Orphe兄貴の艦これ航海日誌～クーデター編(2013年10月)

orphe @orphechin

「欧米勢の開発はここまで進んでたか」「あくまで装備だけ、ですけどね」「それにしてもこれはいい。よく揃えてくれたな」「少数精鋭なのですから、これぐらいないと不安かと思いまして。お値段は張りますが」「いいさ。香港、マン、デラウェアから引き落とせば何とかなる」 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

「それにしても、やる気になったんですね」鳳翔が微笑む「てっきりあのままかと」「再認識したよ」焼酎を飲み干し、俺は続ける。「何度死んでも甦る。マイアミ鎮守府の提督はそういうものだってな」「press R to restart、貴方が良く言ってたわね」 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

幾分Rを押すのが遅かった。だがもうボタンは押された。俺をハメた連中も、俺を裏切ったあいつも、ただではおかない。ヴェンジェンスだ。「鳳翔さん、とりあえずフリッツ。100ほど」「かしこまりました」天龍が杯を掲げる。龍田と加賀がそれに続く。赤城が歓喜の咆哮を上げる。 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

-中篇終わり #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

「…問題は2つ。一つは、どうやってあの男を殺すか。もう一つは、殺した後どうするか」足立のアパート。ちゃぶ台を囲んで剣呑な話を切り出したのは加賀だ。「最初の懸案は後で考えるとして、後者についてはやることは決まってると思うよ～」と龍田。 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

「要は少佐ちゃんが銃殺刑にされても文句の言えないようなネタを挙げるってことだと思うの～」「たしかにそれがありゃ鎮守府の連中の目も覚めるだろうな。どう思う、提督」「異論はない。二手に分かれ、奴の弱みを探るとしよう天龍と龍田、俺と加賀。赤城はここで番犬だ」#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

築地。かつての巨大な卸市場があったこの場所は、退役した艦娘たちのデス・マッチで賑わう巨大な闘技場を中心に、ブックメーカーや違法ファングッズを売りさばく土産物屋、そしてあぶく銭をかすめ取ろうと狙う艦娘斡旋を謳った売春宿が群れをなすソドムの市だ。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

売春宿「舞鎮魂」の一室で、天龍と龍田が中年の男を取り囲んでいる。周囲には顔を半分切り取られた用心棒どもの死体と膝をついて震える元駆逐艦の女。「駆逐艦は最高だったか？おっさんよ」「ひぃ…」「動くと腸が抜錨するわよ～」「はわわわわ…」#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

男は大手銀行のシステム管理者だ。横須賀鎮守府の将官たちの給与口座の大半はこの銀行にある。「金の線から攻めてみる、たしかに悪く無い考えだな」「な、何が望みだ！私はただのサラリーマンだぞ！金はない」「貴方のアカウントに興味はないの。ただ、協力して欲しい事があって」 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

天龍と龍田が少佐の金の流れを調べている一方、俺と加賀はディスプレイを睨んでいた。加賀の彩雲が少佐の行動を24時間ロケート、映像と音声をこちらに送ってきている。3日3晩交代で監視しているが、奴は目立った動きを見せていない。動かない仕事なだけストレスがたまる。 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

何より気に入らないのは少佐の振る舞いだ。スキンシップが多すぎる。ああいうのが一般の提督の嗜みとはいえ、ああも露骨だと閉口する。そして夜は夜でせっせと励んでいやがる。初春の次は愛宕か。優男のくせに節操のない野郎だ。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

「提督、疲れているわね。熊の肝を食べる？精がつくわ」「そう見えるか。あと性は見飽きた」「そう、美味しいのに。でも本当に疲れているわ」「汚い光景をずっと見てるからな」「貴方はああいうのを汚いと思うの？意外ね」 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

そう、俺は汚いと思っている。セックスも、キスも、愛情たっぷりの言葉のかけあいも。いつからそう感じるようになったのかは知らない。気づいたらなっていた。人と人とが触れ合う風景を見ると鳥肌が立つ。それはどんなものよりも俺をぞっとさせた。 「ではなぜ見ているの」 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

何故見ているか？忘れないためだ。俺が被った被害を。そして返すべきツケを。これほどまでに苦しんだのだから自分は報われるべきだという考えは人間普遍のもので、取り分を請求する権利への意識を俺はを強く強く持たなくてはならない。だからこの醜さを目に刻む必要がある。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

羽黒があいつと抱き合っている場面を見て吐いた。笑い合う光景も見て吐いた。ベッドの上でのそうした振る舞いにも。加賀はもう止めようとしなかった。それが必要なことだと、理解していたのだろう。そして一週間目に転機が来た。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

ある日、少佐は執務室で書物をしていた。いつもの様に彩雲にズームさせる。手紙のようだ。だが宛先は見覚えのないものだった。「傷痍艦娘支援会」？なんだそりゃ。「やりましたね」いつの間にか目の前に加賀がいた。距離が近い。暑苦しい。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

直後、携帯が鳴る。天龍からだ。「悪い提督、奴の口座を調べてみたが、だめだった。給与の出し入れ程度しかない。それも普通の社会人程度の金の動きだ。平凡すぎる」「大丈夫です。金ではなく人から動きが見えました。脅してる相手をそのまま利用して頂戴」俺の代わりに加賀が答えた。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

少佐の手紙にあった「傷痍艦娘支援会」を調べてみた。HPさえない小さな団体で、海軍の資料の中にある「支援団体一覧」の中に辛うじてその名前を見つけることができた。鳳翔さんに金を払い、調べてもらう。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

調査の結果、少佐はこの会の会員らしい。だがこれだけでは手がかりにならん。天龍に電話し、管理者をシメあげて調べさせるよう命じた。結果は上々、この団体の金の流れが見えてきたからだ。 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

少佐の属する「傷痍艦娘支援会」は複数の個人による寄付で成り立っている。その個人をさらに辿って行くと、いくつかの反社会的勢力に結びついた。その中には俺が遊び半分で殺したヤクザどもの列に連なる組織がごろごろいた。これで、あいつのバックが少し見えた。 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

鳳翔さんから送られてきたレポートによると、この支援会は各鎮守府に無償でバケツやアイスを配布している慈善活動を行っているらしい。レポートを読み終え彼女に電話をかける。「こいつらの物流を調べられるか？」「別料金ですよ」「わかっている。頼む」 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

思った通り、不自然な量のバケツとアイスが少佐の鎮守府に送られている。他はほとんどめくらましみたいなもんだ。金の線から辿ってもしっぽがつかめないわけだ。実家が大きいだと？大した皮肉だよ。この支援団体は俺を失脚させるために敵が作り上げた、ダミーの慈善団体というわけだ。#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

「これは良い証拠ですね。さすがに気分が高揚します」「どうする？バックの連中をぶちのめしてあいつと纏めて海軍に突き出すか？」「それは後で良い。次は鎮守府攻めの策を練ろう」「だってネタはあがってんだろ？」 「天龍、お前は良い奴だ。腕も良い。だがまだわかってない」#艦これ航海日誌

orphe @orphechin

「俺が、自分が殺したいと思っている奴を他人の手に引き渡すような奴だと思っているのか？」 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

「証拠を掴んだと知れた時点であいつは逃げ出す。憲兵が来る頃にはあいつは羽黒とどっかの島でバカンスだろうよ。証拠は抑えた。だがそんなものはあいつらの死体とセットで上に見せてやりゃいいだけのことだ。今やるのは殺しの準備だ。わかったか」#艦これ航海日誌