ストレイトロード:ルート140(2周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。1日1話ペースで現在も継続中。 ここでは51~100をまとめました。 元の短編の掲載場所: http://www.gekkado.jp/
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、61。散歩。

2013-11-19 20:41:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車が学校らしき建物の前を通過する時、藍が言った。「なんで勉強しなきゃいけないの。学校終わっても宿題、家でも勉強。凄く嫌だった」学校は物事を考え解決する姿勢も教える場だ、と説明しても経験と実感がなければ理解は難しいだろう。「…風のことを知ればもっと強くなれるのでは」何故か殴られた。

2013-11-20 23:33:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、62。宿題。 サボり続ける限り、旅の間にも溜まっていくもの。

2013-11-20 23:35:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

観光用の水路を小舟に乗って進む。藍は船縁を掴んで身を乗り出し水面下を覗き込もうとしたらしく、船頭に叱られている。沿岸の名所の案内が途切れている間、私は人が行き交う橋を眺めていた。彼らは彼らの世界を生きている。恐らく誰も私達を知らないし、面倒に巻き込むこともないだろう。良いことだ。

2013-11-21 19:27:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、63。水路。 一周してから2人は元のルートへ帰っていく。

2013-11-21 19:27:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

空港の建物は扉も窓も固く閉ざされ、格納庫は厳重な封印を守っていた。かつて毎日のように飛行機を送り出していた滑走路は今や荒れ果て、冷たい風だけが通り過ぎていく。「なんでこんな長い道路が必要なの?」藍が首をかしげた。彼女の世代は地表を這うように生きる人間しか知らない。改めて実感した。

2013-11-22 23:37:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、64。世代。

2013-11-22 23:37:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

起伏に富んだ地形は一面の緑に覆われている。どこまでも続く草原の真ん中を、段ボールでできた手製のソリが駆け抜ける。いつの時代も子供が考えつく遊びは同じらしい。滑走の勢いで草の上に転がった藍は自分の足で坂を登り、その苦難を忘れた顔でまた飛び出していった。何往復目なのかもう分からない。

2013-11-23 23:30:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、65。草原。

2013-11-23 23:30:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が眉間に皺を寄せる。「どうしたの?魂が抜けそうな顔してるけど」それは食糧を詰めたザックを背負い、ギリギリ握れる数の紙袋を両手に持った私のことなのか。一瞬気を抜けば腕がちぎれそうな状態に気づいたかと思いきや、手は差し伸べられない。「追い風呼ぶから早く歩いて」そんな支え方は初耳だ。

2013-11-24 19:51:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

地下へ続く階段を下りた先、固く閉ざされた扉を開く。懐中電灯の光で空間を切り裂くと、密閉されていた空気の匂いが解き放たれて鼻腔を刺激した。私の腕の下をくぐって前に出た藍は何も言わずがらくたの山を荒らし始めた。隙間や引き出しの中を頻繁に覗いているから、探し物は恐らく小さいのだろう。

2013-11-25 22:06:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、67。地下。

2013-11-25 22:06:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

町外れのスタンドで車に燃料を入れる間、藍は近くで暇を潰すと言って姿を消した。探してみると、彼女は岩に腰かけ真昼の月を見上げていた。「昔の人って本当に月に行ったんでしょ?どの辺歩いたのか教えて」指差した白い月は大半が空の青に溶け、輪郭しか識別できない。分かりやすい説明は難しそうだ。

2013-11-26 22:45:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「勝負しない?」藍が窓の外を指差した。山の上に大きな雲がかかっている。「今から何分後に雨が降ってくるか当てるの」一方的に決めると藍は窓を開け、目を閉じた。私は運転を続ける傍ら、風速や方向を見積もり、遠い昔に習った知識を動員して解答を導き出す。天候の変化まで、「30分」声が揃った。

2013-11-27 23:03:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、69。天候。 不思議なパワー対科学の力。

2013-11-27 23:04:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

火にくべる枯れ枝を拾いに行っていた藍が、どこで見つけたのか空の鳥籠を持ってきた。何かとの衝突で所々曲がっているが直せそうではある。何に使うのかと尋ねたら、こんな返答があった。「決めてないけど、何かに使えそうじゃない?」鳥を飼うなどと言い出さなかったから良かった。そんな余裕はない。

2013-11-29 00:08:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、70。鳥籠。

2013-11-29 00:08:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

凄惨な現場だった。崩れかけた壁に黒く焼きついた影はそこに確かに人がいたことを証明していたが、影の持ち主はもういない。踏み込んだまま動かない藍を見ると、その足元だけが濡れている。顔を見ようとしたら背を向けられた。「…泣いてない」彼女はそう呟き、頬の涙を残らず上着の袖で強引に拭った。

2013-11-30 00:08:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

駐車場から歩いて数分。通りかかった家の窓辺に何かを見つけて藍が足を止めた。見ると、白いドレス姿の人形が表通りに背を向ける形で置かれている。藍は無言で近づきガラス越しに人形を眺め、静かに首を振った。「気のせいだった」小さなため息が窓を曇らせた。「似てたの。わたしが昔持ってた人形に」

2013-11-30 22:51:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、72。人形。

2013-11-30 22:51:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

雨上がりの朝は風が冷たかった。未舗装の道をスキップして進む藍の後ろを、私は少しだけ距離を置いてついていく。泥濘に足を取られはしないかと心配していたのはどうやら私だけのようで、本人は飛び散る泥のしぶきさえも楽しんでいるらしい。昨日見つけて買った新しい長靴がよほど気に入ったのだろう。

2013-12-01 22:41:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、73。泥濘。 「ぬかるみ」と読みます。

2013-12-01 22:41:42
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