10周年のSPコンテンツ!
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Orphe @orphechin
お使いに出していた羽黒が男と一緒に帰ってきた。なんでも最近赴任したばかりの少佐だそうで、研修でしばらく厄介になるという。「よろしくお願いいたします」初々しく挨拶する中佐。研修先がうちとは不幸な奴だ。この狂人の館でどれだけ持っていられるか、楽しみだ。 #艦これ航海日誌
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少佐は結構優秀なようで、一通りの艦隊指揮・日常業務をこなしている。秘書などあってないようなこの鎮守府で、彼のような人材はありがたい。少佐は背の高い優男風で、普段は動物マスクの変人しか相手にしてない鎮守府ではわりとちやほやされている。 #艦これ航海日誌
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しかしいかに有能な新人とは言え、このマイアミに慣れるには時間がかかる。ある日、ズボンを破られた少佐が俺の部屋に駆け込んできた。「閣下!助けてください。僕のケツが!」言うなり赤黒い塊が部屋の中に突入してくる。例によって餓えた赤城だ。 #艦これ航海日誌
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「アイスを食べさせたら、今度は僕にまで噛みついてきたんですよ!」「馬鹿、下手にこいつの食欲を刺激するからだ」赤城は貪欲に舌なめずりをする。俺は口笛を吹き、加賀を呼ぶ。二秒でかけつけた加賀は、「どう、どう」と赤城をなだめ、油断した隙に喉笛に手刀を当てて倒した。 #艦これ航海日誌
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赤城の一件はともかく、気軽にアイスやお菓子を艦娘に振る舞う少佐は人気者だ。時にはバケツの差し入れまでしてくれる。階級維持のため5-3を攻略する際には、随分羽黒たちも世話になった。 #艦これ航海日誌
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金は大丈夫か、と聞くと、少し恥ずかしげに「家が大きいので…」と答える少佐。「僕はいわゆるボンボンでして、これぐらいのことでしかお手伝いできないんです」「そういうのは自分の鎮守府でやればいいさ」「でも、お世話になってますから」 #艦これ航海日誌
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一週間もたつと、献身的な少佐の評判は確固たるものになった。普段あまり他人に心を開かない羽黒でさえ、「少佐さんはいい人ですね」と言っている。「この間もバケツをもらいましたし…昔はすぐ修理というわけにもいかなかったし、楽になりましたね、司令官さん」全くだ。 #艦これ航海日誌
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少佐が鎮守府に来て一ヶ月後、実戦の指揮をとらせてみることにした。提督が二名もいる現在、二方面での作戦行動がとれるチャンスである。赤城はまだ少佐のケツを付け狙っているようなので、羽黒の水雷戦隊を指揮させる。対象はサーモン沖、至難だが、どこまで出来るか。 #艦これ航海日誌
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作戦終了。水雷戦隊は損失もなくスムーズに任務を完了した。有望な新人じゃないか。任務完了の喜びのあまり、少佐に抱きつく羽黒。困惑する少佐。「背骨をへし折られんようにな」「は、はい!」 それにしても羽黒、あんな笑顔を見せるなんて初めてだな。 #艦これ航海日誌
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大勝利の後も、少佐は確実に戦果をあげ続けた。彼の指揮する艦娘たちはふんだんにアイスとバケツを与えられることで非常に高い士気を有し、確実に勝利し帰還する。 「もうあのマスク提督、いらないんじゃない?」風の噂でそんな言葉を耳にしたのは、6週間目の事だった。 #艦これ航海日誌
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ある日、天龍がばつの悪そうな顔で俺の所に来た。「わるい提督、出撃できねえわ」「はあ?」「部下たちがさ…アイスもないのに戦えるかって動かねえんだ」「おい勘弁しろよ、それが戦えない理由だってか?」「あとさ、これは言いたくなかったんだが…」 #艦これ航海日誌
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「周囲じゃさ、正直あの少佐がいれば十分じゃないかって専らの噂なんだ」「どのアホだ?バールで一撃してやりゃ、少しは頭も冷えるだろ。」「だから、そういう所なんだって!少佐はそういう風に言わないだろ、だから人気が出る」「お前もあいつに肩入れしてるのか?」 #艦これ航海日誌
