどん論文を書いています」(ibid.)

2013-11-25 01:50:07
dabitur @dabitur

[quote] 「軟X線撮影を系統立てて始めたのも私らですが,その前に少ししている先生がもちろんいるのです。でも,やったけれどもそう役に立たないという結論が出ていたのです」 (藤本吉秀(1997:44))

2013-11-25 01:51:09
dabitur @dabitur

[quote] 「昭和45年頃三井記念病院にいた秋貞雅祥君の全面的な協力を得て基本的な検討から始め,これ〔軟X線撮影〕は非常にいい方法だということで,少なくとも日本における乳頭癌の診断には本当に役に立つと思いました」(藤本吉秀(1997:44))

2013-11-25 01:52:13
dabitur @dabitur

[quote] 「これで初めて診断がついたという症例も何例かあったと思います。それ以後ずっと臨床上よく用いてきたのですが,残念ながら最近になって,超音波機器の性能がものすごくよくなり,それで十分所見がとれるようになったので軟X線撮影を2,3年前からやめました」(ibid.)

2013-11-25 01:53:01
dabitur @dabitur

[quote] 「去年*癌研に来たときに,すべての症例でまだゼロラジオグラフィをやっていたので,私はやめましょうと*言ってやめました。軟X線撮影は被曝線量が少なくないのです。乳腺のマンモグラフィと同じことですが,やらずにすむものはやらないほうがよいといってやめました」(ibid.

2013-11-25 01:54:30
dabitur @dabitur

[quote] 「「ところが超音波が甲状腺結節の鑑別にいいと言っているのは日本だけで,ほかの国では信用できないといっています。それは外国ではadenomatous goiter の頻度が日本より遥かに高いからです」(藤本吉秀(1997:44))

2013-11-25 01:55:29
dabitur @dabitur

[quote] 「また,白人には日本の adenomatous goiter と違う姿の,濾胞癌などとそっくりのような充実性で球形に近い adenomatous goiter の結節が多いのではないでしょうか。以前イタリア人の患者でそうした症例を経験しました」(ibid.)

2013-11-25 01:56:54
dabitur @dabitur

[quote] 「そうなれば〔結節と〕腺腫や濾胞癌との鑑別が難しいのでしょう。日本ではそういうadenomatous goiterはあまりないし,しかも癌というとほとんどが乳頭癌ですから,乳頭癌の診断には超音波が非常にいいです」(藤本吉秀(1997:44))

2013-11-25 01:57:47
dabitur @dabitur

[photo] 参考図表 / 近年における甲状腺疾患診断・治療の進歩 / 藤本吉秀(1997:43)) http://t.co/YVgvx354Zi

2013-11-25 02:14:31
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