【実況】 キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー #5(発掘)
「あと10分後に開始してください」。ケータイIRC端末でSOUKAI_AGONY宛てにWhisperをコマンドした後、タメジマ=サンは思わず天を仰いだ。天といっても、そこは『ヨタモノ』のスタッフ茶の間オフィスの低い天井が見えるだけだが。
2010-11-03 21:39:49タメジマ=サンを取り囲んでいるのは、6フィート以上の屈強な体格をもつ四人のシシマル・パンクスであった。なるほど、この4人のアイキドー使いに、今は亡き元スモトリ・タケゴは手玉に取られてしまったというわけだ。無理もない。
2010-11-03 21:45:49ここでタメジマ=サンがたとえばチンピラ防塵スーツの内ポケットへ手を入れたとする。その瞬間、前後左右からアイキ・パンチが繰り出され、タメジマさんは全身を複雑骨折して病院送りとなるであろうことは間違いない。
2010-11-03 21:48:23「オマエはバカか? 繰り返しノーを突きつけられるために、わざわざまたこうしてやってきたのか? お前のドンくさいバウンサーみたいにシコタマ殴られたいか?」 部屋の隅のチャブテーブルにあぐらをかいたまま、『ヨタモノ』オーナーは凄んで見せた。
2010-11-03 21:56:24「へへへ、いやあ、もう物騒なことはやめようと思いまして。危ないんで」タメジマ=サンは卑屈な笑みを浮かべて見せた。「考え直しちゃあ、くれませんかねえ? もうね、同意取れてるんです、こちらさん以外……」「カーッ!ペッ!」オーナーが痰を吐いた。
2010-11-03 22:03:24痰は放物線を描き、四人のシシマル・パンクスに囲まれたタメジマ=サンの額にピシャリと当たった。四人に囲まれた状態で、タメジマ=サンはハンカチに手を出すことすら許されない。恥辱!
2010-11-03 22:04:35オーナーは親指・人差し指・中指をくっつけ、小指と人差し指を立てて威嚇した。これは日本古来から存在する明確な敵意表現であり、キツネ・サインと呼ばれる。「オトトイキヤッガレ!」オーナーはどやしつけた。
2010-11-03 22:08:23「へへへ、いやいや、物騒はやめました。かわりに、後戻りできないことしちゃいまして、もうね、アンタも私も、後戻りできないんです、ええ」タメジマ=サンは笑い出した。笑いながら、泣き出した。オーナーが眉をしかめたそのときだった。「アイエエエエエーエエエエエ!」
2010-11-03 22:11:45表のフロアで鳴り響いていたモクギョコアが、ウギョウギョと不快なノイズを発し、ぷっつり途絶えた。その静寂を、痛ましい悲鳴が切り裂いた。パンクスの怒号があがりかけるが、「アイ、アイエエエエエエ!」さらに痛ましい悲鳴が、ざわつきを制してしまった。
2010-11-03 22:13:55「お前らそこで待っとけ!」言い置いて、オーナーは茶の間オフィスを飛び出した。静寂のフロア。騒ぎの発端はDJブースだ!何が起こっているかを知ったとき、オーナーの口からも悲鳴がほとばしり出ていた。「ア、アイエエエエエエエ!」
2010-11-03 22:29:37モクギョコアDJは回転を続けるターンテーブルの上で、蝋人形のディスプレイのごとく棒立ちになっていた。その隣、ミキサーの上に土足で立つのは、ラバースーツを着て体中にタタミ針が刺さった異様な男である。自分の体に刺さったタタミ針を一本一本抜いては、回転するDJの体に、ナムアミダブツ!
2010-11-03 22:35:33「お、オブジェはゆっくり作るんです、あー、あーイイ……そうして、こう、私があなたになります、あなたが私に、あーイイ……」 針まみれの男は震えながら満足げに呟いた。また一本タタミ針を抜き、DJの眉間に、ナ、ナムアミダブツ!「アイエエエエエエエエ!」
2010-11-03 22:37:59「オーディエンスのみなさん、動いてはいけません、ひとりひとり順番にやっていきます、とても時間がかかりますので。動いてはいけませんよ、その人が次のオブジェですね、わかりますね、あーイイ……邪魔は不可能なんです、そのう、わたしはニンジャですので……」
2010-11-03 22:40:47ニンジャという言葉が彼の口をついて出たとき、この場にいるすべての人間の脳裏に絶望が去来したに違いない。もはや、まったき静寂がヨタモノのフロアを支配していた。
2010-11-03 22:43:06地震、雷、火事、ニンジャ。命知らずのパンクスが例外的に恐れるものを言い表したジョークである。裏を返せば、それほどまでに災害的なものでなければパンクスを恐れさせることはできない、という意味でもあった。だが、今こうしてこの場を掌握しているのは、まさにそのニンジャだというのだ。
2010-11-03 22:43:50へその下から額まで、一直線に八本のタタミ針を突き刺されたモクギョコアDJは、静寂の中、トコロザワ・ケバブのようにターンテーブルの上でクルクルと回り続けていた。彼は既に恐怖と苦痛によって絶命していた。
2010-11-03 22:46:27ところでninja slayerでググってもなかなか該当作品の情報が手に入らず苦しい思いをするなど。 #NJSLYR
2010-11-03 22:48:47「フザッケルナー!」裏口から飛び出してきた二人のシシマル・パンクスが、凍りついた客の間をぬって、DJブースへ殺到する。四人のアイキドー使いのうちの二人である。走りながら、二人はアイキ・パンチの構えを取った。だが、しかし!「イヤーッ!イイー!」「アイエエエエエ!」「アイエエエエ!」
2010-11-03 22:53:43一瞬のことであった。針男が体を震わせたと思うと、二人のシシマル・アイキドーが、びくん!と棒立ちになっていた。二人の額から臍下にかけて、8本ずつ、タタミ針が縦一直線に突き刺さっていた。ナムアミダブツ!二人はその姿勢のまま絶命していた。DJと同じ運命を、一瞬にしてたどったのだ!
2010-11-03 22:56:44遠く離れた相手を一瞬に絶命させたタタミ針。これはいかなるトリックか。それすなわち、ニンジャ筋力のなせる業であった。彼は己の体に刺さった針を、さながらジャンピング・チヨヤ・サボテンのように、ニンジャ筋力によって押し出し、射出したのである。
2010-11-03 23:02:10