Orphe兄貴の艦これ航海日誌~クーデター編(2013年10月)

僕のケツが!
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orphe @orphechin

町を抜け出し、山の中に入る。あたりはもうすっかり暗い。追っ手が来ないことを確認し、木の幹に寄りかかり、腰を下ろす。マスクを捨て折れた歯を吐き出しタバコに火をつける。ひどくしみる。ここからは町がよく見える。鎮守府の灯りはもう大分遠い。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 21:50:38
orphe @orphechin

遠くに見える鎮守府の灯を見ながら、かつての好き勝手な日々を思い浮かべた。俺もあいつらも-羽黒も-皆楽しく殺していた。だがそれは全て間違っていた。俺が間違えていた。そして今はたった一人、俺が報いを受けている。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 21:53:21
orphe @orphechin

痛みと共に煙を吹き出すと、喉の奥から笑いが出てきた。俺が一人ではしゃいでいただけ。あいつらはそれにつきあっていただけ。そして俺は泣き出した。おもちゃを取り上げられたガキのように。もう帰ってこない日々を思って泣いた。風も虫も、それには応えなかった。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 21:56:52
orphe @orphechin

東京、足立区の一角のアパート。鎮守府を離れた今の俺の住処がここだ。アパートの下からは罵声と銃声が定期的に聞こえてくる。深海棲艦との戦いにより未曾有の好景気に沸くこの国には、富を求めて世界中から多くの人間が集まってくる。足立区はそうした出稼ぎの集まる土地だ。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:00:35
orphe @orphechin

移民の中には最初からある程度のツテを持って来る者もいるが、不法な業者に大金を払い着の身着のまま東京に来る者も多くいる。足立はそんな連中の溜まり場だ。この地で生まれ、漫画家から成り上がった提督の銅像の下には移民のテント小屋が広がっている。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:03:39
orphe @orphechin

こんな状況だからこそ、身を隠すのには丁度よい。オフショアにある俺の口座はまだ凍結されてないし、プライベートバンクの担当者からも特に警告は入ってこないが、それでも大っぴらに金を使えば敵対者にばれるし、何よりそんな気もない。俺は寝て起きてを繰り返す単なる廃人だ。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:07:54
orphe @orphechin

ある日の晩、カップ麺を啜っていると玄関の扉のドアノブがへし折れる音がした。強盗か。足立ではよくあることだ。メメ50の単行本の山の中からパイソンを取りだし、玄関に向け、撃つ。静寂。悲鳴すら聞こえない。おかしい。突如、扉が蹴破られる。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:14:09
orphe @orphechin

扉の向こうには加賀がいた。右手にドアノブ、左手には握りつぶされたパイソンの弾丸。「提督、ここにいたのね。ドアを壊してしまったわ。ごめんなさいね」悪びれる様子もなく、俺の部屋に上がり込む加賀。そこに天龍、龍田、そして赤城が続く。例によって赤城は四足歩行だが。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:16:22
orphe @orphechin

「お前ら何でこんな所に」「話は後よ。提督、まずはお風呂に入って。臭いわ」言うなり無理くり俺の服を脱がす加賀。「これも洗ってないのね」「天龍ちゃんの部屋みたいにだらしないわね~」「俺は関係ないだろ!」赤城は俺のカップ麺をすでに平らげていた。何なんだよ一体。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:21:50
orphe @orphechin

二時間後、ピカピカになった部屋の中で、加賀が買ってきた服を着ながら、龍田の手料理を食う俺がいた。よく見ると加賀と赤城は私服だ。「お前ら、鎮守府勤務はどうした」「やめました」事も無げに加賀は言う。「主君を妄りに変えるは艦娘の恥。あくまで貴方が私の提督よ」 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:27:16
orphe @orphechin

加賀は奇妙な女だ。普段は無慈悲な暴君として振る舞いながらも、俺に逆らった事は一度としてなく、謀叛の気すら見せない。今にしても落ちぶれた俺の所に来てどうぞご命令をといわんばかりの態度だ。「私は空母であって提督ではありませんから」こいつの考えはわからん。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:30:06
orphe @orphechin

天龍はなぜ俺の所に?「俺がいないと何にもできないだろ、だから来てやったんだ」「私は天龍ちゃんがいればそれでいいですから」龍田はまあそうだうな。「赤城も、そもそも加賀が第一の主人だしな」「赤城さんがついてきた理由は、それだけとは限らないわ」加賀、なんだって? #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:36:58
orphe @orphechin

