『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#2
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2014-02-07 00:54:16あらすじ:ゴリラスレイヤーは仇敵たるダークゴリラと死闘を繰り広げ、辛くも引き分ける。だがそれは、新たな敵『セクト』を追う戦いの始まりでもあった。
2014-02-07 00:55:11ゴリラスレイヤーは、トレンチコートにキャスケット、手袋、マスク、サングラスと重防備を固め、ネオマタディの街を歩いていた。重金属酸性スコールが大地を濡らし、人はまばらだ。 1
2014-02-07 00:57:22街はゴリラにとっての異郷であり、実際ゴリラが街中に入るのは危険が伴う。まして、暮らす事など。それこそ、シンジケートのような組織的後ろ盾が無ければ不可能であろう。 2
2014-02-07 00:58:31この格好も、もし20世紀のこの街ならばすぐさま不審者と扱われた筈だ。だが重金属酸性スコールが降り注ぐ現在、このような出で立ちも決して珍しくはない。自然破壊が結果としてこの異郷からゴリラを守る。なんたる皮肉か。 3
2014-02-07 00:59:28ゴリラスレイヤーは『アフリカ』という看板を掲げる喫茶店の前で歩みを止めた。懐からメモを取り出し、見比べる。……住所はここで間違いない様だ。 4
2014-02-07 01:00:55話は数日前に遡る。ゴリラスレイヤーは『セクト』の情報収集を試みていたが、その成果は芳しく無かった。だが、彼のゴリラ視力はとある新聞の一行広告に目を止めた。『赤黒のゴリラ殿 1960:8MAにて待つ』。 5
2014-02-07 01:05:18簡単な暗号であった。ゴリラ推理力によって待ち合わせ場所を導き出したゴリラスレイヤーは、こうして待ち合わせ場所を訪れている。ネオマタディ、喫茶店『アフリカ』八番テーブル、15日、午前8時6分ないし7分。 6
2014-02-07 01:06:51店内はスコールを避けた人々で溢れていた。ゴリラスレイヤーは店の奥、8番の個室(テーブルに番号は付いていなかった)へと進む。部屋には誰も居ないが、ゴリラスレイヤーは其処へ腰掛けた。給仕がバナナビールを持って来る。……いや、給仕ではない。 7
2014-02-07 01:09:28ブロンド髪のコーカソイド女性だ。女はバナナビールをテーブルへ置き、ゴリラスレイヤーの向かいへと座った。「貴方が、赤黒のゴリラさん?」「……」ゴリラスレイヤーは答えず、辺りを見回した。 8
2014-02-07 01:11:31周囲にゴリラの気配は無い。ナラクピテクスも沈黙している。ゴリラスレイヤーは無言のままキャスケットを取り、サングラスとマスクを外した。ゴリラ然とした頭部が露わになる! 9
2014-02-07 01:12:49……だが、女に特に驚いた様子は無い。「……貴方、どう見てもゴリラね」寧ろ興味深げにゴリラスレイヤーの頭部を見回し、そう言った。「用件は何だ」「まずはお礼を。あんな呼び出しに応じてくれてありがとう」 10
2014-02-07 01:17:04「私はアンシー・ダロウ(注:キング・コングのヒロインから取ったと思われる)。フリーのジャーナリストよ」彼女、アンシーは続けた。「ジャーナリストか。喋るゴリラの記事でも書く積もりか?」ゴリラスレイヤーの対応は冷ややかだ。 11
2014-02-07 01:22:29アンシーを名乗る彼女は何者なのか。何故ゴリラスレイヤーへ接触を求めたのか。その点が明らかでは無いからである。『セクト』の罠である可能性も否定出来ない。「どうやら、まだ疑われているみたいね」「……何が目的だ。答えろ」 12
2014-02-07 01:24:41「もちろん、喋るゴリラなんかじゃない。この国を覆うヴェールを取り除き、本当の姿を世界へ伝える事」「如何にもジャーナリストだ」ゴリラスレイヤーはバナナビールへ手を伸ばす。「それなら、何処ぞでインタビューでもして来ればいい」 13
2014-02-07 01:26:22「なら、インタビューよ。赤黒のゴリラさん、貴方のお名前は?」「……ゴリラスレイヤー」「目的は何?」「……全てのゴリラを殺す」ゴリラスレイヤーは、半ばヤケのような心持ちであった。 14
2014-02-07 01:30:56復讐の手がかりは一向に得られず、呼び出された先には謎の女。構うまい。何も知らぬ者が聞けば、ただの与太話だ。ゴリラの事も。復讐の事も。……彼自身の事も。喋るゴリラの語った、取るに足らない話。 15
2014-02-07 01:33:19「色々な団体に怒られそうね」アンシーは微笑した。「そのゴリラではない」生物種としてのゴリラは、既に絶えた。彼の師と共に。「ゴリラ憑依者。邪悪なる古代ゴリラの亡霊だ。この国を影から支配している」 16
2014-02-07 01:34:21「でも、今は混乱しているみたい。何故かしら?」「ゴリラは、」バナナ無しでは生きられぬ。そう言いかけてゴリラスレイヤーは止める。アンシーの質問は、知らぬ間に核心へと近づいていたからだ。 17
2014-02-07 01:36:00ゴリラの亡霊が国を支配している。それだけならば、ただの荒唐無稽な与太話だ。しかし、これ以上はそれでは済まなくなる。その情報にリアリティが伴えば。バナナ供給の壊滅と国内の混乱の因果関係。調べれば分かる事だ。だが、 18
2014-02-07 01:38:05「ゴリラは、バナナ無しでは生きられないから?」「……何処で、それを」ゴリラスレイヤーの表情が変わる。「調べたの。この国の体制が変わりつつ有ることも。……貴方の、戦いを見てから」ゴリラスレイヤーと、ダークゴリラとの死闘を。 19
2014-02-07 01:45:17「私の目的は、この国を覆うヴェールを取り除く事。そのためには、ゴリラについて調べる事が一番早いと思ったの」ほんの数日で……ゴリラ同士の戦いというヒントだけで、アンシーはここまで突き止めたというのか。 20
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