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「俺は別にあいつがいいとは思わねえよ。だけど、少佐の事を気に入っている奴も多い」確かに俺はバケツもアイスも出し惜しむ。だがそれでも給料や施設で、少しなりとでも人殺しをスムーズにやれるよう支援してきたというのに。「司令官さん…あの…」気づくと羽黒が横にいた。 #艦これ航海日誌
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「なんだ羽黒」「ちょっと来てください」「今忙しい」「いえ、どうしても」手を引かれて行った先には少佐と…艦娘たちがいた。少佐は申し訳なさそうな顔で、俺に頭を下げる。「急に呼び出して申し訳ありません。その…」「少佐さん、後は私が話します」羽黒が彼を遮る。 #艦これ航海日誌
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羽黒は俺の前に紙を差し出す。「これに…サインしてください」そこにはこう書いてあった。 「鎮守府の運営を少佐に一任する」と。 おい、これは何の冗談だ? #艦これ航海日誌
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「閣下、お怒りになるのもわかります。ですがこれは多くの艦娘の要望なのです。特に、羽黒さんの」「どういうことだ」「司令官さん…いえ、あなたは本当に鈍い人なんですね」 「私はずっとあなたが嫌いでした」 #艦これ航海日誌
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「あなたは無理矢理私を人殺しにした。それが私にとって一番の幸せだなんて勝手なことを言って。私がどれだけ我慢してたかわかりますか?人を殺したくないのに、解体が怖くて人を殺し続けていた私の気持ちがわかりますか?本当に気持ち悪い」 #艦これ航海日誌
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「でも少佐さん、いえ、新しい司令官さんは違いました。本当は戦いたくないという私の気持ちをわかってくれました。私は幸せになります。この人と一緒に。もうあなたの顔は見たくない。今すぐサインしてください。できますよね?私の幸せを望んでるでしょうから」 #艦これ航海日誌
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「何をこいつに吹き込んだ!こいつがそんなことを言うはずねえだろ!」「提督…あなたは羽黒さんがここまで言っているのにまだわからないんですか!」少佐が初めて俺に食って掛かった。その語気の強さに思わず面食らう。「私からも証言するわ」雷が加勢する。 #艦これ航海日誌
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「私はレベルこそ低いけど、それでも羽黒ちゃんと同じくらい鎮守府勤務は長いわ。だから彼女がどれだけ苦しんでいたかもわかる。戦いから帰る度、ずっと泣いていた事も司令官、私は貴方が嫌いじゃない。だけど言わせて、本当に貴方が彼女を幸せにしたいなら、身を引くべきよ」 #艦これ航海日誌
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雷に言われて、俺は言葉もなかった。「好きにしろ」それだけ呟き、羽黒の差し出すペンをひったくり、殴り書きで自分の名前を紙に書き、部屋を出た。その間、顔を上げることはしなかった。あいつらと、何より羽黒と目を合わせたくなかった。何もかもが間違いだった。何もかもが。 #艦これ航海日誌
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提督の服を脱ぎ捨て、スタジャンに着替え、鎮守府をあとにする。後ろからは羽黒の嬉しそうな声が聞こえる。「こら、人前でキスはやめろって…」少佐の声も聞こえた。聞こえない振りをしたが、それはこびりついたクソみたいに俺の脳みそから離れなかった。 #艦これ航海日誌
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町中をぶらぶら歩く。特に行く宛はないが、立ち止まるとその瞬間にぶっ倒れそうな気がしたので、歩き続けた。そのうちに、自分がつけ回されている事に気づいた。鎮守府での悪名から、俺を狙う者は多い。何も持たずに私服でうろついているのを見て、様子が変だと思ったのだろう。 #艦これ航海日誌
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ハイエナどもと俺の間の距離が縮まっていく。そのうちの一人が、懐からナイフを取り出し俺に突っ込んで来た、とっさに避け、殴り倒す。その瞬間、他の奴に頭をハンマーでぶん殴られる。よろけたところに、さらにもう一発。口の中で砕けた歯がシェークする。 #艦これ航海日誌
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止めの一撃をなんとか避け、地面に転がっていたナイフを取りハンマー野郎の首に突き刺す。間抜けな音をたてて崩れ落ちる男を尻目に、俺は逃げ出した。頭からは血がどこまでも流れ口の中はズタズタ。これがかつての提督だ、まったく馬鹿みたいだ。 #艦これ航海日誌
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