加賀はレポート用紙らしきものを俺に見せる。「赤城さんの胃袋から検出された成分よ」プルトニウム…あいつの数少ない弱点じゃないか。「検出されたのは一回きり。あの男が鎮守府に来たとき。提督、赤城さんの様子、おかしくなかった?」 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:40:27
orphe @orphechin

たしかにあのとき、赤城は少佐を食おうとした。だがそれはあいつの食欲のせいだと思っていた。「赤城さんは警戒していたのよ、あの男がまた自分を殺しに来るとね。そうよね、赤城さん」赤城は偉そうに一吠えした。 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:43:18
orphe @orphechin

「その件は他の連中には話したのか」「ええ。でも誰も聞かなかった。というより、羽黒さんがそんなのは嘘だと言い張ったせいでうやむやになったわ」「あいつ、何かおかしいんだ」天龍も続く。「少佐に不利な意見を潰して回ってる。あいつそんなに器用なやつだったか?」 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:46:29
orphe @orphechin

「正直な所、俺も加賀も少佐と羽黒を信頼してない。菓子ごときで艦娘を吊ろうとする奴も、そんな奴に不自然なぐらい惚れ込んでるあいつもな」「提督、あなたはハメられたのかもしれない。そして羽黒さんにも、きっと何かあったはずよ」 #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:50:43
orphe @orphechin

だが、あいつははっきりと俺に言ったんだ。 「私はあなたが嫌いです」 「私はこの人と一緒に幸せになる」 どんな形であれ、あいつが今幸せならいいじゃないか。俺がまたノコノコ顔だして、それであいつが不幸になるのは御免だ。だからここにいた方がいい。違うか? #艦これ航海日誌

2013-10-14 23:56:08
orphe @orphechin

そう言うか言わないかのうちに天龍が俺を殴り飛ばした。「何しやがる」「おい、ショックでボケちまったか?お前あいつをあれだけ育てておいて、一回フラれただけで馬鹿になっちまったのか?普段のあいつはあんなんか?どうなんだよ、答えろ!」「…違う」あのときの、あいつは。 #艦これ航海日誌

2013-10-15 00:00:42
orphe @orphechin

「だいたいてめえは女にフラれただけで、人の幸せばかり祈ってるお目出度い奴になっちまうような奴だったてのか?シリアルキラーの提督?おいあんま笑わせんなよ。おい加賀、鎮守府に戻ろうぜ。こんな腰抜けに用はねえよ」「そう。期待してたけど…残念ね」 おい待て。 #艦これ航海日誌

2013-10-15 00:07:22
orphe @orphechin

携帯を取りだし、ダイヤルする。電話の先は鳳翔だ。「ああお久しぶり。今からお店にいきたいんだが。そう、古い友達を四人ばかし連れてな。うち二人は大食いだから、準備してくれると助かる。支払い?今回は、香港のを使うよ。ぱぁっとな」 #艦これ航海日誌

2013-10-15 00:10:00
orphe @orphechin

「加賀、悪いがクローゼットからジャケット、それとマスクを取り出してくれ。それと天龍、奥にカマロがある。玄関先まで動かしてきてくれ。あと、ありがとうよ。おかげで目が覚めた」 二人は顔を合わせて口許を緩ませた。#艦これ航海日誌

2013-10-15 00:13:03
orphe @orphechin

東京都千代田区丸の内、皇居周辺のそのビルの最上階は、洗練されたビルの外見に似つかわしくないほど、古びた造りの居酒屋になっている。最もここに来るためには日本でも最高レベルのセキュリティチェックを通らなくてはならない。鳳翔グループのCEOの会議室ゆえに。 #艦これ航海日誌

2013-10-15 00:16:56
orphe @orphechin

「これが今日のお品書きになります。あとこれ、お通し」割烹着姿の鳳翔さんをみるのも久しぶりだ。 ラミネートされたメニューを見て、思わず溜め息を漏らす。厚焼き卵、モツ煮込み、VT信管、八木アンテナ、そしてフリッツX。「流石だな」「支払いはドルでお願いしますね」 #艦これ航海日誌

2013-10-15 00:20:50
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