『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#2
ゴリラを殺し、ゴリラを殺す。己はそのためだけに有る。所詮、ゴリラスレイヤーもまたゴリラだ。何事も、暴力で解決する事しか出来ぬ。それが一番の選択なのだと信じて。 41
2014-02-07 16:38:15「そして、然る後弱体化した『セクト』を壊滅させる」バナナ製造機は物だ。また輸入される恐れがある。だが、ゴリラの替えは効かない。そして、組織を……群れを失ったゴリラは実に脆い。 42
2014-02-07 16:39:16((ウホ……ウホホ……))ナラクピテクスが「ゴリラを殺せ」と囁く。もっとゴリラの命を捧げろ、と。その通りにしてやろう。……少なくとも、『セクト』を壊滅させるその時までは。 43
2014-02-07 16:40:21「『セクト』はシンジケートを吸収し、肥大化を続けている」「そうか」「叩くなら早いほうがいいわ。バックには政府も噛んでいるみたい」アンシーの適応力は目覚ましい。「承知している。それに」ゴリラスレイヤーは笑った。 44
2014-02-07 16:41:45それは人のものでも、ましてやゴリラの物でもない、悪鬼の笑みだ。勝算はある。アンシーの存在。嘗て彼を拒んだ文明という壁は、今や彼の武器だ。彼女の情報の下、十全に力を振るうことができる。ならば、 45
2014-02-07 16:43:03「……手間が省ける」何れは、全ゴリラ憑依者を殺すのだ。それが単に、遅いか早いかだけの事。己の殺ゴリラ衝動を乗りこなすまで。「でもそれだけじゃないわ。日本から護衛の戦力が来ている」そう言ってアンシーは資料を机の上に広げた。 46
2014-02-07 16:45:06「クローンヤクザ。簡単に言えば、クローンの兵士。命令には絶対服従、練度も高い。ま、ビッグディールには付き物みたいね」「それは厄介そうだ」無論皮肉だ。ゴリラですらない人形など。「でも、それだけならゴリラの敵じゃないわ」 47
2014-02-07 16:46:41「……何かあるのか?」敵ゴリラ。戦闘ロボット。或いは他のバイオ兵器か。例えそれらが相手であっても、今の彼は戦い、勝つだろう。だが、アンシーの答えはゴリラスレイヤーの予想を裏切る物であった。 48
2014-02-07 16:47:55男は空を見上げていた。この国の空は澄んでいる。ネオサイタマよりも、キョートよりも。それが何故か、無性に憎らしかった。 51
2014-02-07 23:51:35ネオサイタマからは失われて久しい自然の息吹。それが、微かだがここにはまだ感じられる。この海の上でさえも。キョート経由で輸出された秘密物資の護衛。それが男の任務であった。 52
2014-02-07 23:52:37ガイオンからの空路に始まり、複雑怪奇なルートを辿った果てがこの目的地である。だが、彼自身はヨロシサン製薬のビズに興味は無い。ただ異国の地を一目見たい。そんな好奇心が頭をもたげただけの事。 53
2014-02-07 23:53:34それすら、今となっては後悔の種だった。「環境に文句を言う奴に晴れ舞台は一生来ない」マサシの諺を自分に言い聞かせた。しかし、異郷の地は想像以上に彼の精神を弱らせている。「スシが食いたい」そう呟く。 54
2014-02-07 23:54:44あと数日。鉱山を接収する段取りにさえなれば、彼と船に残る作業チームの出番だ。ヨロシサンからの応援も来るだろう。そうすれば、この船ともオサラバ出来る。街に出れば、スシだって食べられるかも知れない。 55
2014-02-07 23:56:06「あと数日だ」男……いや、プレシャスという名のニンジャは輸送コンテナ船の上で再び天を仰ぐ。この時の彼は、ゴリラという名の大地の神秘の事など知る由も無かった。 56
2014-02-07 23:57:52